3連敗中のマドリーは、1点負けた状態で前半を終え、後半に3点を奪って逆転した。
「後半から入ったグティが試合を変えた」といわれるこの試合、なぜ彼の登場により流れが変わったか、その理由を探る企画をお届けしようかと。
まず、前半の攻防は、図1のようにまとめられる。
アスレチックの先発で最も特徴的なのは、トップ下に入ったグルペギの存在にある。
グルペギは、ご存知のように、守備的な中盤を本職としながらセンターバックも務める選手で、守りか攻めかで分類すれば、かなり強めの守備要員にあたる。
その彼をトップ下に置いた監督のメンディブラールの意図はといえば、図1で色が変わっている部分を押さえることにあった。
その範囲を言葉で表せば、ボランチのオルバイス、イボン・ゴンサレスの前方であり、そこをカバーすることこそが彼の任務だった。
プレー中のグルペギの動きを見ていると、サイドに流れたボールを追わず中央に留まり、味方が押し込まれたとしてもオルバイス、イボンのラインまで下がらず、その一つ前に位置を取っている。
これは、前半16分から17分の彼の動きを見るとよくわかる。
これは、いわゆる「ついたて」と呼ばれるやりかたであり、中央、相手ボランチの中央に壁をつくり、相手のボールをサイドに流させ、さらにはサイドのボールが中央に戻ってくるのを防ぐ意図を持っている。
前半のマドリーは、完全にこの術中にはまり、パスというパスが青い点線のようにサイドを単純に縦に流れるだけで、攻撃方向の変化はほとんどなかった。
以上のように、守備面では作戦通りにマドリーを押さえ込んだアスレチックだったが、攻撃面ではサイドのジェステ、ティコが興味深い動きを見せていた。
この二人は、サイドに位置しながら縦に抜ける場面は少なく、二人共に、味方がボールを取り返すと、サイドから中央に入ってボールを受ける場面が目立った。
アスレチックの攻撃を要約すると、トップのエチェベリアとトップ下のグルペギが中央を空け、そのスペースにティコ、ジェステが入ってフリーになり、オルバイスがそこへパスを送ることで機能していた。
エチェベリアの一点目(ウッドゲイトの自殺点)は、正に上の流れから生まれており、オルバイスからセンターサークル左前方のジェステにパス、そこから中央に切れ込んだティコにパス、ティコは左サイドに流れたエチェベリアにパスを送り、エチェベリアがシュート、ウッディの差し出した頭で跳ねたボールは、イケルの逆をついてゴールネットに突き刺さった。
守備のみならず、攻撃でも成果を残したアスレチックい対し、マドリーのシステムを眺めてみると、なんともいえない形をしている。
頑張って目を細めれば、ロナウドをワントップとした1−4−2−3−1に見えないこともないが、実際には、ラウールとその後ろの間に距離が空いた1−4−3−1−2気味のシステムだった。
この奇妙な形は、これまでマドリーが利用していなかったサイドライン際のスペースを活用するために組まれており、ダブルボランチ気味にパブロ・ガルシア、グラベセンを並べることでベッカムをこれまでよりも右サイドライン際に押し出し、これまでロナウドの周りを動いていたロビーニョをより左サイドで固定することで攻撃の広さを重視している。
しかし、実際には、中途半端にサイドを意識したことでこれまで強かった中央が弱くなり、さらには、ディフェンスの鬼、グルペギに中央を押さえられたこともあり、パス方向に変化のない単調な攻めが繰り返された。
前半は以上のように展開し、後半開始からマドリーにとっての大明神ともいうべきグティが登場した。
ハーフタイム直後、アスレチックの側に変更はなく、マドリーのシステムは、図のように変化していた。
ロナウドが左、ロビーニョが右に移り、その後ろにラウール、ワンボランチ気味のパブロ・ガルシアを左右からグティとベッカムが支える、1−4−4−2の中盤菱形とも1−4−3−1−2ともいえるいつものシステムに戻った。
この変更の最大の目的は、グティをグルペギにぶつけることであり、前半、グルペギに支配されたおかげで攻撃に問題がしょうじたエリアをグティのボールキープとパスでこじ開けることにあった。
49分30秒、中央でボールを受け、相手のプレッシャーをかわしながら右のサルガドに捌いたプレーにもその片鱗は見られ、64分に自陣中央やや左から35mを超えるスルーパスをロナウドに送ってラウールの得点を呼び込んだプレーは正にルシェンブルゴの意図した通り、もしくはそれ以上の結果を呼び込んだ。
グティの功績は、ゲームを組み立てることによりチームを立て直した、という他に、相手の作戦意図を完全にくじいた点が大きく、これによりアスレチックとマドリーの立場は逆転した。
さらに付け加えるならば、後半のアスレチックはボランチ以下とその前方の距離が離れ、中盤に大きなスペースを残してマドリーの攻撃を呼び込んだ。
特に、ティコ、ジェステの位置が高すぎ、オルバイスとイボンは守備で苦しんだ。
これには二つの理由が考えられ、一つは前半から攻撃では中央、守備ではサイドを埋めるために斜めに走り続けたサイドの二人の肉体的負担が過剰であったこと、もう一つは、後半も前方からボールを取りに行こうとした監督の指示と、リードを奪い、より安全に戦いたい選手、特に守備陣の思いにズレがあったためだと考えられる。
これらの理由もあり、レアル・マドリーが逆転に成功した66分、この日リーガデビュー戦となったウッディことウッドゲイトが二枚目のイエローにより退場した。
その後のマドリーの配置は面白く、図のような形をしている。
まず、ボランチのパブロ・ガルシアがセンターバックに下がっている。
普通に考えるなら、左利きの彼が左センターバックに入り、右利きのパボンが右センターに入るはずである。
しかし、実際にはその逆になっていた。
次に、ラウールがボランチに下がっている。
先々週、ラウールボランチ説を唱えた身としては興味深い形だったが、70分の交代によりトップ下に戻ってしまったためにその真価はわからずじまいだった。
色々な意味で盛り沢山だったこの試合であるが、レアル・マドリーは終わってみると快勝していた。
しかし、グティを入れたシステムの守備面での問題は相変わらずであり、サイドを重視したら重症、中央を重視しても結構な傷が残る現状に変わりはなく、今後もルシャの頭は痛み続けると予想される。