この試合は、マジョルカ側に2人の退場者が出たこともあり、「監督は赤紙に対していかに対処するのか」ということを考えてみようかと。
まず、マジョルカはこの試合を1−3−4−1−2と呼ばれる配置で始めた。
ホルヘ・ロペスが中央よりも右側にいて、トゥニが左サイドで高い位置を保つことを除けば、3バックの良くある形といえる。
まず、最初の退場は58分に訪れ、ゴール方向へと走るフェルナンド・トーレスを追いかけていたバジェステーロスは振り切られまいとして全力以上にスピードを上げ、止まるトーレスに対処できず、ペナルティーエリア内で後ろから押し倒してしまった。
彼が一発レッドで退場した後は、ホルヘ・ロペスに代わってカンパノが入り、60分の図のような配置になった。
数でいうなら1−3−4−2であり、珍しい形をしている。
通常、一人を失った後の形は、図のような1−4−4−1と呼ばれるものが一般的であり、他の布陣が採用されることは滅多にない。
これは、以下のようなお話に拠る。
まず、人数の少ない状況で後方にスペースを残すと、失点の確率が飛躍的に増大してしまうので、それを避けるために守備の人数を増やしたほうがよい。
しかし、前線を0人にしてはかえって相手の攻撃を呼び込んでしまうのでそれも避けたい。
ならば、前には最小の人数を置いて、後方をバランスよくカバーするのがよい。
ということで、1−4−4−1が採用される。
この形を採用した場合、攻撃はほぼカウンターとセットプレーに限られるものの、守りは固く、そう簡単に失点することはない。
相手に一点、もしくは二点をリードされた段階で退場者を出した場合、攻撃に問題を抱えるこの配置を採用することは一見生ぬるいようにも思われるが、「こっちが先に失点しては元も子もない」という考えと、「相手のミスを待って、カウンターかセットプレーから点を取ればなんとか引き分けに持っていける」という考えから、やはりこれが採用される。
しかし、この試合のクーペルは1−3−4−2を用いた。
このシステムの問題点としては、相手がボールをキープしやすい状況であるにもかかわらず、両サイド後方に大きなスペースを残してしまうことであり、そこをスピードのある選手に突かれると非常に脆い。
そのマイナスに敢えて目をつぶってこのシステムを用いたのは、勝つ以外に降格圏から脱出する方法がないからであり、その意味では、成算があっての賭けではなく、状況から強制されたやむをえない賭けだった。
その後の流れを見てみると、右サイドを抜けるグロンキャールを止めようとしたトゥニとユリアーノがカードを頂戴し、特に77分のユリアーノのカードはこの日二枚目であったため、バジェステーロスに次ぐ二人目の退場者が誕生してしまった。
その後、選手を交代させた後のマジョルカの配置は、80分の図のようになっている。
見るからに心細げな形であるが、頑固にツートップを保っている。
この辺りは、人の信念として興味深い。
この後、マジョルカはサルバに二つのゴールを奪われ、轟沈してしまう。
この試合の結果論としては、「一人少ない状況での1−3−4−2には無理がある」という結論になるのではなかろうかと。
この試合の両チームを比べると、センターバックの差で勝敗が決した観がある。
マジョルカのバジェステーロス、ユリアーノは良いディフェンダーではあるが、スピードには欠けている。
一方のアトレティコのペレアとパブロと来た日には、スペインリーグでも1,2を争うスピードを持っている。
この二人の恐ろしさは、ペレアはサイドでの1対2に、パブロは頭を超えるループパスへの反応によくあらわれている。
まず、ペレアの方では、左サイドバックが戻ってこれない状況で、彼の前にボール保持者がいて、ペレアから見た左サイドライン際にもう一人敵がいるとする。
この場面では、ボール保持者はペレアをドリブルで引きつけておいて、サイドを縦に抜ける味方へパスを送ることが多い。
通常、中央に引きつけられたセンターバックはサイドに出るボールに間に合わず、相手の突破を許してしまうものだが、ペレアがダッシュ一番走り始めると、相手よりも先にパスへと追いついてしまう。
パブロの方では、相手の中盤がループパスで縦へ走るフォワードにボールを送ろうとした場合、ジャンプしたパブロの頭が「にょきっ」とあわられてインターセプトされてしまう。
そのジャンプ力と、パスが通る高さにたどり着く早さに、パブロの恐るべき瞬発力を見て取ることができる。
よく、アトレティコの試合は眠い、といわれますが、この二人の動きを見ていれば眠気も吹き飛ぶ、かもしれません。