Sevilla vs Real Madrid
06.12.09.sabado
日時:2006年12月9日(土)
対戦:第14節 セビージャ対レアル・マドリー
結果:2−1
得点:0−1 13分 ベッカム
1−1 17分 カヌーテ
2−1 77分 チェバントン
審判:ヌニス・フェルナンデス(アストゥリアス)
退場:−
警告:ハビ・ナバーロ、ルイス・ファビアーノ(セビージャ)
サルガド、ベッカム(マドリー)

「さて」

「どうした」

「この試合は2位と3位の対決だったわけだが」

「マドリーは負けてもうたな」

「この結果、セビージャが2位に、マドリーが3位になった」

「うむ」

「ところでだな」

「なんだ」

「この試合について、カルピンが気になるコメントしていた」

「カルピンか」

「昔セルタとソシエダーの中盤で活躍していたロシア人だ」

「それは知っている」

「で、そのカルピンのコメントは、”熱い試合ではあったけど見所の少ない試合だった”というものだった」

「ふむ」

「それで、今回はその理由を考えてみたいわけだ」

「なるほど」

「まず、今シーズンのセビージャのプレーを見ていると、違和感に襲われる」

「そうか?」

「攻めているのを見ると、ゴール前に沢山人がいて点も入る。それなのに、チーム自体を見ると決して攻撃的にプレーしているという印象を受けない」

「そうかね」

「おまけに、ゴール前に4人も5人も人を置いている割にカウンターを受ける場面も少ない」

「それはそうやな」

「そこに違和感を感じるわけだ」

「カウンターを受けないのは不思議ではあるな」

「その原因を究明するためにセビージャのプレーを眺めていると、ボールが縦に動くばかりで、横に動かないことに気がつく」

「それは初耳やな」

「図であらわすと、こういう感じだ」

「青ばっかり赤がないという意味か」

「そう。それで、その印象を確認するためにセビージャのサイドチェンジの数を数えてみようという話になるわけだ」

「暇なやっちゃな」

「サイドチェンジといっても、一発の大きなパスで本当にサイドを変えるものから、中央からサイドに開くもの、短いパスをいくつかつないで逆サイドに運ぶもの、色々と種類がある」

「それはその通り」

「で、今回は、のように、とにかく中央の線をまたぐパスを数えてみたわけだ」

「長い短い関係なしか」

「関係ない。ただし、いま問題にしているのは、組み立て段階でのサイドチェンジなので、のようなパスは勘定しない」

「ふむ」

「センターバック同士のパス、フォワードに直接放り込むパス、敵エリア付近でのパスは除外される」

「多少恣意的な気もするが」

「組み立て段階が問題やからな。それで、数えるパスの一例はのようになる」

「サイドバックから中盤へのパスなどは数えないのか?」

「いや、数える方は一例だから、上の数えないもの以外は全部数える」

「そんなら最初からそう書けばええやんか」

「で、前半45分間にセビージャが行った中央の線をまたぐパスというのはのようになる」

「3本しかないが」

「3本しかないんや」

「ほんまか?」

「ほんまやねん。ちなみに、マドリーの方を数えるとのようになる」

「これも5本しかないが」

「ただし、これ30分から35分に行われたパスしか数えていない」

「5分だけか」

「そう」

「まぎらわしいな」

「しかし、これを見ると、セビージャのデータの異常さがよくわかる」

「いくらなんでも45分で3本はおかしいな」

「その理由は、セビージャがセットアップ・オフェンスをしていることにある」

「横文字か」

「その理想的配置を図にすると、こうなる」

「ボールはどこにあるんだ?」

「アウベス、ポウルセン、ハビ・ナバーロの誰が持っていてもいい」

「ふむ」

「この状態から、まずの形を狙う」

「カヌーテへのロングボールか」

「そう」

「放り込みは確かに目立つな」

「ただ、普通の放り込みと違うのは、前線に4人を貼り付け、レナトのフォローを入れた上で放りこんでいる」

「数的優位を作ってほり込むのはよくあるな」

「それで、セビージャの次の狙いは、のようになる」

「裏に抜けるナバスか」

「そう。これもよく見る形だ」

「確かにな」

「そして、さらなる狙いはこうなる」

「ナバスの1対1か」

「1対1のパターンはもう1つあって、のようになる」

「アウベスがドリブルしているだけやんか」

「まあそうだが、なぜこれらの攻撃が有効かというと、にその理由がある」

「なんだこれは」

「セビージャのセットアップに対して、1-4-4-X系のシステムがほとんどを占めるリーガの各チームは図のように対応する」

「まあ普通やな」

「セビージャは瞬間的に4トップになるために、4バックのそれぞれがマークを抱える。このため、ディフェンスの間隔が開きやすい」

「そうなるとセンターバックのサイドバックへのカバーも遅れるわな」

「そう。さらには、ボランチの1人はサイドへのカバーへ行かなければならず、もう1人はレナトを見ざるをえない」

「ふむ」

「そうなると、カヌーテの左右と後ろにスペースができやすい」

「この水色は空きやすいスペースか」

「そう。さらに、センターバックのカバーがサイドバックに届かないということは、へスース・ナバスのドリブル突破がより生きるという話になる」

「左様か」

「上のセビージャの攻撃パターンは、すべて水色のスペースを利用して行われている」

「極めて合理的やな」

「ただし、セビージャには禁止事項があって、のようなパスを出してはいけない」

「いわゆるサイドチェンジか」

「そう。もしそれをカットされると、前線に人数を増やした関係で赤いスペースがすっ通しになって、守備的に破綻をきたす」

「確かに、この形でそのスペースを突かれたら終わるな」

「よって、セビージャは、右なら右で、サイドを変えないで攻めることにより、守備の安定を得ている」

「サイドを変えなければ、守備の薄い場所にボールが行く心配がないし、いつも人がそばにいる場所を攻めていれば後ろにカバーがあるから安心なわけか」

「その通り。だから、普通のチームによく見られる”サイドを縦に突いたボールを一度戻して逆のサイドバックに展開、もう一度攻める”という行動がまったくと言っていいほどない。」

の下側のパスか」

「そのパスを出すと、全体が逆スイングしなければいけなくなる。その時にボールを失うとピンチになる。よって、その行動は禁止されている」

「窮屈な話やな」

「セビージャはサイドを縦に、保険をかけて攻めることで守備を安定させているわけだ」

「しかし、不思議な話やな」

「なにがや」

「普通、攻めるためにはサイドチェンジが有効である、とどの教科書にも書いてあると思うんやな」

「そうやな」

「セビージャは自らそれを封印して攻めるわけか」

「いや、セビージャの場合は最初に守備が来ていて、”サイドチェンジのボールを奪われると、どうしても守備のバランスが崩れた状態になる。それならば、いっそのことサイドチェンジを行わなければいい”という理論なわけだ」

「ある意味コロンブスの卵やな」

「セビージャの各ブロックの役割をまとめるとのようになる」

「ふむ」

「以上の理由によって、セビージャがボールを持つとパスが縦横無尽につながる、というような話にはならない。さらには、限定された攻撃を行うことにより、限定された出来事しか起きない。そうなると決して面白い試合にはならず、冒頭のカルピンの発言、”熱い試合ではあったけど見所の少ない試合”につながるわけだ」

「縦横無尽ではなく縦縦限定か」

「そういう話だ」

「それでも強いわけやな」

「セビージャの試合というのは流れが決まっていて、相手のディフェンスがボールを持ったときは綺麗に1-4-4-2をつくってフォワードがボールを追いまわす。この時、後ろの選手は、間を抜けるパスを狙う」

「このか」

「不幸にして自陣に攻め込まれた時は、同じサイドのフォワードが下がって中盤を5人に増やし、そうでないフォワードもセンターサークル後方まで下がる」

こうか」

「人数をかけて取り返した後は、前に当てたボールを戻すか、バックスの間でボールを動かす。その間に前の選手は前に行く」

こうやな」

「もしプレッシャーをかけられたら、安全な位置にとりあえず放り込む。もし無事に時間を稼げたら、のようになってセットアップ完了や」

「めでたしめでたしやな」

「そして縦に運んだボールが奪われたら、近くにいる人間が時間を稼いで最初の図に戻る。後はこのサイクルを延々と繰り返せばいい。レナトのセットアップが間に合わないような状態でものように取り敢えずラインの裏に蹴ればカウンターを喰らう心配はない。左サイドではのようにセットアップすればいいし、この場合はプエルタを左サイドバックに置いた方が攻めに強い」

「一気にしゃべったな」

前々回の小話(別ページ)に”セビージャはサイドの選手の個人技がスペクタクルであって、チーム設計がスペクタクルなわけじゃない”という話があるのは、こういう背景がある」

「そうか」

「まあ、こんな次第なわけだ」

「今回はようしゃべったな」

「相方が相槌をうつだけやと、1人でしゃべらなしゃあないわな」

「相槌もむずかしいもんやで」

「どこがや」

「特に、今回なんかは、相槌の限界に挑戦してるようなもんやで」

「限界ってなんや」

「バリエーションの限界や」

「なんじゃそりゃ」

「同じ言葉ばかりやと飽きられるからな。こっちはこっちで色々苦労してんねや」

「さよか」

「左様や」

「どうでもいいが、最後にセビージャを相手にするチームの対応策についてしゃべっていいか?」

「どうぞどうぞ」

「システムとしては、1-4-1-4-1が一番楽で、セビージャが攻めたがるスペースを全部潰して、その上で空いている逆サイドに選手を置くことができる」

「一方のサイドを攻めさせて、逆からカウンターをしかけるわけか」

「その通り」

「これはあれやな」

「なんや」

「去年、一昨年のチェルシーやな」

「確かにそうやな」

「しかし、リーガでこのシステムのチームはないやろ」

「アトレチコはやめたし、たまにレバンテが使うぐらいしか知らないが」

「そうなると、期待薄か」

「ロペス・カロに期待やな」

「まあ、今週は長くなりましたが、この辺りで」

「もう終わりか」

「十分しゃべったやろ」

「そうやけどな」

「ではまた来週」

「ごきげんよう」



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