「さて」
「なんだ」
「先週の試合を見ると、スペイン戦線異常なしという感じやな」
「おおむね異常はないな」
「レアル・マドリーはオリンピアコス戦に続いて不始末な試合をしながら個人の一発芸で点を取って勝ち」
「見慣れた風景やな」
「バルセロナはロナウジーニョを使ってやっぱりうまくいかず、オフサイド気味の得点と誤審によるPKで勝ち」
「相手に攻めさせないという点ではよかったけどな」
「後はフアンデ・ラモスがいなくなったセビージャも異常なしだった」
「これまでセビージャが用いてきたシステムとディフェンスの方法、そして、前線をセットアップしてからロングボールとサイドから攻める攻撃も変化無しと」
「先週も、じつに見慣れた風景のリーガであったわけだな」
「そんな中、セビージャに負けたバレンシアのキケ・サンチェス・フローレスが解任された」
「遂にこの日が来てしまったわけやな」
「これは結構な驚きなんとちゃうかね?」
「勝っても勝ってもファンからブーイングをされていたことを考えると、予想できた事態ではあるけどな」
「キケは真面目やからな」
「寒くもなんともないのに験かつぎのマフラーをきちんと巻いてベンチに入るあたりも真面目やしな」
「その謹直さがチームにもよく反映されていたんやけどな」
「そんな彼が、見ていてつまらんサッカーをするという理由で追い出される結果になった」
「キケにしてみたら人格否定に近い話やからしんどいやろな」
「そんな中、バレンシアはカペッロに接触しているという噂もある」
「真面目なサッカーがつまらんというファンに四面四角なカペッロを与えても絶対にうまくいかんと思うが」
「不思議な話や」
「カペッロはレアル・マドリーで二回監督をして二回リーグ優勝という成績を残しながら、二回とも一年でチームを去っている」
「ファンに好かれざること鬼のごとしやからな」
「まあ、マドリーは、監督がカペッロからシュスターに代わった今期も毎度毎度無茶苦茶な試合をしているんやけどな」
「デポル戦の先発は
こうやな」
「相変わらず中盤がスカスカで、前半2分にあっさりデポルに先制される」
「マドリー名物、プロレスサッカーの始まりやな」
「プロレスサッカーとはなにかね」
「まずわざピンチになっておいて、それをおもむろに逆転するサッカーのことや」
「それやったらウルトラマンサッカーでもええやないか」
「まあどっちでもええやろ」
「そうやな」
「この試合も筋書き通りに話は運んで、まず7分にPKから追いつく」
「そして1-1の同点のまま試合は進み、場内のイライラが頂点に達する78分にラウールの勝ち越し点、終了間際の89分にロビーニョの駄目押しゴールが決まる」
「計画通りという奴やな」
「チームがボロボロでまともにプレーができず、相手が疲れた頃に個人の一発芸が出て試合を決めるというお決まりのパターンやな」
「そして、この日のびっくりどっきり一発芸はグティが見せた」
「2点目、3点目につながったスルーパスは綺麗やったな」
「非常にグティらしかった」
「まず最初は
こうやな」
「左からのパスを受けて中央にトラップ」
「次に、左サイドから中央へのパスを見せつつ、縦へのスルーパス」
「ディフェンスラインで跳ねたボールは左サイドへころがる」
「そこに走りこんだファン・ニステルローイは、シュートフェイクから中央にパス」
「待ち受けていたラウールが左足で押し込む」
「まあそういう次第なわけだ」
「そして、3点目もほとんど同じようなパスから決まる」
「
こうやな」
「まずバックパスを受けて中央へトラップ」
「次に、左サイドから中央へのパスを見せつつ、縦へのスルーパス」
「ボールは縦に動くロビーニョにどんぴしゃり」
「後は、シュートフェイクから切り返してキーパーを抜き、中央に決める」
「グティのトラップからパスまでの流れがほぼ完全に一致している」
「ここで大切なのは、トラップした方向とパスの出る方向のずれやな」
「
この絵で上から2番目の写真を見ると、ほぼ90度になっている」
「
こっちの写真でもそうやな」
「90度が、なぜラストパスやスルーパスに有効かというと、視角の問題がある」
「人間が視線を向けている所から90度方向というのは、視角から外れて通常見ることができない」
「このため、ディフェンスはその方向にパスをケアしないことが多い」
「そこが守備の死角になるため、もしパスを出せれば決定的な形を作ることができる」
「それは、3点目のパスにおけるグティの視線の動きを見るとよくわかる」
「
こうか」
「トラップをして、目線を上げ、左サイドを見た後に90度方向にパスを出しているのがよくわかる」
「ちなみに、この時目の前には2人のディフェンダーがいる」
「10番がベルドゥで5番がコロチーニやな」
「この2人は完全に騙されていて、それは一番下の絵を見るとよくわかる」
「明らかに裏をかかれてるな」
「おまけに2人の体勢は、足の角度から腕の位置までほとんど同じだ」
「それは偶然やな」
「さらに言うと、ここでもう一つ大切なのは、最後のパスが、グティが最初トラップした時にコロチーニが居た場所を通っていることなんやな」
「他のディフェンスは、最初の位置関係からして、そのパスコースは切られているものだと思うわけやな」
「ところが、コロチーニはグティのトラップからパスフェイクにつられて移動しているから通るわけや」
「マジックやな」
「一つの場所に視線を集中させて別の場所で仕事をするという意味では正にマジックやな」
「確かに」
「そして、この90度にパスを出すという技術は、様々な形で応用できる」
「
こんな感じか」
「下の図が今回のグティのパスやな」
「うむ」
「そして、右上の図は、サイドから中央にドリブルをしてラインの裏に出すというパターンやな」
「これは、アトレチコのルイス・ガルシアが上手くて、ホアキンなんかも良く使う」
「左上は、目の前のディフェンダーに向かって行って、そのドリブルした方向から90度に近い位置にパスを出す技やな」
「これは、ビジャレアルのマティアス・フェルナンデスが良く使う」
「彼はこの技が上手いな」
「マティ・ゴールというあだ名を持っているが、マティ・アシストと呼びたいくらいにアシストが上手い」
「さらに90度の例では、デ・ラ・ペーニャもこれを使う」
「例えば
こうやな」
「ここでは、ドリブルの方向、切り返しの方向、パスの方向に注目やな」
「つまり、ディフェンスラインの前でボールを持った時は、プレー方向の90度を意識すればグティやらマティやらデ・ラ・ペーニャのようなパスを出せるのではなかろうかと」
「話はそんなに簡単じゃないけどな」
「まあそのゾーンで常に90度方向を意識してプレーしているだけでディフェンスラインを崩すアイディアのバリエーションが大いに増えるのは確かや」
「まあそうやな」
「そうやろ」
「しかし、それをやるなら、ボールを受ける前にすでにそのアイディアを持っていないといけない」
「それはあるな」
「グティやマティアス・フェルナンデスは90度方向のスペースを使うことを前提にトラップからの一連の動作を行っていて、それが一番大切といえば一番大切になる」
「最後のプレーから逆算して動きを組み立てろということかね」
「そういう話やな」
「なにはともあれ、上の90度理論というのは、以前の
チェルシー対バルセロナ戦(別ページ)における
チェルシーパスといった形でも利用可能なので、様々なバリエーションを考えてみられるのもよろしいかというところで」
「今週はこの辺で」
「また次回」
「ごきげんよう」

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