欧州王座を賭けた一戦において、ライカールトはロナウジーニョを中央に、エトーを左サイドに配した。
今シーズンのバルセロナがエトーを左に置く時は、攻撃参加を得意とする相手の右サイドバックを押さえることを主眼にしており、この場合は、アーセナルの左サイドバック、エブエを押さえるためだった。
また、これと同時に、中盤の右側には好調のイニエスタではなくファン・ボメルを配した。
これは、肉体的に強い彼を中盤に置くことで守備面を強化するためだと考えられる。
この2人の起用からは、決勝の舞台で先制点を取られることを避けたいライカールトの意志が読み取れる。
しかし、実際には、このシステムはうまく機能しなかった。
例えば、開始2分には、
図のような形でエブエのオーバーラップから、中央でフリーになったアンリがキーパーと一対一になった。
この決定的なピンチは、ビクトル・バルデスの見事なセーブで事なきを得たが、本来ならば、
図のような形でエトーはエブエをマークしなければならない。
そうでなければ、エトーを左サイドに置いた意味はなく、最前線が苦手なロナウジーニョを無理に置いたマイナス面だけが目立つことになる。
実際に試合は、攻守に中途半端なバルサをアーセナルが押し込む形で進行した。
15分までは、ライカールトの選択の負の部分だけが目立ったが、18分にロナウジーニョの中央からのスルーパスを受けたエトーがキーパーに倒されたプレーで試合の流れは一変する。
レーマンは、得点機を意図的に邪魔したとして一発退場。
バルセロナは数的優位に立った。
しかし、その後は優位に立った気の緩みから攻めあぐね、さらには37分にセットプレーからキャンベルのヘディングにより1点を失った。
このフリーキックは、エブエのオーバーラップから奪われており、バルセロナは結局、彼の上がりを押さえることができなかった。
この得点に観念したのか、ライカールトは直後に
ロナウジーニョを左に戻した。
これにより、バルセロナの攻撃は普段の流暢さを取り戻し、前半を終えた。
後半に入ると、エジミウソンに代わりイニエスタが入った。
これは、一人少ない相手に後方からゲームを組み立てるためであり、エジミウソンよりもパスに優れるイニエスタがその任を負った。
この交代はバルサを加速させ、イニエスタが前線に入れるタイミングのいいパスが攻撃の起点となった。
しかし、それでもゴールが遠い現状を見たライカールトは、
61分にファン・ボメルをラーションに代える。
これは、トップにラーションを入れ、エトーを再び左に回し、ロナウジーニョを中盤に下げるためだった。
同じような交代は、チェルシーとの第1戦でも見られ、よい結果をもたらしていた。
そして、
71分には、オレゲルをベレッティに代えた。
これは、
図のように、ロナウジーニョが中央に入り、ジュリーがサイドからセンターに動くことで生じる右サイドの大きなスペースを利用することが目的だった。
また、この時、左センターバックだったプジョルが右に移動し、ベレッティの裏をカバーするようになったことは注目に値する。
この段階で、バルサは交代枠を使い切っており、結果的には、代わって入った3人、イニエスタ、ラーション、ベレッティが勝利をもたらすこととなった。
まず、同点となるゴールは、78分に生まれた。
図のような形から、
ボールが動き、エトーからのバックパスをイニエスタがラーションにつなぎ、触った触らないかくらいのタッチでラーションが前に流したボールをエトーが決めた。
中央へのボールをカットしようとしたジウベウト・シウバの裏を取ったイニエスタのパス能力。それに合わせたラーションのフリーランと絶妙のボールタッチ。それを、ファーサイドに蹴るフェイントからニアに決めたエトーの技。すべてが完全な調和を見せていた。
特に、エトーは今シーズン、同じような状況で赤線のようにファーサイドへ巻くようなシュートを何度か決めていた。その情報はアーセナルのキーパー陣に達していたはずであり、ギリギリの状況でその裏をかいたエトーの冷静さが光った。
そして、バルセロナの勝利を決める逆転弾は、その3分後の81分に決まった。
左サイドから抜けてきたボールを、
図のような形でベレッティが持ち、サイドへ流れるラーションへとパス。不正確なパスをなんとか拾ったラーションはエリア外でキープした。
パスを送ったベレッティは、
図のようにラーションが空けたスペースへと突進。折り返しを受けると角度のない場所から思いっきりシュートを放ち、キーパーの足に跳ね返ったボールはゴールマウスへと吸い込まれた。
この場面には、1人足りないアーセナルのつらさがよくあらわれている。
本来の1-4-1-4-1ならば、キャンベルがラーションを追った穴を中盤の「1」であるジウベルト・シウバが下がって埋めることにより、スペースを残さない。
しかし、1人足りないことにより、ジウベルトはエトー、ロナウジーニョへのマイナスのパスと、ベレッティへのパスの2つを同時に見なければならなくなった。
このため、ベレッティへの対処が遅れ、決定的な得点を失った。
これは、遅れたジウベルトや、上がるベレッティを追わなかったリュンベルクが悪いという問題ではない。1人少ない状況で60分以上戦い続けてきたアーセナルには、体力的にも戦力的にも、もはや打つべき手は残されていなかった。
ベンゲルとしては、フラミニを入れてロナウジーニョをマークさせるのが残された最後の手であり、その手を打った後に周囲の選手に決められては、ベレッティのゴールの後、うつむくしかなかった。
こうして、バルサの1年は欧州制覇という完璧な形で幕を閉じ、14年ぶり、2度目のビッグイアーを手にすると共に、リーガと合わせた2冠を達成した。

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