カウンターからダフに左サイドを抜けられ、最後はベレッティのオウンゴールで先制点を奪われたバルセロナが、マキシ・ロペスのおかげで二得点をあげて逆転勝ちをおさめた。
敵地での試合において、チェルシーは中盤に5人を並べ、バルセロナの攻撃を受け止めることに重点を置いてシステムを組んだ。
これは、レアル・ソシエダーが用いてある程度の成功を収めた対策で、そのときはこのような配置になっていた。
なぜこれがバルサを相手に有効かといえば、バルサの理論的なウィングのロナウジーニョとジュリーが縦に抜けないからであり、中央に固まる攻撃を防ぐためには、真ん中に3人のボランチを並べればよい、という簡単な理屈による。
この日のチェルシーの主な仕掛けは、中盤のサイドにあり、ジョー・コールとダミアン・ダフは左右を入れ替えながら、守備においては相手のサイドバック、すなわちベレッティとジオをほとんどマンツーマン気味にマークしながら、攻撃においては真っ先に前線へと駆け込んでいく。
守備においてはバルサの息つぎ点となるサイドバックを潰し、攻撃においては相手の守備が薄くなりやすいライン際を攻める二人の働きはチェルシーのゲームプランの核をなしていた。
バルサがボールを圧倒的に支配していた中で生まれた先制点にも彼らが関係していた。
配置は、この図のようになっており、デコのミドルシュートの跳ね返りをチェルシーが拾い、ランパードにつないだところから始まっている。
ボールを回収した瞬間にダフとジョー・コールはディフェンスラインの裏めがけて走り出しており、このシーンでは右にいたダフにボールが渡った。
ランパードが出したボールを絶妙のコントロールで転がし、走り続けたダフはそのままエリア内に入り込み左足のアウトでセンタリング。
これをクリアしようと目一杯伸ばしたベレッティの足の触れたボールは、ゴールネットに吸い込まれていった。
この流れだけを見ると、裏を取られたジオバンニ・ファン・ブロンクホルストが悪いように見えるが、あのシーンで彼は非常に難しい判断を迫られていた。
もしダフをマークすればいいだけなら、そのまま後ろに走り続ければ良かった。
ダフよりもボールに近い位置にいたのだから、確実にクリアすることができたはずである。
しかしながら、中央にはドログバが縦に走っており、プジョルとマルケスは、これをオフサイドに仕留めるためにラインを止めた。
この状況でサイドのジオが後ろに走りつづけると、彼がドログバを追い越してオフサイドラインを崩してしまう。
そして、その状況でドログバにボールが渡れば、確実にキーパーとの一対一が生まれる。
これを避けるために、ジオは、センターバックのラインで一度スピードを落とさざるを得なかった。
その瞬間にランパードが無理な体勢からアウトフロントでダフへとパスを送ったものだから、止まりかけたジオは、それについて行くことが出来なかった。
(後に確認されたところによると、ランパードはインステップでボールを切るように蹴った模様。)
走りつづけるか否か、正解はランパードのパスの出る先によって変わるが、後ろ向きで全力疾走しながらそれを判断するのは無理だと考えられる。
ここで一つ注目すべきは、ランパードにパスが出た瞬間のロナウジーニョの動きで、実際には黒線のように走ったが、バルセロナの戦術、システムの中では赤線のように走り、ランパードに圧力をかけなければならない。
ランパードは良い体勢でパスを受けたわけではなく、前を向くために多くのボールタッチを必要としていた。
それはパスが出た後にも見ることができるのだから、ロナウジーニョは、その行動を妨げるため、彼に近寄らなければ話がおかしくなる。
ここまでは、チェルシーの計画通りにことが運び、56分のドログバの退場によりそれは崩れた。
フォワードがいない状態でプレーするわけにはいかないので、必然的にシステムは1−4−4−1に変更される。
そうなれば中央が薄くなり、それをカバーするために左右の中盤はボランチに近づかなかればならない。
これにより、サイドからのカウンターは消え、相手サイドバックへのプレッシャーも消滅する。
数的優位を得たバルサは、手始めにアルベルティーニをイニエスタに代えて攻め続けるが、エリア内でサイドからのボールに反応する人手が足りない。
それを解消するため、マキシ・ロペスを入れて、これが大当たりだった。
特に67分に決めたゴールは、ボールを受ける前の動きと、トラップポイントをずらしてディフェンスの裏を取った技術、おまけに軸足でボールをスクリーンした後のコンパクトなシュートモーションがあいまって、実に美しかった。
その後はマキシの撃ちこそねのようなシュートに反応したエトーが、これまた美しいボレーを決めてバルサが逆転し、84分にはジェラードが登場した。
今シーズン、本職のボランチよりもセンターフォワードで見かけることの多い彼は、この日もトップに近い位置に入った。
ピッチ上での出来だけを考えれば、ロナウジーニョをシウビーニョに代える方が妥当だと思われるが、ライカールトのジーニョに対する信頼のあらわれが最後の交代だとも考えられる。
敵地では、レアル・ソシエダーと同じように戦ったチェルシーがホームでどのように戦うのか、選手補強にかけたお金の真価はそこで問われることでしょう。