まず、この試合は三つのパートに分けられ、
1 どちらかといえばカディス優勢(前半45分間)
2 カディスさら優勢(後半開始から20分間)
3 ロビーニョ登場(後半21分以降)
のようになる。
開始からのマドリーのシステムは、数で言うと1−4−4−2で、中盤はいわゆる菱形になっている。
菱形の構成は、図に見られるように、底がグラベセン、右にベッカム、左にバプティスタ、一番前にジダンのようになっている。
日本ではバプティスタは「バチスタ」らしいが、スペインでは「BAPTISTA」はバプティスタなのでバプティスタでご勘弁いただきたいかと。
昨年を思い出してみると、同じシステムでの配置は、底:グラベセン、右:ベッカム、左:ジダン、一番前:ラウール、という構成だった。
去年と今年の差を考えると、左のジダンとバプティスタの差が大きく、元々ボランチをやっていて、無類に体の強いバプティスタがディフェンスラインに近い位置に入ったことで守備の穴があきにくくなっている。
しかし、その代償として、謎のパスを出すことの多いバプティスタが低い位置でボールを触る回数が増え、同時にボールを失う回数が増えるために攻撃の組み立ては強力にうまくいかない。
さらには、ボールが詰まり気味の時、後ろに下がって組み立てを助けていたラウールが一つ前に行ってしまったことで、そのようなヘルプを行うことが困難になっている。
開幕戦のマドリーを見ると、このように昨年から多少の変更はあるものの、その弱点と問題点は去年とほぼ同じであり、開始5分にロナウドがいきなりのシュートで得点をあげて以降、煮え切らない展開が続いた。
どうでもいいが、この試合が行われたのは、カディスのホーム、ラモン・デ・カランサであり、そこではロナウドに対して「ゴルドー、ゴルドー(デブー、デブー)」といういつもの野次が飛んでいた。
しかし、今シーズンのロナウドはゴルドとは程遠く、ボールを持てば鬼のような切れ味を見せており、このような野次は今後減少していくと考えられている。
それはさて置き、この試合ではマドリーの中盤は機能しなかった。
カディス側に流れがあったことを示すデータは様々あるが、中でも犯したファールの数を見てみると、前半終了時において、カディスの9に対してマドリーは13であり、リードしていたマドリーの方が余計にファールを犯している。
後半に入るとこの流れはますます加速し、カディスがより相手ゴールへと近づいた。
そして、63分にはエストヤノフのコーナーキックからオリが落としたボールをパボーニが反転しながらのボレーシュートを決めてカディスが同点に追いついた。
この後の数分は圧倒的なカディスペースとなったのだが、66分にルシェンブルゴがロビーニョを送り込んでから様子が一変した。
その交代後、マドリーのシステムは図のようになっている。
ベッカムとバプティスタのダブルボランチで、最前線にロナウドが一人、その後ろにジダン、ラウール、ロビーニョが位置している。
ロビーニョの位置が右か左か中央か、あまりにも大きく動くのでよくわからないが、中央から左サイドの辺りを主としていた。
彼の登場を期に試合の様相が一変したことから彼の個人技が流れを変えたように思いがちだが、マドリーがペースを握った理由の半分はシステムと選手配置を変えたことによっている。
ベッカムが一つ位置を下げたことでプレッシャーから解放されてロングボールで攻撃を組み立てることができるようになり、ラウールがボランチに近づいて組み立てに参加できるようになったことでパスによる展開がスムーズになり、さらには、ポジションをクルクルと変えるジダン、ラウール、ロビーニョの動きをディフェンス陣がつかみきれなくなったことでマドリーが圧倒的な優位に立った。
そして84分には、ベッカム −> ロングパス −> ロビーニョ −> 胸トラップ −> ロナウド −> 縦突破 −> 横パス −> ラウール −> 押し込み、という順序で勝ち越し点を奪った。
一般的常識からするとグラベセンを外して、ベッカムとバプティスタを中盤の底に並べるのは無謀なようにも思われるが、その横車を押して勝ってしまうあたりに豪腕ルシェンブルゴの本領を見ることができる。
こうなると、次の試合のマドリーの布陣がどうなるのか、という疑問が浮かぶ。
パターンとしては、
1 ベッカム、グラベセンのダブルボランチで前に66分以後のメンバー
2 ベッカム、パブロ・ガルシアのダブルボランチで前に66分以後のメンバー
3 バプティスタの位置にラウールを下げジダン左、ロビーニョがフォワード
の3つが考えられ、おそらく、1の可能性が最も高いと思われる。