この試合で、ラシン・デ・サンタンデールの監督、マヌエル・プレシアードは、マルケスにフアンホ、エジミウソンにシュテファン・ダルマをつけた。(
図)
これは、バルセロナの組み立てを阻害するためであり、ボール捌きの上手い2人を封じ、相対的にパス能力に欠けるプジョルにボールを持たせることを意図している。
このバルサ対策の歴史は古く、昨年のチャンピオンズリーグの舞台において、セルティックの監督、マーティン・オニールが初めて採用した。
この時は、ボランチにジェラールが入っていたこともあり、彼とセンターバックのオレゲルをわざと開けてボールを持たせることで、後方での守備を楽にしていた。
その後、これはリーガにも導入され、
図1のようにプジョル、オレゲルが並んだ時にオレゲルを開ける方法論がしばしば採用された。
現在のマルケス、オレゲルのコンビの場合、相手がこのような策に出た場合、
図2のように2人が位置を入れ替える。
これは、
クラシコ編にあるように、プジョルが得意とするパス領域を拡大させるためである。
この場合、足の遅いマルケスが左に来るため、左サイドバックに対するフォローが遅れがちになるため、守備的には穴が空く。
単純化すれば、プジョルが左に来たら守備重視、右に来たら攻撃重視、という話になる。
実際に、この試合では、キックオフ直後は、プジョルが左にいるが、1分を過ぎると左に来ている。
そして、31分のエトーの先制点の後、プジョルは再び左に移動し、試合終了までその位置でプレーする。
ホームで一点を奪うまでは右、奪ったら左、という動きは、右は攻撃、左は守備、という話と合致している。
また、去年はプジョルとオレゲルが組んで、オレゲルが空けられていたが、今年は、去年マークされていたプジョルが空けられている、という辺りにバルサの層の厚さが感じられる。
この試合のバルサと、バルサが無敵の強さを発揮し始めた当初の配置(
図3)を比べてみると、中盤のデコ、右サイドバックのベレッティが異なる。
2つのうちのどちらが強いかを考えてみると、まず、ベレッティとオレゲルについては、オレゲルが入った方が安定性が高い。
これは、右サイドを固めることで左サイドバックが上がりやすくなり、ロナウジーニョの周囲にスペースができやすくなる、というのが一つの理由であり、もう一つは、去年バルサが苦手とした4トップに近に組まれて中盤を飛び越したロングボールで攻める相手に対して安全度が高い。
ちなみに、後者の手法は、チェルシーがもっとも完全な形で実行してバルサを破った。
次に、デコとファン・ボメルどちらが良いかを考えると、おそらくファン・ボメルの方が組み合わせとして良い。
デコ、シャビ、ロナウジーニョ、メシ(ジュリー)の組み合わせでは、相手ディフェンスラインの一つ後ろでボールを受ける傾向の選手が重なってしまう。
例えば、これらの選手は、サイドからボールが入るときに、ゴールキーパーとディフェンスラインの間に飛び込むよりも、ディフェンスラインが下がったことにより生まれるスペースでボールを受けようとする傾向が強い。
このため、多くのチャンスをつくりだしても、最後の最後に肝心な場所に選手がいない、というシーンが多く生まれる。
その点、エトーの前まで出切るだけの走力と、エリア内での決定力を兼ね備えたファン・ボメルを中盤においておけば、その欠点は修正される。
さらには、ファン・ボメルが前に出ることで、その相方(図3ではシャビ)はやや下がって構えることになる。
これは、左サイド、ロナウジーニョの後ろをカバーするのに好都合であり、この面からも中盤の右にファン・ボメルを使う方がチームとしての機能は向上すると考えられる。
また、ドリブルで中央に入るメシに対してはファン・ボメルを外に走らせることで干渉を最小限に押さえられる。
一方で、デコを使うメリットとしては、第一にカウンターの精度が向上することがあげられる。
例えば、クラシコでロナウジーニョが見せた2つのスーパーゴールは、両方ともにデコからのパスがきっかけになっている。
また、中盤でのボールキープで言えば、デコを入れたほうがよい。
ライカールトが、この2人をどのように使い分けていくのか。非常に興味深い。

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追記:
ラシンは、前節のデポル戦においてシュテファン・ダルマを左中盤に置き、アガンソをトップ下、アントニートをトップに置いて戦っていた。
その試合では、左でボールをキープするダルマが攻撃をリードしていた。
バルサに対しても、前半はダルマを左に置いてボールをキープさせると同時に、トップ下に兄弟ダルマことウィルフリード・ダルマなどを置いて守りを固め、後半からオスカル・セラーノを投入してそのスピードをいかす、という手も考えられた。
また、ラシン・デ・サンタンデールで注目すべき点としては、メロ、ネルー、ドゥドゥなど、妖怪人間的な名前が多いことがあげられる。