バレンシアがヘタッフェに破れ、レアル・マドリーは2位になり、シュスターのレバンテが3位に浮上、荒れるスペインリーグの中から、6位につけるサラゴサと点が取れないのか取りたくないのか微妙なアトレティコの一戦をお届けしようかと。
まず現在好調のサラゴサは、昨シーズンとほとんど変わらない1−4−2−3−1。
しかしながら、この日のビジャの動きは普段と異なり、理屈的にはセンターフォーワードでありながら、ほとんど左ウィングのような位置でプレーしていた。
サラゴサの作戦計画は、
まずサビオを上げて右サイドバックのアギレラを誘い出す。
それにより、センターバックのパブロとアギレラの間にギャップをつくり、そこにビジャが走り込む。
ビジャ目掛けてロングボールを放り込み、プレッシャーのきつい中盤を飛ばす。
体は小さいが、人と当たりながらのボールキープが抜群に上手いビジャがサイドでボールをキープする。
それを、左サイドから中へ走り込むサビオ、中央のカニ、左ボランチのモビージャでフォローする。
というものだった。
これがメインの筋であり、相手がこれに引きずられて中央にスペースができればカニが、右サイドにスペースができればガレッティがそれぞれフリーになり、それを裏の狙いとして攻めていく。
単純と言えば単純だが、それぞれの役割を専門家が負うため、非常な破壊力を秘めている。
先制点は正に計画通りに奪ったもので、ビジャが左サイドに流れてボールを受け、中央にスペース空いたスペースにサビオが走り込む。ビジャからのパスを受けたサビオは、そのままペナルティーエリア左側を突破し、逆サイドネットにシュートを突き刺した。
アトレティコにアジャスト(修正)する時間を与えずに奪ったこのゴールは、ビクトル・ムニョス会心の一撃であったと想像される。
一方、いきなり奇襲をかけられた格好のアトレティコは、相変わらずボランチが定まらない。
ある日はシメオネとコルサ、その後半はソサとホルヘ、次の日はルシンとソサ、その後半はシメオネとソサ、またある時はシメオネとソサで始まり、その後半はソサとコルサ。
こんなに毎回毎回、試合毎ではなく、前半後半でボランチが変わるチームも珍しい。
アトレティコが取り得る方針としては、ボールを繋ぐことなど考えずに中盤で相手をがんがんに潰してカウンターを狙いつつセットプレーから点を取る、これしかない。
となると、中盤の組み合わせは右から、イバガサ(ホルヘ)、ソサ、コルサ、ナノ、この四人が最適である。
このサイドの二人は守備にも良く働き、なんといっても絶品のフリーキックを蹴る。そして中央のソサは意外とロングボールが正確で接近戦に強く、コルサは三人に囲まれてもボールを失わない技術を持ち空中戦にも強い。
みんなで守ってセットプレーのチャンスを待ち、イバガサ、ナノが蹴ったボールをコルサがどん。
人生がわかりやすくてよい。
繰り返しになるかもしれませんが、センターバックとボランチがパスを捌けないアトレティコがボールをつなごうとするのは、そもそも企画に無理がある。
センターのパブロとペレアは、ボールを持っていない状況ではほとんどスペイン最高だが、ボールを持った瞬間、謎の二人組みへと変化する。
ボランチにしても、ルシン、ソサ、コルサ、シメオネ、でゲームをつくることができるのはかろうじてシメオネだけだが、どう考えても足りない。
これは、相手のサラゴサのボランチ、モビージャ、サパテールと比較すればよくわかる。
まずモビージャは、どんなに球が浮こうが相手にプレッシャーをかけられようが、正確にボールをコントロールしてフリーの味方にパスを送ることができる。そしてそのパスにしても長いものから短いものまで、極めて正確であり、ボールを受けた選手のその後の行動にまで配慮が行き届いている。
そして、アーセナルが狙っていると評判のサパテールは、モビージャほどの派手なパスを見せないが、要所要所で渋いゴロパスを出している。例えば、ライン際を駆け上がる右サイドバックのポンシオにパスを出すとする。サパテールのパスは、受け手が減速する必要がない角度を持ち、かつコントロールしやすい強さでゴロゴロと転がっていき、ポンシオの足元にひょっこりと表れる。
この攻めのリズムのを阻害しない気遣いが大切であり、味方のリズムに気を使うこの二人がいるからこそ、サラゴサの攻撃はスムーズに運ぶ。それを、違う特徴を持ったアトレティコの選手達に要求するのは難しいと思われる。
アトレティコが本気でボールを大切にしたいのなら、センターバックにシメオネ、ボランチにイバガサを置くしかない。しかし、それは昨シーズン、グレゴリオ・マンサノが散々試みて諦めた手法である。
それで試合はというと、サラゴサが山のようなチャンスをつくり、アトレティコはセットプレーでボチボチとチャンスを迎え、双方それを外し続ける、という展開だった。
そんな50分過ぎ、それまで大活躍を見せていたビジャが、突然、太腿を押さえて倒れ込んだ。
おそらく筋肉系の負傷、肉離れか何かだと思われる。この試合で彼が怪我をしたのは偶然の成せるわざかもしれないが、往々にして、一人の人間を120%活用する戦術を採用すると、その肝心のピースが壊れたり、退場したりするケースは多い。
そんな中、遂に決意を固めたセサル・フェランドは、80分、ソサに代えて空中戦に強いフォワードのブラウリオを送り込む。
中盤を削って、前線にサルバ、ニーニョ、ブラウリオの三人を固めて放り込む作戦である。
果たしてそんなんで上手くいくのか、と思う間もない82分、ディフェンスから前線にロングフィード、フォワードが競り合ったルーズボールをホルヘが回収、そのままセンタリング、どんぴしゃでブラウリオの頭に当たって強力なヘディングシュートがサラゴサのキーパーを襲う。ルイス・ガルシアは体を一杯に伸ばしてボールを弾くが、こぼれ球は左サイドから突っ込んでくるサルバへ、そして、その左足から放たれたシュートはゴールへと吸い込まれていった。
極めて典型的な放り込みサッカーを行い、それにより、それまでの苦労が疑問に思われるほど簡単に点を取ったアトレティコ、これは天啓というものなのではなかろうか。
その得点の後、試合は、同点に追いつかれて納得のいかないサラゴサの組織が壊れ、オープンな攻め合いへと以降した。
そして、90分も過ぎたころ、フェルナンド・トーレスは完全にディフェンスラインを突破しキーパーと一対一になったが、何を思ったのか、へなちょこなループシュートを試み、失敗した。
結局、「いやいや、そんなもんはどっちかのサイドネットに蹴っとけば入るだろう。」というスタジアム中の突っ込みを残して試合は終了した。
追いついた方も追いつかれた方も、どちらも納得のいかない、不思議な試合でありましたとさ。