この試合、前半のバレンシアは相手陣でボールをつなぐ意図はまったくなかった。
図1は、前半0分から10分までにバレンシアがマドリー陣内で行ったドリブル、もしくは、つないだパスを示している。
以前に同じ基準で作成した、マドリー対ビジャレアル戦での
図と見比べても唖然とするほど線が少ない。(
マドリー対ビジャレアル)
同じ傾向は、
図2(10分〜20分)にも見られる。
ちなみに、前半15分の時点でのボール支配率は、バレンシアの20%に対してレアル・マドリーが80%という信じ難い数字を残している。
あらためていうのもはばかられるが、この試合はバレンシアのホーメであるスタージャ・スタジアムでおこなわれている。
ここまでは、”サッカーをしない”としてファンからも嫌われているキケ・サンチェス・フローレスのバレンシアらしい戦い方だが、
図3(20分〜30分)では突如パスが回り始めている。
しかし、その後は
図4(30分〜40分)、
図5(40分〜45分)に見られるように、パスの数は減少している。
以上の図の中でも、
図1のパス数の少なさは異常といえる。
敵陣でのパスが少ない、ということは、ディフェンスラインで長い時間ボールを回しているか、自陣からロングパスを蹴って直接ボールを失っているかのどちらかだと考えられる。
この試合のバレンシは後者であり、それは異常に低いボール支配率にも反映されている。
一方で、一時は20%:80%だったボール支配率は、試合終了時には42%対58%にまで回復している。
この数字の変化は、キケ・サンチェス・フローレスのゲームプランを反映している。
現在のレアル・マドリーに対しては、危ないゾーンでボールを失わない限り、流れの中で失点することはない。
これは、コパ・デル・レイでサラゴサが証明しており、マジョルカも同じ方針を用いて成功した。
そして、レアル・マドリーはチームとしての持久力に大きな欠陥を抱えており、後半の10分を過ぎるとプレー内容が急激に劣化する。
このことから、キケ・フローレスは、前半にロングボールを多用して自陣でボールを失うことを避け、マドリーの動きが落ちる後半にボール支配を重視して戦うゲームプランを立てており、それが上記のデータに反映されている。
これは、戦術の面だけから言えば模範解答だが、10分間でたった1回しかパスのつながらない試合を見せられるファンはたまったものではないと想像される。
その一方で、キケ・サンチェス・フローレスは、「15試合で10勝5分を記録しているのに、引き分ける度に”サッカーをしない”と批判されたのではたまったものではない」と発言している。
ファンと監督、どちらも「たまったものではない」と思っているあたりが世の難しさを表している。
また、戦術的な視点からすると現在のバレンシアには一つ問題がある。
それは、フォワードのビジャの使い方であり、彼を酷使することでバレンシアの攻撃は形を成している。
ビジャは難しいゴールも決めるが、左右のスペースに流れてドリブルからチャンスを作っても良い働きを見せる。
このため、多くの試合でロングボールを引き出すためのファーストターゲットとして用いられ、右に左に非常に長い距離を走らされており、この試合も例外ではなかった。
これに加え、守備においても、アングロやレゲイロが戻れない時には、自陣の深い位置まで守備に戻る場面も多く、彼の肉体的な負担は尋常でない。
もし、この酷使された状況が続き、バレンシアの37得点の内15を決めている彼が潰れた場合、チームに与える影響は非常に大きい。
ビジャは、昨年もサラゴサで同じように酷使されて怪我を負った前歴を持っている。
疲労によるパフォーマンスの低下の兆候は既に見えており、今後の動向が注目される。
一方で、レアル・マドリーの問題は、バレンシアに”受け潰し”を狙われた点にある。
バレンシアがボール支配を捨てた形のゲームプランを組めるのは、「レアル・マドリーにボールを持たれても恐くない」という認識があるからである。
つまり、現在のマドリーは、攻撃を組み立てて相手を崩す能力があるとは認識されていない。
この原因は、最終ライン、特にセンターバックにゲームを組み立てることのできる選手がいないことが大きく関係している。
イエーロの後は、エルゲラが入ることでどうにかその役割をこなしていたが、彼が抜け、セルヒオ・ラモスとメヒア、もしくは、セルヒオ・ラモスとラウール・ブラボという組み合わせになってからは、セルヒオ・ラモスが一試合に1、2本良いパスを見せる他はボールを触らない方がいいような状況が続いている。
ボランチの補強に躍起になっているマドリーだが、センターバックの補強もそれに劣らぬ課題となっている。

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