イナモト (2006.12.07)
「さて」

「なんだ」

「最近ガラタサライの試合を見たのだが」

「最近というのは、一昨日のはずやな」

「まあそうなんやけどな」

「それがどうした」

「久しぶりに稲本を見たわけだ」

「イスタンブールの関西人か」

「どんなキャッチフレーズやねん」

「なんとなく意味ありげやろ」

「あほか」

「ちなみに、ガラタサライの先発はこんな形だった」



「名前がアルファベットなのはあれか」

「トルコ風の読み方がわからないからしょうがない」

「稲本は右のボランチで先発していた」

「基本的に、あまり深く戻らないでカウンターの起点になるように指示を受けていた」

「動きを見る限り、そういう感じがする」

「その分、オカンが裏をカバーしてくれるわけだ」

「やっぱり関西人にはオカンのフォローが必要やな」

「ついでにアメちゃんでもポケットに入れておくか」

「ユニフォームにポケットはないけどな」

「ちなみに、”おかん”というのは母親で、関西のおかんは100%、”アメちゃん食べるか”と言って話しかけてくる」

「誰に説明しとんねん、誰に」

「いや、一応な」

「それで、稲本を見て思ったのはだな」

「なんだ」

「早いタイミングで出すパスがよかった」

「確かにいい角度とスピードで飛んでたな」

「ボールコントロールも含めて、ツータッチ程度で出すパスは、味方にも信用されているらしい」

「みんなそのタイミングで浮いてくれるしな」

「攻撃の起点としては申し分ない活躍だった」

「それに関して言えば、ガラタサライの3点目も稲本のパスから始まった」



「稲本のパスは、右サイドを縦に行く選手がスピードを落とさず、ほとんどコントロールの必要もなくて、そのままの勢いで前に走れるように調整されていた」

「こういう感じの、受け手のリズムを切らないパスが多かった」

「確かに」

「サイドに展開するパスの精度も良かったのではなかろうかと」

「そうやな」

「うむ」

「その反面だな」

「なんだ」

「タッチ数が多くならざるを得ない場面というか、相手が寄せてきた場面でボールをなくす場面が多かった」

「浮き球の処理も今ひとつやったな」

「パスコースが幾つかある時は、それを脅しにすることで相手を寄せ付けないけど、敵が近い状態でパスを受けると、自分から慌てて勝手にボールをなくしてしまう」

「リバプールの2点目は、稲本のありえない取られ方から始まったのは無念だった」

「無念というか、自分でバランスを崩して奪われているような気がするが」

「ところで、射撃馬鹿、という言葉を知っているか?」

「なんだ、やぶから棒に」

「軍隊の世界では、日本人は小銃射撃が下手だと言われているらしい」

「なんの話だ」

「そこで、射撃馬鹿、という言葉があって、普段すこしボーとしているか抜けているように見える人間の方が上手いらしい」

「馬鹿なのに上手いという意味なのか?」

「そうらしいで」

「射撃馬鹿といえば、射撃ばっかりする男のイメージやけどな」

「敏感な人間は引き金を引くときにブレが出るらしいけど、ボーっとしている人間の方はそれがないそうな」

「で、何が言いたいのだ?」

「日本人は、ゴール前でも接近戦でも神経が過敏過ぎるから簡単にミスをするような気がする」

「そうかね」

「勝手に緊張して、勝手に体なり精神のバランスを崩しがちのように見える」

「じゃあ、少しボーっとした人間をフォワードなりなんなりに置けば点が取れるのか」

「まあそうなる」

「ほんまかいな」

「個人的に、批判やら自分のミスにちょっと鈍感なところがロナウドの偉大さだと思うけどな」

「どんな誉め言葉だ」

「敏感であることが常にいいことでもないやろ」

「それはそうやけどな」

「じゃあ、これからはそういう選手を中心にスカウトするか」

「そうしてくれ」

「後は、稲本を見てポジショニングの難しさを感じた」

「どういうことだ」

「稲本が守備に走る時は、いつも相手の後を追いかけ回している」

「まあそうやな」

「後追いというのは守備としては良くなくて、先回りして待つ方が望ましい」

「それもその通り」

「そうなると結局ポジショニングの問題になるわけだけど、彼のポジショニングをどう修正していいのか、言葉で簡単に表せない」

「それぞれの場面では言えるやろ」

「それはそうやけど、ここをこうすればポジショニングが良くなる、という肝のような部分を伝える言葉が見つからないわけだ」

「それはしゃあないな」

「そんな点を今後研究して行きたいな思っているわけだ」

「そうか」

「そうだ」

「なにはともあれ、今週はこの辺で」

「ご機嫌よう」

「また来週」


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おまけ:交代の後