現在のバレンシアは、敵陣での守備を前面に押し出して戦っている。
この試合では、特に左右の中盤に位置する選手の動きが特徴的だった。
右のアングロ、左のビセンテは、相手サイドバックがボールをもった場合、即座に寄せていく。
この時、フォワードの2人は
図1のような場所に位置しており、アングロが寄せて前方へのパスコースを切り、短い横パスを誘発する。次に、トップ下に位置する選手が死角からパスを受ける選手にプレッシャーをかけ、これと同時にトップの選手はバックパスを切りつつボールに寄せていく。そこでボールを奪い、そのまま攻撃に移るのがバレンシアの狙いの一つであり、4分25秒には正に狙いどおりの形でボールを奪っている。
この相手サイドバックが持ったらとにかくサイドの中盤が寄せる、という決まりはよほど徹底されており、例えば、
図2のような状況でサイドにパスが出ると、中央に絞っていたアングロは20mダッシュによりプレッシャーをかける。
アングロとビセンテの2人は、前半におけるバレンシアディフェンスの開始点と言うべき働きを見せていた。
一方で、前半のバレンシアの攻撃に目を転じてみると、ボランチとその前方の4人ではっきりと役割が分かれている。
ボールよりも前方に位置するのは、ビジャ、ミスタ、アングロ、ビセンテの4人であり、残りの7人は、ミゲルとウーゴ・ビアナがたまに上がるほかは、ほぼ守備に専念している。
また、バレンシアの攻撃はボールダッシュ後の素早いカウンターを主要な武器としているが、これはアングロとビセンテを早い段階で縦に走らせ、ディフェンスラインの裏を突くことで成立している。
守備でも走り、攻撃でも走るこの2人の貢献は大きく、サイドの中盤がチームを支えているといえる。一方で、あるポジションの選手を走り続けさせると、その疲労の蓄積が心配される。しかし、バレンシアは、このポジションの控えとして、右はルフェテ、左はレゲイロ、ファビオ・アウレリオを擁しており、交代関する不安はない。実際に、この試合の23分にはビセンテの怪我によりレゲイロが左の中盤に入り、チーム機能を改善する働きを見せた。
バレンシアは、45分にミゲルの素早いスローインから相手の虚を突き、レゲイロが先制点をあげた。そして、52分にはアングロのクロスからビジャがヘディングを決めて突き放した。
突き放した後のバレンシアは、
図3のようにシステムを1−4−4−1−1に変更した。
これは、前からボールを取りに行かず、後ろで待ち構えてのカウンターを意図している。
52分の得点の後、バレンシアのサイドの動きは明らかに変化しており、相手のサイドバックがボールを持っても自陣で待ち構え、その代わりに、フォワードの2人がボールを追うようになった(
図4)。
この極めて分かり易い方針変更は、監督のキケ・サンチェス・フローレスの特徴として興味深い。
最後に、このようなバレンシアの守備を破る方法を考えてみると、
図5のようなパターンが考えられる。
サイドバックにプレッシャーがかかる前に逆サイドに展開してしまうというアイデアであり、これが実現されれば中央に絞っているバレンシア守備陣の逆を取ることができる。
そこから、サイドを突破したり、上げたサイドバックを使ったり、もう一度サイドチェンジを行なったりすれば、容易にチャンスをつくりだすことができる。
ただし、プロの世界でも60m前後のロングパスを安定して成功させる選手は稀であり、この図は机上の空論に終わる可能性が高い。
現在のスペインリーグでは、レアル・マドリーのロベルト・カルロス、ヘタッフェのぺルニアがこのような能力を備えている。
特にマドリーには、もう一度サイドを変えられるベッカム、ベッカムを追い越すシシーニョがそろっており、バレンシアとの対戦が待たれる。

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