スペイン代表が5−1で大勝した、プレーオフ第一戦の対スロバキア戦について。
まず、スペイン側の布陣は、図のようになっており、右の中盤にルイス・ガルシアが入った点が目新しい。
これに対するスロバキア代表の布陣は、図のようになっている。
実に微妙な配置で、見方によっては、1−4−1−4−1ともとれるし、1−4−4−1−1のようでもあるし、がんばれば1−4−2−3−1にも見える。
その原因は、2番のペトラス、7番のフリンカ、6番のカルハンの位置がちょっとづつ互い違いになっている点にあり、このためにはっきりとしたシステムに当てはめることができない。
別にあるシステムに当てはまらなくても、それが機能すればなんの問題もないのだが、この日のスロバキアは、正にこの3人の不思議な配置により多くのピンチを招いた。
その理由を一言であらわせば、黒く塗りつぶされた部分があくことであり、そこに入り込むトーレス、ラウールにボールが渡ると、あっという間にディフェンスラインでの数的優位を失っていた。
典型的な例としては、まず、図2のようなパターンがあげられる。
下がったトーレスが、ペトラス、カルハンの間を通るボールを受ける。この時、センターバックのシュクルテルはトーレスをマークして一緒に動く。
ボールを受けたトーレスは左のレジェスにパス。この時、スロバキアの右サイドバック、ザバブニクは後ろにカバーがいない状態なので、レジェスにプレッシャーをかけることができない。
レジェスは楽な状態でドリブルで前に進むが、この時に中央を見てみると2対2が生じており、非常に攻撃に有利な状況ができている。
さらには、図3のようなパターンも多い。
シャビへのプレッシャーをかけようとするペトラスとフリンカの位置が上がり過ぎる。
この時、トーレスが左に流れると、サイドで簡単に3対2の状況ができる。
シャビは、ライン際でフリーになったレジェスにパスを送り、トーレスは中に入る。
その後は、図4のように進行する。
右サイドバックはレジェスのカバーに回り、右センターバックはトーレスを見る。
すると、ここで、ラウールとルイス・ガルシアが中央に入り、ペナルティーエリア付近で3対3をつくる。
このまずい状況を救うために、ペトラスとフリンカは一生懸命戻る。しかし、瞬発力に欠ける彼らは届かない。
もし届いたとしても、中盤が戻りすぎるためにシャビがフリーになり、ボールを受けた後、簡単にプレーされてしまう。
例えば、スペインの2点目は、左サイド、ハーフライン付近からのFKから始まったが、その後のボールの動きは、この図によく似ており、最終的には一番右でフリーになったルイス・ガルシアが図のような形で縦に抜けて得点を決めた。
前半のスペインの攻撃は、左サイドが起点となっていたが、それは、主に上記の理由による。
では、普段は、1−4−1−4−1のような、中盤に5人居るシステムにやたらと苦労するスペイン代表が、この日は、相手が大事な場所にスペースをあけてくれたおかげで簡単に攻めることができた。
スロバキア側の問題点としては、中盤のポジションずれ、中盤とディフェンスラインの間に空くスペース、サイドでの数的不利から生まれる中央のディフェンス不足、といったところがあるが、これらを一気に解決する方法がある。
それは、ディフェンスのラインを一つづつ下げることである。
前半のスロバキアは、シャビ、アルベルダにプレッシャーをかけ、できれば相手陣でボールを取ろうとしていた。
このため、守備の先頭に位置するフォワードのビテクは、サークルのやや前側に位置していた。
こうなると、スロバキアゴールとディフェンスラインの間に30m以上の距離があき、そのスペースをトーレス、ルイス・ガルシアに狙われるために守備ラインが下げられる。
その結果、中盤のデコボコの間を通されて簡単にパスをつながれる。
それならば、図のように、先頭の位置をセンターラインよりもやや後ろに下げ、守備組織全体を10m下げれば上の悪循環を避けられる。
これに加えて、カルハンの位置を下げ、ペトラスをディフェンスライン前に安置することにより問題となっていたスペースを消せば、相手につけ込まれる隙はなくなる。
実際に、後半開始からのスロバキアは、そのような手をうっており、退場者が出る64分までは自分たちのペースで試合を進めていた。
スペインに対しては、ボランチにプレッシャーをかけて組み立てを阻害する、という対策と、スペースを消してトーレスを封じ、スペインの攻撃を詰まらせる、という対策の2つが考えられる。
予選の戦いを眺める限り、スペインは後者の戦いを苦手としていた。
この試合の前半と後半を比較すると、スロバキア監督のドゥシャン・ガリスが選んだ選択肢は裏目に出たといえる。
一方で、ルイス・アラゴネスの選択はどんぴしゃりの的中を見せており、左サイドを突破して、右サイドから中央に入る選手がシュートを撃つ場合、右に左利きをおいておいた方が都合がよい。
このような展開を見越してホアキンを切っていたとしたら、天才的な所業と言う他にないのですが、真実は藪の中かと。