「さて」
「どうした」
「今週は戦術的に興味深い試合が多かったから、色々と見ていこうと思うわけだが」
「うむ」
「まずは、セビージャ対アトレチコで行こうかと」
「先発は
こうやな」
「これは珍しい」
「確かに珍しい」
「アトレチコは頑固に1-4-4-2か1-4-1-4-1で先発を組んでいたのに、1-4-3-3的な布陣になっている」
「しかし、この配置は、セビージャに対して不安があって、図にすると
こうなる」
「セビージャは
サイドを縦に攻めてくる(別ページ)。それなのに、この布陣ではもろにそこが弱くなる」
「これでは守備がもたないのではないか、という不安があるわけやな」
「実際に前半のアトレチコはボロボロにそこをやられてしまった」
「こうなるとアギーレの意図がよくわからない」
「サイドの強いセビージャに対して、スパルタ的なテストをしたかったのかもしれんな」
「それはマゾ過ぎるやろ」
「ちなみに、セビージャのマルティが退場した後は
こうなった」
「普通の1-4-4-2的な配置に戻っている」
「これは、少ない相手をサイドから広く攻めようという話やな」
「おそらく」
「ここでは、
こうするのもありだったと思うが」
「ゼ・カストロを一番後ろに入れるわけか」
「そう。そしてフラドを中央に入れて後ろからの組み立てを重視するのも有力だったと思うんやな」
「ありかもしれん」
「1人少ないセビージャのプレッシャーが一番弱くなるのはセンターバックと引いたボランチに対してだから、そこからのパスを重視するわけだ」
「しかしそうするとマニチェが右に来る」
「それは苦しいとこではある」
「うむ」
「そして次に、
レアル・マドリー対ベティスなわけだ」
「この試合では、前半ガゴが綺麗に消されていた」
「カピにマークされて完全に消されていた」
「それを見たカペッロは、後半
このように配置を変えた」
「やっぱりグティやな」
「やっぱりグティやねん」
「グティがボランチ、守備が不安、人を買ってきて任せる、上手くいかない、グティ復帰。マドリーのお家芸やな」
「グラベセンにパブロ・ガルシア、エメルソンにディアラーにガゴ。誰が来てもやっぱりグティ」
「グティにマドリーの苦しみが象徴されるのではないかと」
「前半はトップ下でいい組み立てをしていたグティを、わざわざ下げなければいけないのは苦しいわな」
「うむ」
「苦しいといえば、
バルサも苦しんでいた」
「相手がバレンシアやから苦しんで当たり前やけどな」
「それはそうやねんけどな。今シーズンは自分で自分の首を絞めている気がするわけよ」
「そう言えなくもないな」
「例えば、この試合では、イニエスタが右の前にいる」
「最近のライカールト的流行みたいやな」
「しかしだな」
「なんだ」
「中に入りたがるイニエスタを右に置くと、サイドライン付近にスペースができる」
「そうやな」
「そうなると、オレゲルがそこに上がらざるを得なくなる」
「それもその通り」
「そうすると、バルサで絶対に空けてはいけない右の裏、つまり赤い部分が空いてしまう」
「確かに空く」
「これをやるとディフェンスはザルもいいところで、バレンシアの1点目は
このように決まった」
「デコがロナウジーニョにスルーしたボールをカットされてカウンター。アングロがオレゲルの裏に送ったボールをビジャが受けてドリブル。上がってきたアングロに合わせてゴール」
「何度このスペースをやられるのかと」
「2年前に散々やられたわな」
「サイドを押さえるためにオレゲルを置いているのに、その前にオレゲルが行かざるを得ないスペースをあけるとはなにごとかと」
「なんか今日は愚痴っぽいな」
「オレゲルの前をジュリが邪魔をして上がりにくいくらいがちょうどいいバランスだったのではないかと」
「だから愚痴っぽいって」
「そらあんた愚痴も出るがな。今シーズンの初めからライカールトは戦術的におかしなことしかやらない。去年は言われて納得する戦術が多かっただけに、その差がよくわからんわけよ」
「それは、ヘンク・テン・カテがいなくなったからだろう」
「ここ半年の変化を見てるとそうかもしれんな」
「うむ」
「選手のモチベーションや調子云々の前に、戦術でチームを壊しているのを見るのは忍びないものがある」
「そういう時は、ゴールを堪能するに限るで」
「ゴールか」
「例えば、さっきのアングロのゴールも、バレンシアの側から見れば実に美しかった」
「確かに」
「
この図で、ゴール前をより詳しく拡大すると、
こうなるわけだが」
「ふむ」
「まずサイドでビジャが2人を引き付けている。中央ではマイナスを狙うモリエンテスがプジョルを引き付けている。そしてアングロは最初、裏のスペースを狙ってザンブロッタをファーに引き付けた」
「いい動きやな」
「結果として赤い四角の部分に綺麗にスペースができて、ビジャはパスでそこを突き、アングロは斜めに切れ込んでゴールを決めた」
「確かに綺麗な連携ではある」
「さらにこの場面を鑑賞するとだな」
「なんだ」
「ビジャはラストパスを出す前に、青い矢印のように、エジミウソンの股を抜くパスでフェイントをかけていて、実際には閉じようとする足の外側を通した」
「股下脅しというやつか」
「この場面では、ビジャのドリブルに対してずるずる下がるだけでなにもできず、さらには最後の読み合いにも負けたエジミウソンの完敗だったわけだ」
「ビジャが上手いという話や」
「さらに美しいゴールはアスレチック対ヘタッフェ戦で生まれていて、アドゥリツが
このような形から決めた」
「スルーパスからか」
「ジェステがボールを回収したところから始まって、縦に抜けるアドゥリツにパス。アドゥリツはディフェンスに向かってドリブルし、スペースにボールを出すことでかわすと出てくるキーパーの肩越しにループシュートを決めた」
「よくある形といえばよくある形やな」
「まず、このゴールの鍵は
ディフェンダーに向かってドリブルをしたことなわけだ。ゴールに対してドリブルをすると、赤い線の方向に進むことになるけど、アドゥリツはそれよりも左側を相手に向かってドリブルした」
「ふむ」
「こうすることによって、相手ディフェンスの左右にスペースを作り出すことができて、この場合、アドゥリツから見て右側のスペースが重要になる。彼はそこに自分自身のためのパスを送り込んだ」
「いわゆるアウトパッセというやつやな」
「
このパスが絶品で、1つのパスで3つの得がある」
「どういうことや」
「まず@で、これにより目の前のディフェンダーを振り切ることができる」
「普通の切り返しと同じやな」
「次にAで、こちらに切り返すことで追ってくるディフェンダーの前に体を置くことができる」
「いわゆるスクリーンというやつやな」
「相手は下手すると退場だからファールもできない。そして最後はBで、キーパーが届かない場所にボールを置くことで、出てくる相手に対してはループシュート、待つ相手に対しては余裕を持ってシュートを打つことができる」
「ふむ」
「つまり、たった1つの自分へのパスによって相手3人を無効化しているわけだ」
「偶然ではないかね」
「アドゥリツはゴール前での動きが抜群に上手くて、例えば、
去年のセルタ戦でも素晴らしい動きを見せていた」
「アドゥリツファンか」
「今年は右サイドで使われることが多かったけど、彼の才能をいかすためにも、是非今のまま使っていただきたいと」
「ちなみに、監督が変わったアスレチックは、
このようなシステムになっていた」
「これは心躍る布陣やな」
「ここ最近は、ヘタッフェ、ベティスに加えて、アスレチックが面白くなる気配だ」
「そうか」
「その辺りもご注目いただければいうところで」
「今週はこの辺りで」
「また来週」
「ご機嫌よう」

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