この試合では、レアル・マドリーは1−4−1−4−1で、ビジャレアルは1−4−2−3−1のような格好で試合を始めた。
マドリーはしばしばこのシステムを用いているが、普段は1−4−3−1−2を用いるビジャレアルがこの配置を採用することは珍しい。
この中で特徴的なのは、9番のギジェ・フランコで右中盤に入っている。
アーセナル戦では、点を取るフォワードとしてトップに入った彼が中盤、それもボランチに近い位置まで下がるポジションに起用されたことは興味深い。
後半に入ると、ペレグリーニは、1点リードした状態で
ギジェをソリンに代える。その結果、システムはいわゆる普通に戻った。
これを見たロペス・カロは、追いつくために2人同時の交代を行い、
60分にサルガドとパブロ・ガルシアを下げて、シシーニョとグティを入れた。
余談ではあるが、この時に交代したパブロ・ガルシアは、主審のテイセイラ・ビティエネスの仇敵であり、過去には「テイセイラ?最悪の審判だなあれは。」という発言で物議をかもした。それが原因というわけではないが、この日も順調にイエローカードを受けた。
ロペス・カロの交代の意図は、グティがボールをさばき、ベッカムの横にシシーニョを上げて、アルアバレーナに対して数的優位をつくり出すことにあった。
そして、66分、レアル・マドリーはベッカムのクロスを、ニアに入る動きからファーに逃げたジダンが頭で逆サイドに決めて同点に追いついた。
この後、ペレグリーニは
70分にホセ・マリに代えてグァイレを入れた。
グァイレを左に入れてシシーニョをマークさせれば相手の攻撃を防ぐことが、グァイレは右に入った。これは、受けに回らず、スペースを残す相手に対して攻め合いを挑んだと解釈できる。
この結果、ハビ・ベンタのシュートがセルヒオ・ラモスのハンドを呼び、ビジャレアルが再びリードを奪う。
しかし、その3分後には、セットプレー前の交代で出来た一瞬の隙を突いてベッカムのキックからバティスタが頭で決める。
そして、同点のまま試合は進み、91分にジダンがラウール・ブラボと交代した。
この時、観衆はベンチに戻るジダンを総立ちで迎えた。
こうして、ジダンのサンチアゴ・ベルナベウ最後の試合は、3−3の引き分けで幕を閉じた。
試合後のジダンは、サイドライン際でリケルメとユニフォームを交換し、戻ってくる選手一人一人と握手を交わした。
その中でも、タッキナルディは万感の表情で手を差し伸べた。
思えば、ジダンがイタリアに移籍してから、ワールドカップを手にし、ユーロでも勝った、いわばジダンの絶頂期、ユベントスでは、その背中に必ずタッキナルディの姿があった。
ジダンのリーガ引退試合とも言うべき試合に、その背中をずっと見ていた彼が敵として立ち会ったことは不思議な縁としか言いようがない。
ジダンといえば、上手いというよりも変態的に上手いトラップや、ブルターン(マルセイユルーレット、ピルエタ)、またぎパス(右からくるボールを右足でまたぎ、そのまま左足のインサイドでパスを出す)などで有名である。
その他にも、転がってくるボールを触らないでコントロールする技術も卓越しており、強く、速く、柔らかかった。
特に体の柔らかさというか、筋肉の柔らかさと強さは正に変態的なプレーを生み出しており、数年前のアウェーのセルタ戦では、
図のような形からゴールを生み出した。
このプレーでは、走る方向とパスの方向が100度以上ずれており、さらには、効き足ではない左で蹴っている。普通の選手では、絶対にこのような状況からゴールにつながるセンタリングを上げることはできない。
このようなプレーの数々が、映像の中だけの出来事になってしまうかと思うと、言い知れない喪失感に襲われる一夜だったのではないかと。

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