「さて」
「どうした」
「ついにリーガが終わった」
「終わったな」
「長かった一年もレアル・マドリーの優勝という形で幕を閉じた」
「いや、まだ国王杯の決勝がのこっとるけどな」
「そういえばそうやな」
「マドリーが優勝を決めた試合の先発は
こうだった」
「えらくファン・ニステルローイが左にいるな」
「最近はロビーニョが下がるとファン・ニステルローイが左に流れてボールを受けることが多いから、それを強調して書いてあるわけやな」
「試合開始からのマドリーは酷かった」
「まあ、酷いなんてもんじゃなかったな」
「なにしろ開始42秒でアランゴにポストを叩かれる出足やったからな」
「その後も、マジョルカにいいようにやられて、手も足も出ない状況だった」
「まず選手の緊張が原因やな」
「マジョルカの選手は楽に地面に立っているのに対し、マドリーの選手の動きはぎくしゃくぎくしゃくしていた」
「マジョルカは、心理学者マンサノさんの心理マネージメントが非常にうまくいっていた」
「これを見た観客は、罵声を飛ばすかと思ったらさにあらず」
「ほとんど身動き一つせず、じーと試合を注視していた」
「まあ、身動き一つしないといっても、激しい貧乏ゆすりをしていたわけだが」
「それにしても、サッカーで叫ばないスペイン人というのは奇妙なもんやな」
「確かに。まあ試合前の地下鉄の中から、ドキドキしながらもみんな緊張した顔をしてたからな」
「そして、15分にマジョルカが得点を決める」
「アランゴの見事なスルーパスからバレーラが決めた」
「これで罵声の嵐になるかと思いきや」
「さらに静けさを増し、貧乏ゆすりが激しくなっただけだった」
「観客も試合を盛り上げたいけど、マドリーのプレーが悪すぎてどうにもできない」
「そんな中、
30分にファン・ニステルローイが太腿を押さえて倒れ、イグアインと交代する」
「リードされている時の得点王の交代は痛い」
「さらには、優勝を争うバルセロナはナスティックに楽勝モード。マドリーにとっては踏んだり蹴ったりの状態で前半を終える」
「そして後半から
こうなる」
「困った時のグティ頼みというやつやな」
「まさに」
「ここ最近は、リードされる、やばい、グティ登場、逆転、というのが定番やからな」
「この試合もそれは現実になったけど、主役はイグアインとレジェスだった」
「レジェスが登場したのは
66分」
「彼は足を引きずりながらプレーしていたベッカムと代わった」
「そして、その2分後には、
図のような形でゴールが決まる」
「イケル・カシージャスのキックから左に流れたボールをロビーニョがキープ」
「前のエクトルを抜きにかかる」
「ところが抜けずに戻ってきて、中央にパス」
「イグアインがサイドに流れながら受ける」
「イグアインは、背中のバジェステーロスを引き付けると、右足のアウトサイドを使ってボールをゴールライン方向へはたく」
「それを自ら追いかけてセンタリング」
「中央からニアポスト側に走りこんで来たレジェスが右足のインサイドで決める」
「これで同点」
「観客総立ち」
「絶叫の嵐」
「ギャルは気絶」
「したかどうかは知らないけれども、ものすごい騒ぎになった」
「まだ同点やねんけどな」
「勝てば優勝だから、あと1点必要だった」
「それは81分にイグアインのコーナーキックからディアラが決めた」
「同点になった後は完全にマドリーモードだったから、まるで予定調和のように決まった」
「とどめは84分にレジェスのミドルシュート」
「3-1となり、優勝を確信した人々の絶叫がこだまする」
「絵に描いたような逆転勝利でマドリーが30回目のリーガ制覇を成し遂げた」
「あまりにもベタといえばベタな展開やな」
「この流れをマンガとかにしたらベタ過ぎて引くくらいいのベタさではある」
「しかし、これが現実なだけにたまらん、という話やな」
「それにしても、目の前に現金がぶら下がった時のマドリーの強さというのは異常やで」
「それだけは、チームが強かろうが弱かろうが変わらんな」
「今年は、カペッロの力も加わってそれがより強化されていたような気がするけどな」
「エスパニョール戦で勝ち切れずに優勝を逃したバルセロナとの一番の違いがそこやな」
「現実派の代表のカペッロと理想を追い過ぎてバランスを崩しがちなライカールトの差が出たともいえる」
「ただし、カペッロに去年のバルサのような見事なチームを作るのは無理やけどな」
「どっちのチームがよりダメかという戦いでは、模様碁より実利に辛い碁の方が勝ったということかね」
「また意味のわからんことを」
「しかし、本当に一年中悪いのか駄目なのかようわからん戦い方をしてよく勝てたもんやと思うで」
「それは世に言う決定力というやつやな」
「この
レジェスのシュートもめちゃくちゃ難しいのを決めてるしな」
「これは難しいな」
「ゴールから遠ざかる方向に動きつつ、体を開きながらのボレーシュートというのは難しくて、大体上に外れる」
「さらにこの場合、レジェスは効き足でない右足で蹴っている所がポイントが高い」
「それに対して、前半チャンスの多かったマジョルカは1点しか取れなかった」
「例えば
こういう場面やな」
「バレーラが抜け出してキーパーと1対1になる」
「次の写真で、右足のアウトでシュート」
「その次の写真を見ると入りそうに見える」
「ところが、ボールは無常にもそれて行く」
「この場面を詳しく見ると面白いことがわかる」
「ふむ」
「その次の写真の白い矢印は、1枚目のボールの位置と、2枚目のボールの位置をつないで出したベクトルなわけだ」
「ちゃんとゴールの中に入ってるな」
「さらに言えば、サッカーでよく狙いなさいと言われる、サイドネットに向かっている」
「ところが、最終的なボールは赤い軌道を通って外れるわけやな」
「その通り」
「まあ、ある意味当たり前ではある」
「バレーラは、前に走りつつ右足のアウトで蹴っているわけだから、足の振りの軌道の関係で、ボールは必ず外へそれる軌道を取る」
「これは一度試していただけるとよろしいかと」
「では、この場合どう蹴ればよかったかというと」
「一番下の写真のようになるわけやな」
「倒れこむキーパーの足と手を結ぶと黄色い線のようになる」
「この時、キーパーが地面に落ちるまでの間に、一番最後まで空いている隙間というのは脇の下になる」
「これは実際にどちらかの手を伸ばしながら、伸ばした手の方向に倒れてみられるとよくわかるかと」
「そこで公式、”倒れるキーパーの脇の下”というのが導かれる」
「この場面でそこに打ったとすると、図のようにきちんと枠内に納まる」
「この場面では、普段使われる、”シュートはサイドネットを狙え”よりも、”倒れるキーパーの脇の下”を使うべきだったという結論になる」
「この脇の下、という公式というか知恵は、チャンピオンズリーグの決勝で
インザーギが決めた決勝点の場面でも使われていた」
「この場合、左に横っ飛びするレイナの左脇の下を抜いているわけやな」
「もしバレーラが、この公式を正しく利用していたら、もしかするとマドリーは負けて、バルセロナが優勝していたかもしれない」
「そうすると、”倒れるキーパーの脇の下”がチャンピオンズリーグを決めて、リーガを決めたといえなくもないわけやな」
「決定力というのは、選手の才能の他に、こういうティップス、小さな知恵で改善できるところが多くあるはずなわけだ」
「そんなこんなで、今シーズンの結論は、ティップスは世界を救うといことで」
「えらい豪快やな」
「本日はこの辺で」
「また次回」
「ごきげんよう」

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