この試合最初のシステム変更というか配置変更は前半20分におとずれた。
それまでベティスのボランチは右にアッスンソン、左にアルスという形でプレーしていたが、20分のFKを境にその位置を入れ替えた。
ここで、ベティスの攻め筋を考えてみると、図のようになっている。
オリベイラ、エドゥ、フェルナンドで構成される三角形を中心にボールを回し、そこに右サイドからホアキンがドリブルでからんでくるのだが、中盤でボールが回らない時には左サイド奥に上の三人のいずれかが走り込みボールを受けることになっている。
そこにボールを送り込むのは主にアッスンソンの仕事であり、斜めのロングパスで相手の裏を取るために中央よりも右サイドに配置されている。
攻撃を考えると右ボランチにいないと具合の悪いアッスンソンをわざわざ左ボランチに動かしたセラの意図は何か、と考えると、その本意は守備を考えた結果だと思われ、アルスをオサスナの攻撃を組み立てるパブロ・ガルシアに当て、前半に失点する可能性を避けることが目的だったと思われる。
ちなみに、後半からは、再び両者の位置を入れ替えて通常の配置に戻っている。
ほぼ互角ながら、チャンスの質という点ではベティスが優る展開の中、先制点は75分に生まれた。
これは、オサスナセンターバックのクルチャガ、もしくは、キーパーのエリーアのミスに起因していた。
クルチャガは、ラインの裏に抜けたボールを追ってオリベイラの前に出たが、ボールをスクリーンをすることもなくキーパーにボールを任せようとしてフォワードに追い越され、失点をまねいた。
一見すると明らかにクルチャガのミスだが、キーパーがマイボールだと叫んだ可能性もあり、どちらのミスか、外から特定することはできない。
オサスナは非常に練られた守備を前線から見せるのだが、センターバック、もしくは、キーパーの簡単なミスから失点する場面がしばしばあり、これが今ひとつ順位を上げられない原因になっていた。
そして、それは、国王杯決勝の舞台でも繰り返された。
この得点により、ベティスは優勝に大きく近づいたが、その8分後にミロセビッチのパスから左サイドをデル・ポルテに抜けられ、ファーサイドにセンタリングを落とされてアロイシの頭で決められた。
これにより、逃げ切りを意図してベンジーことベンハミンを投入しようとしていたセラ・フェレールは方針を変更し、ダニを送り込んだ。
無理矢理に点を取りに行った68分の交代では、中盤で守備を引き受けるアルスを外してバレーラを入れ、1−4−1−4−1に近い形で戦っていたが、ダニの投入後は、背番号9を背負ったフェルナンドをはっきりとボランチの位置まで下げ、トップ下にダニを置いた1−4−2−3−1に変更されている。
その心は、フェルナンドに低い位置からゲームを組み立てさせ、中央のダニ、フェルナンドのスピードで相手ディフェンスラインを脅かしつつ、それをサイドからバレーラ、ホアキンにサポートさせる、というものだったと想像されるが、それは、決勝点の場面でビックリするほど見事な形で実現された。
ダビー・ロペスのセンタリングをバックがクリアーし、そのボールをダニがフェルナンドに戻したところからカウンターが始まった。
フェルナンドは、戻ってくるオリベイラにパスを当て、戻しをオリベイラがあけたスペースに走り込んだバレーラに送った。
これを受けたバレーレは中央をドリブルで進み、中央やや左をダニが縦に抜け、この二人の間をオリベイラが鬼の奪取力で駆け抜けた。
オリベイラの動きによりフリーになったバレーラは、同じくフリーになったダニへとパスを送り、ダニは左足で決勝点となるゴールを決めた。
図で描くと、
決勝点、カウンター(1)
決勝点、カウンター(2)
(実戦:選手の動き、点線:ボールの動き、ジグザク線:ドリブル)
のように表されるが、見事にセラのイメージに話が運んだ。
一方の、オサスナのハビエル・アギーレの選手交代を見てみると、一点リードを奪われた状況でも前線を増やすことなく、プニャルをダビー・ロペスに代えてウェボをアロイシに代えるなど、ポジションの変更も行われていない。
この二つの交代の意図は、ディフェンスラインの前から前線に絡んで攻撃にオプションを加える選手と、トップ下に新鮮な選手を入れることで前へのベクトルを加えたものであり、ディフェンスの数はそのまま保たれている。
カップ戦(トーナメント)の決勝で負けている状況での80分となれば、守備を削って攻撃を厚くしたくなるのが人情というものだが、アギーレはあくまでも基本的な構造を崩さず同点を目指した。
これは彼の性格に対して、なにごとかを語っているものと考えられる。