「さて」
「本日はサラゴサ対バレンシアなわけだが」
「正確にはバレンシア対サラゴサやけどな」
「前半はバレンシア、後半はサラゴサという試合になった」
「シュート数を見ると、前半はバレンシアが12でサラゴサが1、後半はバレンシアが6でサラゴサが14だった」
「まあ見事な逆転現象だった」
「それでなぜそうなったかを見ていこうという話なわけやな」
「うむ」
「まず、先発は
こうなっていた」
「バレンシアは普通で、サラゴサは少し異常やな」
「異常というか1-4-1-4-1やな」
「1-4-4-2と1-4-3-3の中間のようなシステムが基本のはずやけどな」
「1-4-1-4-1は、1-4-4-2に対して守るのに向いている」
「特にボランチを潰しやすいからな」
「しかし、守備を重視したはずのサラゴサが、上に見たように12本のシュートを打たれて2点を失った」
「ちょっとギタギタにされた感じやったな」
「その原因は
こう表される」
「ふむ」
「サラゴサは、相手ボランチに当たる場所にオスカル、アイマールを起用している」
「両方トップ下の選手やな」
「つまりボールを奪ったあと、ここでキープすることで攻撃につなげる、という意図だったと解釈される」
「そうかね」
「しかし、当然ながら守備の面でマイナスが出る。オスカル、アイマールともに体を寄せるディフェンスはまったくできない」
「それはしゃあないな」
「そのプラスマイナスがどう出るか、というところで、大きくマイナスと出た」
「特にマルチェナは余裕のプレーを見せていた」
「そこからボールを散らされると、
このようになる」
「押し込まれるというやつやな」
「1-4-1-4-1の良さというのは、中盤でかっちりと止めてカウンターに移るところにあるわけで、こうなると中盤は後ろに走るばかり、前線のミリートが1人孤立して反撃もままならなくなる」
「それが前半の流れやな」
「これはいかん、ということで、後半のサラゴサは
このようになる」
「でたな」
「でたわけだ」
「ビクトル・フェルナンデス必殺の男前布陣やな」
「守備ってなあに、くらいの勢いで攻めるサラゴサ本来の姿ともいえる」
「サラゴサは組織守備を捨てて点を取りにいったともいえる」
「そして、面白いことに、サラゴサが組織守備を捨てたことで、バレンシアも守備組織を保てなくなった」
「人間付き合いは大切やからな」
「例えば、サラゴサが組織を崩して、バレンシアはきちんと守ったとする」
「
こんな感じか」
「選手はもっと右に寄せていいけどな」
「名前が重なって見にくくなるんや」
「この時サラゴサの後方を見ると鬼のようにスペースが空いている」
「
こんな感じか」
「バレンシアが取り返すと一気のカウンターで
こういう形になる」
「サラゴサの守備としては終わった形やな」
「攻撃側としては大喜びでこうなりたい」
「スルーパスでもドリブルでもシュートでもなんでも効く形やしな」
「ところが、この時のバレンシアの後方に注目すると
こういうスペースがある」
「まあしゃあないな」
「しゃあないけれども困るわけだ」
「前線と中盤とバック、前に行けば行くほど飛び出すスピードが速くなるから、間延びするのはいたしかたない」
「それにミゲルやホアキンはこういう状況で止まる選手ではないからな」
「崩せる相手は崩したくなるのが選手の本能というやつや」
「ところがカウンターというのは常にゴールが決まるものでもない」
「当たり前や」
「バレンシアとしては、ボールを失うともう一度
この形に戻らなければならない」
「大変やな」
「選手の走る距離も大変だし、崩して整えて、崩して整えての繰り返しが心理的にも負担になる」
「そして大体どうなるかというと」
「まあどうせ崩れるものなら崩れたままでいいか、的な話になる」
「そして始まる叩き合い」
「これぞスペインリーグの楽しみ」
「餅は餅屋、叩き合いはサラゴサ」
「普段からこういう状況でプレーしているだけに強い強い」
「逆にバレンシアはスペースの広い状況でプレーすることがほとんどないから慣れていない」
「そのせいか、チャンスでなんでもないミスが多発していた」
「これが後半のシュート数、サラゴサ14、バレンシア6につながる」
「これはいかんということで、バレンシアは63分にアングロをガビランに代えて、67分にアルベルダをウーゴ・ビアナに代える」
「
こうやな」
「ガビランは、サイドに走れる選手を入れて、トップ下にシルバを入れることでカウンターを強化しようという狙いだとは思うが」
「アルベルダは意外やったな」
「彼もそうとう怒ってたしな」
「2-0でリードしていて、要するに守ればいい状態での交代やからな」
「守備の人を自認するアルベルダとしては、あそこで交代させられては、”お前はチームに要らない”と言われるに等しい」
「キケしては、スペースはあちこち空いていたから、そこをビアナの左足からのパスで突いて欲しい、ということだったと思うが」
「そうなんかね」
「この交代の意図はよくわかってないんやけどな」
「で、この後、サラゴサにモビージャとエベルトン、バレンシアにホルヘ・ロペスが登場して
こうなる」
「75分から79分にかけてやな」
「サラゴサは攻め駒を全部出して、バレンシアはサイドを走らせて、トップ下のホアキンにドリブルで前に運んでもらおうという話かね」
「結局、サラゴサの攻撃も実らず後半は0-0、トータル2-0で終了した」
「ビクトル・フェルナンデスはどんな気持ちなんやろな」
「どういう意味や?」
「いや、叩き合いを信条とする彼が、前半守りを固めて2失点、後半はいつものように戦って優勢。後悔が残る一戦だったんじゃなかろうかと思ってな」
「後悔はあるかもしれんけど、難しいところやで」
「何が?」
「前半からスペースを空けて戦うと、サラゴサは息切れすることが多い。それにバレンシアの攻撃陣、シルバ、ホアキン、ビジャにスペースを渡すのは危険極まりない」
「それを守ると自分達が窮屈になるやろ」
「その兼ね合いで、守るという選択を取ったわけでそれはそう判断したんだからそれで良いという話ではないかね」
「じゃあ、アイマール、オスカルをアルベルダ、マルチェナにぶつけたところが問題かね」
「それもやってみなわからんし、結果論ちゃうか」
「まあそうとも言えないこともない」
「この試合、ビクトル・フェルナンデスは本当に勝ちたかったんやと思うで」
「ベンチでもいつもと様子が違ったからな」
「少し躁な状態だった」
「これに勝てば念願のリーグ優勝にわずかな望みがつながり、さらにはチャンピオンズリーグ出場に大きく近づく試合やったからな」
「そのために、一番現実的な選択をした結果が、前半の布陣だったのではなかろうかと」
「選択とは難しいもんやな」
「確かに」
「なんにしても、バレンシアにめでたく、サラゴサに厳しい結果だったということで」
「今週はこの辺で」
「また来週」
「ご機嫌よう」

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