リーガではチャンピオンズリーグ圏内で踏ん張り、UEFAでも頑張り続けているセビージャと、ガビロンドにアルキサまでが出場できず、苦しい布陣のラ・レアルの対戦。
水曜日にアテナまで出張して、パナシナイコスに敗れたセビージャとこの日の先発は、右サイドのフェルナンド・サレスをジョルディに、トップのアントニートをマククラに変えただけで後の9人は同じ。
同じUEFAで、小雪が舞うロシアのサンクト・ペテルスブルグに行った時も同様の事をやっていたが、これでシーズン終盤まで戦い切ったとしたら、選手の体力面を管理するフィジカルコーチのラモン・オレジャノの功績は大きいのではないかと思われる。
対するソシエダーは、ボランチと左サイドに選手を欠いたおかげで、右サイドのカルピンをボランチに置いて、普段ボランチをやっているアランブルを左サイドに置いた。
昔から人手が足りなくなるとボランチをやっていたカルピンではあるが、記憶にある限りで、この試合程見事な働きを見せたことはなかった。
ボールを捌けば時間をかけずに相手の最も薄い場所にボールを運んだかと思えば、相手がカウンターに出る瞬間をえげつないファールで潰し、さらには後半も40分を過ぎてもサイドバックのヘルプに戻って見事なタックルを炸裂させる。
2月2日で36歳を迎えたはずではあるが、レアル・ソシエダーのどんな若手よりも若々しい動きを見せている。
ソシエダーの若者達は年に似合わずベテラン芸を持った選手が多く、スピードと体力でガンガン行くというよりも、ゆったりとボールを持って落ち着き、その場でクルクルと回転しながら相手をいなすタイプが多い。
シャビ・プリエト、ガリ・ウランガもそうであるし、センターバックのラバカも10年選手のような落ち着きを見せている。
お隣りのビルバオには、ジェステ、デル・オルノ、イラオラなど、テクニックに加えて、性質的にも前に出るタイプが多いだけに不思議な特徴ではある。
ラ・レアルの右サイドで先発したシャビ・プリエトはU−21の代表選手であるが、この日は相手の左サイドバック、ダビーにまったく歯がたたなかった。
ダビーは身長が低いせいか、ピッチ上ではあまり目立たないが、ほとんどすべての試合で重要な役割を果たしている。
別にドリブルが上手いわけでもクロスが上手いわけでもないが、一対一において相手のイメージを読み切る能力に長けており、彼の裏を取るのは非常に難しい。
試合中、シャビ・プリエトは何度か良い形でボールを持ったが、ダビーに相対すると正に蛇に睨まれたカエルのようになり、ボールを失うだけだった。
若者(21歳)の前に、壁となって立ちはだかるベテラン(31歳)の図、という意味では典型的なものだったのではないかと。
試合内容はというと、両チームともに決定的な場面は少なかった。
その中で、最も美しく相手の守備組織を崩したのはセビージャで、図1から図2のような流れだった。
まず、ディフェンスラインでボールを回し、アイトール・オシオからパブロ・アルファロにパス、それに合わせて右中盤のフェルナンド・サレスが相手ボランチと左中盤の間に引く。
アルファロはそこにボールを当てる。(図1)
ラ・レアルの左サイドバック、ロサトに背中に張り付かれて振り向くことのできないフェルナンド・サレスは、フォローに入ったマルティにバックパス。
それに合わせてサレスが空けた右サイドのスペースにダニエル・アルベスが走りこみ、マルティはダイレクトでそれに合わせる。(図2)
というパターンで決定的な場面を迎えた。
結果的には、あと一歩の所でセンタリングをルイス・アルベルトにクリアされてしまったのだが、これがこの試合で最も綺麗な集団での崩しだった。
ちなみにこの場面で間違いを犯しているのはアランブルで、ソシエダーはサイドバックは引く相手についていく決まりになっているようなので、その場合、左右の中盤は中央に入るパスに反応せずに敵のサイドバックを追いかけないと確実にはまる。
それはさて置き、この場面で攻撃のタネ、というか、攻撃を始めるきっかけになっているのは、フェルナンド・サレスからマルティへのバックパスである。
後ろに戻したパスを合図に周囲が縦のスペースへと走り、そこへダイレクトでパスを合わせる、というのは一般的に有効な手法で、一昔前は抜群に強かったクーペル時代のバレンシアがこれを多用していた。
ディフェンスラインからボランチ(ファリノス、ジェラール)に当ててバックパス。その瞬間にクラウディオ・ロペスもしくはアングロが縦に飛び出して、そこにペレグリーニがトラップなしでロングボールを合わせる。
といったパターンだったが、明らかに「当てて戻して裏狙い」、というのを徹底していた。
これを意図的に狙う場合と、偶然そうなってうまくいく場合の二種類があるが、試合毎にこのパターンを抜き出して整理すると結構面白いことがわかると思いますので、研究していただけるとよろしいかと。
試合結果としては、0−0で終わりかと思われた85分に、エリア内のコバチェビッチが後ろ向きで受けたロサトからのロングパスを胸トラップでやや左サイド後方にコントロールし、そのまま反転シュートを決めてラ・レアルが勝利を収めた。
これはこれでめでたしめでたしなのですが、その引き換えにニハットを全治6ヶ月の怪我で失ってしまった。
おまけにニハットが怪我をしたプレーというのは、3人の相手ディフェンダーの中にドリブルで突っ込んで行ってボールを失い、それを無理に取り返そうとして足を伸ばして空振り、変な体勢で着地した右足がロックした挙げ句のものだった。
これは、世間一般では自爆といわれるものであり、それにより最も大切な選手の一人を失った監督の心労は、今後、増える一方であると予想される。