国王杯:サラゴサ対バルセロナ (2007.03.01)

「さて」

「バルセロナはサラゴサにめでたく勝利した」

「めでたいのか?」

「それはお前、来週のリバプール戦を考えればめでたいことやろ」

「まあな」

「スコアもホームで1点差で負けていたのをアウェーで逆転と、チャンピオンズリーグの予定シナリオとぴったり同じや」

「それにしても、サラゴサとしたら、まったくめでたくもない話やで」

「それはそうやけどな」

「この試合の両チームは、下のような形をしていた」



「これまた珍しい」

「バルサは3バックに見えるな」

「見えるどころかそのまんまやな」

「これは大失敗だった2006年10月18日のチェルシー戦以来やな」

「うむ」

「おまけに中盤もあの時と同じく菱形になっている」

「これはいわゆる絶滅危惧種の再来という奴やな」

「また意味のわからんことを」

「この1-3-4-3というのは、一時期オランダ方面でよく使われていたわけだ」

「そうやな」

「このシステムの特徴は、近い選手同士を線で結ぶと、自然と大量に三角形ができるところにある」

「下の感じか」



「そんな感じやな」

「この、見慣れないバルサは、試合開始直後は非常に上手く機能していた」

「それはサラゴサの特徴を前から潰したからで、次の図のようになる」



「後方でボールを持つ選手を、前に増やした人数をいかして潰すわけやな」

「おかげで、19分までのボールポゼッションは、バルサが71%、サラゴサが29%と圧倒した」

「この差は凄いな」

「一方の保持率が33%を切るというのは、1部リーグと3部リーグが対戦した時の差に近い」

「おまけに19分、26分と立て続けに得点して、バルサは正にウハウハだったわけだ」

「ただし、このシステムが絶滅危惧種に指定されたのはわけがあって、下のような攻撃に極めて弱い」



「サイドに飛ばしパスか」

「そう」

「明らかに赤い部分が開くから、人の多い中盤と中央をすっ飛ばしてそこを攻めればいいという話やな」

「理屈的には、前からのプレッシャーで正確なロングボールを蹴らせなければその攻撃は防げる」

「理論的にはそうやな」

「ところが、そんな空論はどこかで破綻して酷い目にあう」

「そんなこんなでこのシステムは稀にしか使われなくなった」

「まあそんなところやな」

「この試合でもその傾向はあらわれていて、前半の終わりから後半の開始にかけて、一方的なサラゴサペースになった」

「バルサがリードを守るために引いただけではないかね」

「それにしてはやられ過ぎで、特に後半に入ってからは酷いことになった」

「46分から、ビクトル・フェルナンデスはセラデスとアイマールを投入した」

「こんな配置やな」



「理屈通りに飛ばし攻めを行って、理屈通りにバルサを押し込んだ」

「サラゴサの選手も、開始直後にこの筋に気がついても良さそうなもんやな」

「それは無理やで」

「なんでや」

「チームには癖というかポリシーがあるから、サラゴサの丁寧につなぐというポリシーを相手が1-3-4-3菱形できたからはい捨てましょう、とはならない」

「そうかね」

「むしろここでは、バルサの対応の方が不思議で、相手がこうくるのは自明なのだから、後半開始からさっさと普段の4バックに戻して相手の狙いを封じる手も有力だった」

「まあそうやな」

「後半のバルサはサンドバックに近くなって、それは数字にもあらわれていた」

「ほう」

「前半の19分までのボール保持率は71%だった」

「それは前にも聞いたな」

「ところが、前半が終わった時点では60%だった」

「結構な下がり具合やな」

「そして、後半25分、つまり70分の時点では54%にまで落ちた」

「継続的下落傾向というやつやな」

「これを、0〜19分、19分〜45分、45分〜70分でのボール保持率を出すと、71%、52%、43%になる」

「グラフにするとこんな感じか」



「これを見ると立場の逆転がよくわかる」

「徐々にサラゴサが盛り返した感じやな」

「このまま行けばサラゴサが追いつけそうな雰囲気だったけど、67分にダレッサンドロがやらかしてしまう」

「メシに頭突きをかまして退場してしまった」

「頭突きというか、額でごあいさつしただけやけどな」

「メシが大げさに倒れてダレッサンドロはあえなく退場」

「その後、72分にピケがセットプレーからゴールを決めたけれど、それ以上は難しかった」

「ちなみに、ライカールトはそのゴールの直後に、サイドを埋めるために走り過ぎていたジュリをザンブロッタに代えると同時に、システムを変更している」



「いわゆるサイドの穴ふさぎやな」

「結局バルサが1-2で逃げ切り、トータル2-2、アウェーゴールの差で勝ち抜きを決めた」

「チャンピオンズリーグでもそうなるとええけどな」

「確かに」

「リバプール戦では3バックはないやろな」

「中盤を飛ばすのを苦にしないリバプールを相手にそれをやったら、戦術的な自殺もええところやから、前半はアスレチック戦の先発勝負をかけるときに中盤の底シャビ、その左前にジオ、左サイドバックにシウビーニョやと思うで」

「しかしあれだ」

「なんだ」

「最近のシャビは恐ろしいな」

「上手すぎやな」

「ボールの受け方からコントロール、反転、キープからパスのタイミングと角度と強さ、そして出したパスをフォローする動き」

「どれを取っても名人芸に近くなっている」

「3人に囲まれた時に、それぞれの間を脅しながらキープする技術なんかは絶品としかいいようがない」

「調子の出ないデコ、マルケスはベンチに置いて、彼を軸に中盤を組むのが今の調子からして妥当やな」

「そんなこんなで、来週のリバプール戦を楽しみにして」

「今週はこの辺で」

「また次回」

「ご機嫌よう」



c60 logo
トップページへ