本日は、レアル・ソシエダーが如何にしてボールを前に運んでいたか、という疑問を考えてみようかと。
まず、ここ最近のソシエダーは、1−4−1−4−1を採用している。
このシステムは、1−4−4−2系のシステムに対して守りを固める、という点では非常に優れているのだが、攻撃面で多くの問題を抱えている。
これは、システムの構造上、ボールを奪う位置が自分のペナルティーエリアに近いことが多く、その後に危険な位置で攻撃を組み立てなければならないためであり、危険を避けてロングボールを多用しようとしても、フォワードが一人しかいない関係で、それをキープするのは難しい。
よって、1−4−1−4−1を用いるチームは、ボールを回収した後、それを相手陣に運ぶ段階で非常な苦労をしいられることが多い。
このため、「レアル・ソシエダーはいかにしてボールを前に運んでいるのか」という疑問を解決することは、実際にそのシステムを採用する監督にとって有用であると考えられるし、試合を観戦する視点を一つ増やす、という意味でも有意義であると考えられる。
と、まぁ、そんな能書きはさて置き、図1、図2、図3、図4、図5は、試合開始直後のゴタゴタが収まってプレーが落ち着いた後、20分までにソシエダーが有効な形で相手陣内に侵入した状況を表している。
図の記号としては、実線が選手の動き、点線がボールの動き、ジグザク線がドリブルを表している。
よって、見方のコツとしては、最初に点線とジグザク線だけを追えばボールの動きがわかり、そこから視野を広げて選手の動きを追うとわかりやすい。
これらを見ると、図4を除く、すべての図において、いわゆる「クサビ」と称されるボールの動きが見られる。
クサビとは、広辞苑には、「堅い材木または金属で、一端を厚く他端に到るに従って薄く作った刃形のもの。」とある。
要するに、ある方向から見たら、Vの字型をしている物体である。
ラ・レアルのそれは、非常にわかりやすく、常にコバチェビッチが尖った先にいる。
図1では、ガリからのボールをカルピンへ、図2ではカルピンからのボールを自分で自陣方向へ、図3ではリエスゴからのロングパスを頭で自陣方向へ、図5ではカルピンからのボールをカルピンへとVの字型に返している。
図2は一般的なクサビの概念からずれるが、「後ろから前にボールが渡り、そのボールがもう一度後ろに返る。そして、その軌道がV字型をしている。」という意味において、まったく同じ文脈を備えている。
「ラ・レアルはコバチェビッチに一度ボールを当てて戻すことで前に進んでいる」というのは、よく知られている事実であるが、上記の5つの図からは、「カルピンがコバチェビッチにボールを当てることで、当られたボールが後ろに戻ることが多い」という現状が垣間見られる。
さらに言えば、レアル・ソシエダーは、前節、カルピンを累積警告で欠いたバスクダービーにおいて、ほとんどボールを前に運ぶことなく、自陣でボールを失うミスから2点を奪われ3−0で敗れ去った。
その試合でもコバチェビッチをトップとした1−4−1−4−1が使われており、それと今回の試合を考え合わせると、「コバチェビッチとカルピンがワンセットになってボールを前に運んでいる」という一文の信憑性が増す。
つまり、「1−4−1−4−1において、如何にボールを前に運べばよいか。」という疑問に対しては、
「最前線にクサビを捌くのが上手い選手を置き、その一つ下にクサビを打つのが上手い選手を置けばよい」
という、ある意味、当たり前の解答が得られる。
しかし、1−4−1−4−1で、「ワントップとして、クサビを捌くのが上手い選手を置く」というのはほぼ常識になっているが、その下の選手の選択が異なる場合は多い。
今後、この点に注目して1−4−1−4−1を採用したチームのデータを集めることにより、今回の結果の妥当性が見えてくるのではなかろうかと。
一方で、ワントップとして、、キープ力よりもスピードを重視する一派も存在する。
これは、図4のように中盤のラインの間を抜けるボールを前に出ながらカットして、それを直接縦に走るフォワードに渡してカウンターを行う、という筋を重視するためである。
しかし、これは、後ろがそのスピードについていけず、トップが完全に孤立する場面が増えるばかりなので、有効な解答とは言い難い。
レアル・ソシエダーも、昔ニハットが健在だったころに彼をワントップにおく同じシステムを採用していたが、まったく機能しなかった。
二週連続でデポルを取り上げながら、一言も触れていないのは心苦しいのですが、本日はこれにて。