Real Madrid vs Albacete
04.11.14.domingo
日時:第10節 2004年11月14日(日)
対戦:レアル・マドリー vs アルバセーテ
結果:6−1
得点:1−0 2分 ロナウド
1−1 16分 フランシスコ
2−1 28分 ジダン
3−1 32分 ラウール
4−1 48分 サムエル
5−1 88分 オーウェン
6−1 90分 ロナウド
審判:ハビエル・モレノ・デルガド
退場:−
警告:ベッカム(レアル・マドリー)
マルク・ゴンサレス、アルバロ・ルービオ、オスカル・モンティエル、ガスパール(アルバセーテ)

ジダンがいるとサッカーが簡単でいいなぁ、もしくは、ロナウドさえいれば戦術云々を言わなくていいなぁ、というのがこの試合の感想だとは思うので、それ以上をうだうだと喋ってもしょうがないような気がするのですが、そんなレアル・マドリー対アルバセーテの試合を。

こてんぱにやられたアルバセーテではあるのですが、前半20分まではいい試合をしていた。
この日の計画としては、奪ったボールをなるべく大切にして、ベッカム、グティの周辺で動くパチェコに多くのボールを入れてそこから穴を広げていく、というものでありましたが、これはキケ・サンチェス・フロレスのヘタッフェが同じ方針を採用して成功していた。
これはグティ、ベッカムと守備に甘いマドリーのボランチの弱点を突くもので、トップ下に有能な選手がいればいるほど威力を発揮する。
10分前後にはこの作戦が上手くいき、16分にサムエルの空振りも手伝って同点に追いついた。

しかしながら、この日のアルバは、この方針ゆえに墓穴を掘ってしまった。
29分、ジダンがペナルティーエリア左でディフェンスをちょいちょいと交わして左足でシュート、ボールは逆サイドネットに収まりマドリーが2−1と再びリードを奪ったが、この得点にはアルバ右中盤のレドンドが大きく寄与していた。
20分過ぎからのアルバセーテはボールを繋ぐことのみに気を奪われてしまったのか、中盤での横パスが多くなっていった。
縦に入れるパスで脅しながら攻めている時は、相手の前への出足を抑えることが出来るので、パスカットの危険性も減るのだが、横パスの割合が多くなるとそうもいかない。
おまけに繋ぐことに熱中しすぎると、苦しくなった状態でも無理なパスを出してしまうことが多くなる。

28分にボールを持ったアルバに起こった出来事は正にそれで、中盤で危なっかしい横パスを繋いでいるうちに、どんどんどんどん状況が苦しくなっていき、最後に右サイドでボールを受けたレドンドは、スペースに大きく蹴っておけば何事もなかったボールを、中央に、それも浮き球で折り返してポゼッションを失った。

「中盤で横パスをカットされるとまったく打つ手がなくなるので、絶対ミスしてはいけませんよ」

とはサッカー選手ならば幼少のみぎりより耳にタコができるほど聞かされる言葉だが、スペインの一部リーグでもほどよく再現されている。

そして、3点目にはマドリーの持つ才能が如何なく発揮されていた。

まず、中央でボールを持ったグティが左足を振って40m程のパスをジダンの右足に落とす。ジダンの足に触れたボールはまったく跳ねもせずに地面に転がり、それを持ったジダンは縦にドリブル。中央から寄せてくるディフェンダーを右足でのビシクレタ(跨ぎフェイク)で止めておいて左足でセンタリング、ボールはペナルティースポット前方に走り込むラウール頭にどんぴしゃでヒットした。

これは業界用語で「二回の方向変更(ドブレ・カンビオ・デ・オリエンタシオン)」と呼ばれるもので、ディフェンスを崩す定石とされている。
この場合は、中央からサイド、サイドから中央と攻撃の方向が二度変更されている。このようなボールの動きに対し、守備側も中央からサイド、サイドから中央とそのポジションを替えなければならず、その移動中に必ずマークがずれる。
よってこの、「ドブレ・カンビオ・デ・オリエンタシオン」を行えば必ずディフェンスは崩れる、チームにこれを教えろ、と教科書には書かれているが、普通は絵に描いた餅でしかない。

まず、これが有効になるためには最初の方向変更が大きくなければならない。例えば40mボールを動かせば十分なのだろうが、その距離で、相手にカットされないだけのスピードで正確に味方の足元にパスを落とす選手は普通のチームにはいないし、
もしパスが通ったとしても、それを一瞬でコントロールする人材は稀であり、ボールを落ち着かせるためにもたもたしているうちに敵に詰められチャンスを無くす。

普通のチームには、教科書の理論を実現する出し手も受け手もいない。

しかしながらレアル・マドリーでは、40mのパスを受け手の足元にぴたりと落とすグティ、そのパスをバウンドさせることなく止めたジダンのコントロール、それに目を奪われたディフェンスから消えるラウール、効き足でないにも関わらずピンポイントのクロスを上げるジダンの左足、と絵に描いた餅を現実にすることができる。

その他にもパスを出す側としては、ロベルト・カルロス、ベッカム、ジダン。パスを受ける側としては、フィーゴ、ラウール、ロナウド、なども控えている。さらに言うならば、この攻撃の方向をどこからでも変えることのできる能力がレアル・マドリーの攻撃の根幹をなしている。だから、チームがどんなに悪い状態でもゴールを奪うことができる。

ジダンはその後も79分に左サイドで後方からのロングパスを受ける際に、ダイレクトで右足のアウトサイドでボールを引っかけてパスの勢いそのままにボールと一緒に走っていくなど、随所にボールコントロール技術の高さを見せたが、後半の後半になるとロナウドがそれを凌ぐ活躍を見せ始めた。

特にもの凄かったのは67分に見せたプレーで、右サイド、ゴールまで35メートルほどの地点でボールを持つや縦へドリブルを開始、ファール覚悟で寄せて来るペーニャを手で捻じ伏せ、追いすがるガスパールを振り切り、一気にペナルティーエリア角に侵入し、前に出るガスペルシッチの脇を抜き、逆サイドネットにボールを送り込んだ。
結局ペーニャの顔面へのハンドオフがファールを取られてゴールは取り消されたが、相手に押されても引っ張られても全くバランスを崩さないバランスといい、ボールを持ったまま普通の人間のトップスピードに近い速度で走り続けるその姿といい、そして、その状態でキーパーの動きを完全に見切ってシュートを放つその技術といい、どんな攻撃にもめげずに前進を続け建造物を破壊する初代ゴジラを思い起こさせた。

いや、ペーニャは明らかにユニフォームを掴んで、あわよくば足をかけて倒そう、という意図のもとに寄って来たんだからあの手はプロテクションと解釈してもいいのではなかろうかと。

4点目はベッカムのフリーキックからサムエルが頭で、5点目はそのロナウドからのアシストを受けてオーウェンが決めた。
オーウェンは中央から左に走りながらボールを受け、そのまま体を開きながら右サイドにシュートを放った。これは一部で、「逆撃ち」と呼ばれる技術で、体の進行方向と逆方向にシュートを撃つことでキーパーの予測をずらしてゴールを奪うもので、アンリやオーウェンが得意としている。
どうでもいいが、サムエルの4点目にけちをつけるとしたら、アルバセーテの選手がファーサイドを全くフリーにしてしまったことだが、フリーキックに対してゾーンで守っていながらあの棒立ち振りは解せない。

この試合、ジダン、ロナウド以外に選手を挙げるとすれば、それはやはりグティではなかろうかと。
パスで攻撃をリードするのは昔から得意技だが、最近は自分の仕事を割り切って守備に励んでいる。
その昔はボランチでプレーしながらも、嫌々やっている気配は否めず、とくに守備における貢献は低いものだった。
ところが最近は後ろからのスライディングやファールを行う位置、ファールのやり方に至るまで著しい改善が見られる。
昔は、相手に抜かれそうになると、へっ、と足だけ伸ばして引っかけた挙げ句にイエローカードを戴いていたものだが、最近はちゃんと体を寄せてから足をかけるのでカードを貰わない。

どういう心境の変化かは解からないが非常に望ましい変化であり、マドリーが結果を残し始めたのは、グティのボランチでの起用と時を同じくしている。

これで、来週の、というか今週のクラシコは大丈夫か、といえば、エルゲラの怪我の具合が鍵かと。
普通のチームはマドリーのボランチにプレッシャーをかけようと試みるが、バルサはセンターバックそのものを破壊しようと試みる。
もしエルゲラが返ってこなければ、センターバックはパボン、メヒア、サムエル、ブラボから二名を選ぶことになり、いずれにせよ相手に食べられてしまうのは間違いない。

その場合はミチェル・サルガドに全てを託すしかないのですが。

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