プロ選手が一人しかいないサン・マリーノに対して、スペイン代表は5−0で勝利した。
しかしながら、これはサン・マリーノにとって満足な結果だった。
San Marinoは、スペイン方面ではサン・マリーノと呼ばれているが、一般的にサンマリノなので、以下、サンマリノということにする。
その、サンマリノの面積は61平方キロメートル。
正方形で言うと8×8km弱の広さしかない。
そして、その人口は2万8千人ほどであるという。
この前の日にそれぞれのU−21代表が対戦してスペインが14−0で勝利を収めたのだが、ここに、「サンマリノという国でU−21代表に選ぶことのできる選手は何人いるのか」という疑問が生じる。
以下、大雑把にその問題を考えてみたい。
まず男女比が1:1であるとして人口を半分にすると1万4千人が残る。
U−21に使える選手として、3歳の幅をもうけるとする。
19歳から21歳と仮定して、その年代の人口比を考える。
そのデータは持ち合わせがないので、適当に15分の1だとする。
そうすると大体、千人弱という話になる。
その中で、この年齢までサッカーを続けている人間の割合を考えると、多くても2割程度、普通に考えて1割以下のはずである。
なるべく多めに考えて、200人という数字に到達する。
そこで日本の状況を考えてみると、高校の部活動で、ちょっとサッカーの盛んなところなら100人程度の部員を抱えている。
となると、年齢差を別にすれば、サンマリノU−21代表は、大き目の高校サッカー部を二つ集めて、その中から選抜されたようなものである。
これに対してスペインの人口は4千万人程度。
サンマリノの1300倍以上の選択余地がある。
しかるに、フル代表の試合は5−0で終わった。
これは、サンマリノ側としては満足な結果だと考えられる。
ちなみにサンマリノはその歴史上、一度も公式戦で勝利を収めたことがなく、たった一度の勝利は、親善試合でリヒテンシュタインに1−0で勝ったものらしい。
彼らは、スペインに対して1−5−4−1で臨んだ。
その心は、たった一人のプロ(イタリア3部)、10番のセルバにボールをつないでのカウンターだが、そこにボールをつなぐ場面は稀で、自陣を出ることすらできなかった。
この状態でのボール保持率は70:30で、これだけ圧倒的な差が存在してもその程度のものであるらしい。
一方で、この試合のアラゴネスは攻めることのみを考えており、それはシャビ、デ・ラ・ペーニャ、グティと連なったボランチの選択によく現れている。
前半の問題は、とくに左サイドで、もともとスペースのない状態での働きが鈍いルケをそこにおいたことで、そちら側の機能が麻痺してしまった。
後半には、ビジャ、グティを投入してさらなる攻撃をはかったが、46分の図のように、ますます中央に人が固まり、相手を楽にしてしまった。
これは、「引いた相手にはサイドチェンジから広く攻めなさい」という教科書の文言が正しいことを示しており、どんなに圧倒的な戦力を持っていても、原理に反してはプレーが上手くいかないことの好例といえる。
スペインの戦術的な乱れを突いて、サンマリノ監督、ジャンパオロ・マッサはシステムを1−4−4−1−1に変更した。
これでわりと攻撃がうまくいくようになり、スペインゴール前に迫る場面が出てきた、と思ったらカウンターからグティにあっさりと決められてしまった。
この辺りに戦術というものの限界が現れている。
その後、グァイレが入ってきた後は、また1−5−4−1に戻して試合を終えた。
サンマリノの選手達を見ると、非常に負け慣れている印象を受ける。
先制点を奪われても4点目を奪われても、まったくショックを受けずに戦う姿はスペインでは見ることのできないものである。
前回、1999年に両者が対戦した時は、サンマリノのホームで0−6、アウェイで9−0という記録が残っている。
となると、サンマリノ側としては、この試合を6−0以下で負けることを取り敢えずの目標としていたはずで、5−0というスコアは喜ばしい結果であったと想像される。