「今日は、ビジャレル対アーセナルやな。」
「それしかないな。」
「いや、実を言うと、この回を引退を発表したジダンに捧げる、という話もあったのだが。」
「”さよならジネーディーヌ”みたいな企画か。」
「そう。でも、時事ネタが優先ということで、ビジャレアル対アーセナルなわけだ。」
「とりあえず、試合の流れを追いかけてみると、最初は
図のような配置で始まった。」
「システム、選手ともにほぼ完全に予想通りなわけだが。」
「ホセ・マリが消えてギジェ・フランコが入っている。」
「これは、点を取るためと考えていいかね?」
「おそらく。ホセ・マリは、足が速くて持久力があるので、前線からのチェイス、中盤へのフォローに向いている。ただし、決定率はかなり低めなので、チャンスの割に点が入らない。」
「それで、点が取れると期待されたギジェ・フランコなわけだが……」
「あかんかったな。」
「鬼のようにチャンスがあったのに、全部枠の外だった。」
「右のハビ・ベンタからのクロスを頭で叩いたシーンが絶叫モノやったけどな。」
「ドフリーのヘディングで、矢のように枠を外したら厳しい。」
「フォルランの調子が上がらず、それほど点の取れないホセ・マリがいるビジャレルの得点不足は前々から心配されていたわけだが、それが一番大事な試合でもろに出てしまった。」
「中盤は完全に支配しとったけどな。」
「うむ。なぜビジャレアルが中盤を支配できたか、という話については後回しにするとして、交代から見て行こうか。」
「まず、9分にフラミニが怪我をしてクリチが左サイドバックに入る。」
「クリチは面白い選手やな。」
「そうやな。縦に行くぞ行くぞと見せかけて中に切れ込むドリブルもいいし、足も速くてガツガツ行ける。」
「ただ、そそっかしそうな性格が心配やけどな。」
「次の交代は後半に入ってからで、
63分に怪我のホシコがホセ・マリに代わった。」
「これは、ビジャレアルにとって痛かった。中盤でボールが回っていたのはホシコのおかげだったから。」
「アーセナルにとっては天の助けやな。」
「それで、ビジャレアルの配置は
図のようになった。」
「1−4−2−4でいいのか?」
「多分。」
「それで、攻め寄せるビジャレルの攻撃にアップアップだったアーセナルは、
69分にレジェスをピレスに代える。」
「なんでこの時間なんやろな?」
「何が?」
「この交代がよ。この試合のレジェスをなんでもっと早く代えなかったのか、よくわからんということよ。」
「ああ、そうか。」
「守備では前に出るのか残るのか判断がデタラメで、ボールを持ってもまともにキープできない。そんなレジェスを使うよりは、ピレスを入れてサイドでボールをキープさせるか、リュンベルクを左に出して縦を突いた方がいいやろ?」
「それはだな。多分、上がるハビ・ベンタについて行くスピードを重視したんだと思うぞ。」
「それにしても、ハビ・ベンタに詰めて簡単にかわされてたら話がおかしいやろ。」
「まあ、そうやけどな。それで、81分にビジャレアルの最後の交代が行われるわけだが。
図のように、左サイドバックのアルアバレーナをロジェールに代えた。」
「ソリンがサイドに出て、ロジェールがロングボールを出すわけか。」
「それで、この形から相手ペナルティーエリア内でのプレーを増やそう、という意図が見事に当たる。」
「88分にホセ・マリがPKを取ってくるわけやな。」
「クリチがホセ・マリを倒してPK。それを蹴るのはロマン・リケルメ。」
「ペナルティースポットについたリケルメは、神経質に唇を舐めまわし、目が泳いでいる。」
「ゆっくりとした助走から、インサイドキックで放たれたシュートがキーパーの左に飛ぶ。」
「それを読んでいたかのように飛んでいたレーマンはボールを弾く。」
「それをディフェンダーがクリアしてビジャレアルは万事休す。」
「という話なわけだ。」
「PK前のリケルメの様子は変やったな。」
「いつもは何を考えてるのかわからん表情のまま蹴るのだが。」
「完全に緊張していた。」
「それでだ。ああいう極限状態のPKでは、インステップで蹴るフェイクからインサイドで蹴る選手が多いと思わんか?」
「そうかね?だとしたら、その方が枠を外す可能性が低いからちゃうか。」
「PKの統計を取ったわけじゃないからわからんけど。」
「にしても、ビジャレアルは惜しかった。」
「確かに。」
「それで、ビジャレアルがなぜ中盤を支配できたか。という話なわけだが。」
「ハイバリーでは、まったくボールをつなげなかったのに、なぜ急につなげるようになったか。」
「それは、ピッチが広くなったからだと思うんやな。」
「は?」
「ハイバリーは、ピッチが異常に狭いからアーセナルのプレッシャーが良く機能した。でも、より広いマドリガルでは、アーセナルの中盤にズレが目立ち、スペースをいかしてボールをつないだということやと思う。」
「どういことよ。」
「この日の中盤の関係を見てみると、
図のような形で、セスクがホシコ、リュンベルクがセナを見ることになっているわけやな。」
「ふむ。」
「そうすると、
このような形で、ジウベルトの前にいるアーセナルの4人の間にデコボコができるわけよ。」
「うむ。」
「それを突いて、ホシコがディフェンスラインの前にボールを供給したことが攻撃の開始点になっていた。ビジャレアルがペースを握ったのは、この点が大きい。」
「しかし、それはハイバリーでも同じではないのか?」
「この図が、ピッチが狭いとどうなるかというと、模式的には
このようになる。間を通るパスがカットされる可能性が増し、もしパスが通ったとしても、前後、左右の選手同士が近いので、あっという間に囲まれる。これが第1戦と一番違うところや。」
「しかし、ハイバリーはそんなに狭いのか?」
「見た目から狭いやろ?」
「そりゃそうやけど、見た目じゃわからんやろ?データを出せ、データを。」
「
soccer baseによると、縦が110ヤード、横が73ヤードらしいんやな。」
「ヤードではわからん。」
「メートル換算すると、縦が100.60m、横が66.75mや。」
「で、マドリガルは?」
「105m×68mらしい。」
「縦はだいぶ違うけど、横はそうでもないな。」
「まあな。しかし、第1戦との差を見ていると、ピッチの影響でラインが乱れたアーセナルディフェンスの間を、ホシコが絶妙なボールキープとパスで突き、中盤を支配した、という話になっている。」
「ホシコときたか。」
「この試合を見ると、ボールをキープしてからの捌きなら、タッキナルディよりホシコだということがよくわかる。ワンタッチでの捌きならタッキナルディだが。もし、この試合でビジャレアルが勝ったら、MVPはホシコだ、と叫ぼうと思ったが果たせなかった。」
「それにしても、ピッチが違うとそうもプレーが変わるもんかね?」
「変わるで、そりゃ。というか、この試合がその証拠だと思うが。」
「そうかね。しかし、そうなるとアーセナルは大変やな。」
「なんで?」
「いや、決勝はパリやろ?」
「そうやな。」
「あそこのピッチは十分に広いから、その話が本当なら苦労するはずやろ。」
「確かに。バルサもミランも、中盤の形はビジャレアルに似ているから、そこでこの話の真偽がわかるな。」
「では、その辺を楽しみにして。」
「また次回。」
「と言っても次回は明日なわけだが。」

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