スペイン代表は、ワールドカップ最後の試合となったフランス戦にマイナーチェンジを加えて試合にのぞんだ。
この試合の配置に対し、フランス戦は
このような形をしていた。
2つの図を見比べると、シャビがアルベルダに代わっている点とトーレスのポジションが異なる。
まず、サイドに配置されていたトーレスが中央に近い位置に戻っている。
トレースがサイドに置かれたのは、ポストプレーの下手な彼を中央に入れるとボールが動かないためだった。
この試合では再び中央に近い位置に戻っていが、そのプレーが改善されたわけではなかった。実際に、縦に入るボールをワンタッチで捌く際、そのパスがでたらめでポゼッションを失うシーンが多々見られた。
次に、アルベルダの先発は、地道ながら非常に興味深い変更といえる。
これまで、ルイス・アラゴネスは、守備を無視する形で中盤を構成し、ゲームの組み立てを重視することが多かった。
ドイツワールドカップではシャビ・アロンソ、シャビ、セスクの組み合わせがメインであり、予選の相手が弱い試合、例えば
サンマリノ戦では、4トップ気味の前線に加えて、中盤の底にデ・ラ・ペーニャ、シャビを配したこともあった。
これらは、守備と攻撃に分けて言えば、非常に攻撃に偏った人選であった。
しかし、今回は明らかに格下のリヒテンシュタインを相手にして、アルベルダを起用した。
よく知られているように、アルベルダはスペインで最も守備の強いボランチの1人であり、これは、チーム設計の変化という意味で注目される。
これは、おそらく前述のフランス戦に由来すると考えられる。
その試合では、守備の甘さからジダンに中盤を好き放題に荒らされ、一方的に押し込まれる場面が目立った。
この反省から、中盤での新しいバランスを模索したもと推察される。
しかし、この試合では、アルベルダを配した中盤は特に攻撃面で機能しなかった。
理由としては、アルベルダに加えて、センターバックのプジョルとパブロから前線へ有効なパスがほとんど出なかったためである。
リヒテンシュタインは、
図のように、上述の3人を空ける形で引いていた。
もし、
図のような形でセンターバックが警戒され、そこに守備者が出てくればスペースが生まれ、ボールが動く。
しかし、この日そのような場面は見られず、スペインは相手の引いた守りにてこずった。
1点目こそ、ラウールの長いスルーパスからビジャが抜け出し、折り返しをトーレスが決めたものだったが、2点目は相手の中盤でのミス、3点目はフリーキックからキーパーのミス、4点目はクロスにかぶったディフェンダーのミスから得点しており、4-0で勝ったとはいえ、攻撃面では見所の少ない試合となった。
この試合におけるスペインの問題を端的にあらわすと、
図のようになる。
1つは、後方からの組み立ての不足。もう1つは、中盤からスペースに出る動きの不足である。
後者については、ラウールは下がって組み立てることが多く、シャビ・アロンソはスピードの問題で流れについていけず、セスクは持久力に欠ける。
このため、サイドバックのオバーラップ以外でボールがスペースに出ることが極端に少なかった。
ルイス・アラゴネスは、
65分にセスクとビジャを下げてイニエスタとルイス・ガルシアを入れた。この時、システムも1-4-3-1-2から1-4-4-1-1に変更された。
この配置は、上記の問題を解決するのに向いており、シャビ・アロンソの位置を1つ下げることでより組み立てに参加させることができ、サイドに動けるルイス・ガルシアを置くことでスペースを突くことができる。
これにより、確かにボールの動きは改善された。
しかし、これまでの歴史を思い起こしてみると、もともとスペイン代表は、1-4-4-2系のシステムを用いて、2枚のボランチを守備が得意な選手と組み立てが得意な選手の組み合わせでプレーしていた。それを捨てたのは、相手が、例えば1-4-1-4-1でボランチにプレッシャーをかけて来た時に必ずといっていいほど組み立てが上手くいかないためだった。
リヒテンシュタイン戦の後半は、既にリードしていたため、1-4-4-1-1もそれなりに上手く行ったが、これを最初から用いると、元の木阿弥になる可能性が高い。
アラゴネスの苦悩は今後も続くと予想される。
現状を見ると、攻撃の組み立てに関してはセンターバックの能力が低いことが致命的な問題になっている。
プジョルとパブロは、所属チームでパスをさばくような役割を果たしていない。
バルセロナの最終ラインは、プジョルが守備に比重を置き、マルケスがボールをさばく。アトレチコの最終ラインでは、パブロが守備に比重を置き、ペレアがボールをさばく。
組み立てを重視する場合は、相手の守備が届きにくい後方に、それに優れた選手を置かなければ手詰まりになりやすい。
ならば、新しい人材が求められるのが自然であり、例えば実績に目をつぶってもアルベロアのような選手を起用する方法もある。
今後どのように推移していくか。強くなりそうでなりきれないスペイン代表の今後が注目される。
一方、リヒテンシュタインは、ロングボールを多用せず、丁寧に後方からパスをつなぐチームだった。
これは、チームの方針の他に、前線に速い選手がいないことも影響していた。
トップのトーマス・ベックはスピードに欠け、プジョルとパブロを振り切ることは一度もできなかった。
しかし、そのドリブルの切れ味は鋭く、23分20秒のプレーではプジョルがフェイントについていけず尻餅をついたほどだった。
テクニック的に優れた選手だったが、前を向いてボールを受ける回数が少なく、また、コンタクトを嫌うため、後ろを向いてボールを保持するのが得意ではなかった。このため、得意のドリブルを見せる回数は少なかった。
中盤の中心となっていたのは、13番のブチェルで、守備においてはポジショニング良く穴を埋め、タイミングのよい出足でスペインの攻撃を防いでいた。
攻撃においても、敵の間をすりぬけるドリブルが上手く、いくつかのいいプレーを見せた。
しかし、自信の持ち過ぎからか無理な体勢から自陣でボールをキープしようとして失い、45分のビジャの得点を呼び込んだ。
また、この試合における苦しみを良くあらしていたのは、21番のリッツバーガーと15番のマイエルフォッファーだった。
リッツバーガーはトラップがまったく上手く行かず、ボールコントロールに3タッチを必要とし、マイエルフォッファーは、セルヒオ・ラモス、ルイス・ガルシアとのマッチアップでまったく歯が立たなかった。
リヒテンシュタインには、〜だが〜である、というタイプの選手が多かった。
例えば、トーマス・ベックは、「ドリブルは抜群だがスピードとポストプレーがいまひとつ」であり、ブレチェルは、「良い技術をもっているが判断がいまひとつ」であり、センターバックの2人は「強くて高いが遅い」選手だった。
人口の少ない国の苦しい台所事情と言える。
その中でも、途中出場のフィッシャーのように小さいがスピードがあり、トーマス・ベックと組み合わせれば面白そうな選手も存在した。
苦しい中でどのように最適なチームをつくりあげるのか、リヒテンシュタインの今後にも興味が持たれる。

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