・試合前の状況
ワールドカップ出場を争うヨーロッパのグループ7は、残り2試合の段階で、16ポイントのセルビア・モンテネグロが首位、14ポイントのスペインが2位、13ポイントのボスニアが3位につけていた。
試合前の段階で先に試合を行っていたセルビア・モンテネグロとボスニアの勝利が確定し、その段階ではセルビア19ポイント、ボスニア16ポイント、スペイン14ポイントとなっていた。
スペインにとっては引き分けでは2位通過も危うくなる状況だったため、アウェーにもかかわらず攻めざるを得なかった。
・状況を受けた各チームの対策
ルイス・アラゴネスは、トップにトーレス、左右にビセンテ、ホアキンを配し、ボランチのシャビに組み立てを任せ、サイドバックのサルガド、アントニオ・ロペスを上げる、総攻撃に近い作戦を採用した。
これに対してベルギーのアメイ・アントゥニスは、センターバックの横、サイドバックの裏にエミールとムボを徹底的に走り込ませた。(図1)
これは、スペインの置かれた状況からアラゴネスがサイドバックを上げてくることを読んでの対策だった。
また、ベルギーの作戦には二の矢が用意されており、図2に示されたように、フォワードが空けたスペースにサイドからゴール、ブッフェルが入り込んでゲームを動かす仕組みになっていた。
これらの仕掛けは、開始から30分までは上手く機能し、8分20秒、15分55秒、16分40秒、17分30秒と次々にチャンスをつくりだした。
・ベルギーの失速とアラゴネスの一撃
前半途中まで調子のよかったベルギーではあるが、その後は失速してスペインに押し込まれ始めた。
サイドバックを上げてくるスペインの弱点を突いたベルギーの攻撃は、理屈的には完璧だったが、斜めに走るゴールとブッフェルに負担がかかり過ぎるため、この二人の失速とともにチームも失速した。
強い相手に対して一部の選手に無理をさせてチャンスをつくりだす、というのは挑戦する側の定石に近い。しかし、その無理が効いているうちに点を決められないと、それがたたって強烈なしっぺ返しをくらうことは多い。
この日は、そのしっぺ返しがアラゴネスの交代により呼び込まれた。
55分に、左右のウイング的な働きを期待されながら機能しなかったホアキンとビセンテを下げ、レジェス、ビジャを送り込んだ。
システム的には、1−4−3−1−2に近い形をとりながら、左のレジェスをウィングに近い位置まで上げるのがこの交代の眼目だったが、たったの1分で結果が出た。
スペインが中盤でキープしたボールが左のレジェスに渡ると、ドリブルでハーフラインを超えたレジェスはファーポストに向けてロングクロス、中央に入るビジャと入れ違いに外に膨らんだトーレスがビックリするくらいに見事なボレーで決めて先制。
その3分後には、アントニオ・ロペスから縦に入ったボールをビジャがキープして左サイド奥に走りこむレジェスにパス。ゴールライン際から中央に折り返されたボールをトーレスが叩いて追加点をあげた。
スペインは、交代で入った選手が見事に絡んで、システムを変更してから4分の間に2点をあげた。
監督の采配が見事に当たった、といえばその通りだが、いっそのこと、いつまでたっても機能しない1−4−2−3−1をやめて、最初っから1−4−3−1−2系のシステムで戦えば良いのではないか、という疑問が残る。
・まとめ
最終戦となるサンマリノ戦では、引く相手を広く攻めるために1−4−2−3−1が採用されると予想される。
そのサンマリノ戦で勝利すれば2位以上が確定し、もしプレーオフに回ることになった場合にシステムを組み替えるか否かが注目される。
現在、2位のスペイン代表と首位のセルビア・モンテネグロとの差は2ポイントある。
最終戦、セルビア・モンテネグロはホームでボスニア・ヘルツェゴビナと戦う。
仮に、セルビア・モンテネグロが引き分けた場合、スペインは4点差以上をつけて勝てば首位となり、ワールドカップ出場が決定する。