病床にて (2005.01.19)

(ある家の寝室。窓際のベットに金髪の青年が一人。腕を頭の後ろで組み寝ている。枕もとには読みかけの新聞が投げ出してある。)

「ちっ。なんだよ、グラベセン、グラベセンって、、、俺の風邪の具合は誰一人心配してくれねぇのかよ。大体よ、なんだって俺のポジションにばっかり選手を取ってくるんだ?最近みんな忘れがちだけどよ、俺が本当はどこでプレーしていたか知ってるか?トップ下だぜトップ下。フォワードの後ろで攻撃を操る花形職業ってやつだ。そりゃ昔はレドンドの髪型をもろにパクってたこともあったけどよ、あれは憧れからくる若気の至りってやつで、別にボランチを志願したかったわけじゃないんだ。ああ、あのころは良かったなぁ。」

「そんでよ、これもみんな忘れてる事の一つだけどよ、俺が何回チャンピオンズリーグを獲得したか知っているかい?3回だぜ3回。最初はユベントスが相手だったけなぁ、決勝に出場したわけじゃないけど、試合が終わった後はビシッと黒いスーツに身を包んで颯爽とピッチにあらわれたもんさ。自分で言うのもなんだけど、あれはカッコ良かったなぁ。あの時代は左利きだってだけで、左サイド置かれたこともあったけど。まぁデビューしたてだったからね。」

「そういえば、モリエンテスが調子を崩すと全く点を取れない時代もあったなぁ。そんな時は、この俺様がセンターフォワードをやってチームを救ったもんさ。ありゃ、2001-2002シーズンの後半だったかなぁ。チャンピオンズリーグで重要なゴールをいくつか決めたもんだ。そう言えば、このシーズンの準々決勝、バイエルン戦で試合を決めたのは誰だったか知ってるかい?もちろん、この俺様さ。そんで、2001-2002シーズンに誰がチャンピオンズリーグトロフィーを獲得したかしっているかい?レアル・マドリーさ。」

「そんでよ、次のシーズンに誰がやってきたか知ってるか?よりによってロナウドだぜ。おまけによ、開幕からフィジカルコンディションが良くないブラジル人の代わりに誰がセンターフォワードをやってたか知ってるか?もちろん、この俺様だぜ。あのシーズンは最初っから調子が良くてよ、例えばローマとの試合では目のさめるようなゴールを二つも決めたもんさ。特にエリア左から左足で中に切り替えして右足で逆サイドネットに決めたやつ、あれは美しかった。自分でも自分の才能が怖かったくらいさ。」

「でもな、ロナウドが怪我から回復したらどうなったと思う?俺はベンチ行きさ。そんで出番といえばボランチに穴が開けばボランチをやり、トップ下に穴が開けばトップ下、トップ潰れたらトップ、、、俺は便利屋か???あの時は本当にマドリーを出ようかと思ったよ。調子がいいのに使われなくて、他人のケツばっかり拭かされてたんじゃやる気もおきねぇよな?そうだろ?」

「で、次の年にはマケレレがいなくなって、ベッカムがやって来たってわけさ、これがまた。そんで俺はわりと先発の機会が増えたんだけど、ポジションはなんとボランチ。自慢じゃないけど、俺様は守備があんまり好きじゃないんだ。大体、ガキの頃からそんな仕事をやらなくても十分にやっていけたからな。そんでよ、この俺様が慣れないポジションでチームの攻撃をリードしているってのに浴びるものいえば罵声ばかり。”守備が下手だ””ファールの仕方を知らない””彼はあのポジションに向いていない”ってなもんだ。向いてる向いてねぇじゃねぇんだよ!やれって言われたからやるしかねぇだろうが。それなのにカシージャスまでが俺が守備ラインの前にスペースを空けると文句をぬかしやがる。それも試合中にだぜ。」

「まぁ、今考えると俺も悪かった。自分のポジションじゃない、って考えが頭のどこかにあったから100%でやっていなかったのかもしれん。言ってみりゃ、ちょっとふてくされてたってとこかな。でもな、今シーズンは違ったぜ。そこしか俺の出る場所がねぇってんならやるよ。守備が下手だ下手だとぬかしやがるけど、俺様をアイデアで出し抜ける奴はいねぇんだから、その気になりゃできないわけがない。そう考えたもんだから、自分できっちり研究したさ。ポジショニングもそうだし、ファール一つをとっても格段に上手くなったと思っている。そうだろ?」

「そう思ってやってたら冬のマーケットで誰を取った?あぁ?グラベセンだぜグラベセン。俺のポジションともろ被りじゃねぇか!俺はいったいなんなんだよ!あっちいけこっち行けと散々引き回された挙げ句に、そのポジションに慣れたと思ったら必ず新しい選手を取りやがる。それも会長の”意向”とやらで。そんなに俺が憎いのか?まるで俺がチームに穴を空けているみたいじゃねぇか。俺が何をやっても不満ならとっととどこかに出しやがれ!俺の努力はなんだったんだよ、なんにもなりゃしねぇじゃねぇか!」

「、、、、ふう、風邪の頭で考えるもんじゃねぇな、、、ろくなことになりゃしねぇ、まったく。また熱も上がってきたし、ちょと眠るか、、、」

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