Real Madrid vs Valencia
08.03.23.domingo
日時:2008年3月23日(日)
対戦:スペインリーグ29節 レアル・マドリー対バレンシア
結果:2−3
得点:33分 0−1 ビジャ
34分 1−1 ラウール
55分 2−1 ラウール
66分 2−2 ビジャ
88分 2−3 アリスメンディ
審判:クロス・ゴメス(アラゴン)
警告:ペペ、カンナバーロ、マルセロ(マドリー)
マルチェナ(デポル)

「さて」

「なんや」

「今回はプロの技術を盗む、というタイトルでお送りするわけだが」

「そうか」

「題材としては、レアル・マドリー対バレンシアを使おうと思う」

「今さら一週間前の試合か」

「まあええやろ」

「ええけどな」

「この試合は、集団やチームのできという点から見ると、あまり良い試合ではなかった」

「バレンシアもマドリーも今ひとつやったな」

「今ひとつというかふたつというか」

「ひとつとかふたつとかはどうでもええねん」

「その一方で、個人技術という点では非常に興味深かった」

「グティ、ラウール、ビジャなんかがそうやな」

「そこで、そんなプレーを鑑賞するとともに、どうにか技を盗めんものかというのが趣旨なわけだ」

「あいわかった」

「まず、この試合最初の得点からいくとして、これを見ていただきたい」

「ビジャやな」

「シルバのスルーパスからキーパーと1対1になった場面をあらわしている」

「進行方向は左やな」

「この技術は、進行方向と踏み込み足に対してボールを飛ばす角度を変えるというものである」

「そうであるか」

「上から3枚目の写真を見ると、ビジャは進行方向に対して平行に軸足を踏み込み、体の正面も同じ方向を向いている」

「ところがどっこい」

「次の写真で軸足を地面につけてから奇妙なことがおこる」

「体を右に捻るわけやな」

「右に捻りながら、蹴り足のかかとを内から外に押し出す」

「これにより、ボールは右側に飛んでいく」

「それが倒れこむキーパーの足の上をちょうど越える」

「非常にうまい」

「シュートの方向をずらす技術もうまいが、倒れるキーパーの体勢をイメージし、その空いている場所を抜くあたりもうまい」

「しかし無茶なフェイントやな」

「体の動きとしてはかなり無理をしていて、その無理が下から3番目の写真にあらわれている」

「足首が変な形に捻じれておるな」

「体の無理な捻りをそこで緩和しているわけやな」

「これを身長190くらいで足首が固い選手がまねしたら確実に怪我するな」

「靭帯をやるかもわからんな」

「これが肉体的才能というものかね」

「誰にでもできるわけではない、という意味ではそうやろな」

「そんなら技を盗むにも盗めへんということやな」

「そうかもしれんが、体の動きでシュートコースをずらす、というアイディアは非常に重要で盗む必要がある」

「さよか」

「例えば、ラウールのゴールでも同じ技が使われている」

これか」

「これは実にうまいゴールでまさにラウールらしい」

「写真が長すぎやな」

「それだけ詳しく見る価値があるということや」

「ひとことで言うと、左足のインステップで左に蹴るフェイクからインサイドで右に蹴るシュートやな」

「おまけにボレーや」

「これは非常に難しい」

「特に、この動きから強く蹴るのは非常に難しい」

「ラウールのシュートもぼてぼてやったしな」

「しかし入った」

「その秘密は一番下の写真にある」

「左に蹴るフェイントに引っかかったDFはシュートブロックのために足を伸ばし、ボールはその下を通過している」

「これが起きると、キーパーは大体読みの逆を突かれる」

「キーパーは、ラウールの左から詰めているDFがそのコースを切ると期待する。ところが、ボールはそこを抜けるものだから反応が遅れる」

「一部でクロアチアと呼ばれる手筋やな」

「なんでクロアチアなんや」

「昔スーケルやボバンが健在だったクロアチア代表の選手がみんなこの技がうまかったからやな」

「初耳やわ」

「こういう、心理や視野の死角を突いたシュートはラウールの最も得意とするところやな」

「プレーの最初、ボールを後ろに浮かせて止めたのもラウールらしいな」

「それはミューラーという技やな」

「もうええって」

「つまり、このゴールは、ミューラーからクロアチアを狙ってインステップからインサイドにシュート面を変更したボレーで決めたということになるわけやな」

「なんの呪文や」

「まあこのインステップからインサイドというフェイク自体は、沢山練習すればできるな」

「相当難しいけどな」

「これを実戦でできるところがプロやな」

「プロというかラウールやな」

「上の二つ、ビジャとラウールのフェイントは、非常に難易度が高い」

「もうちょっと簡単なものはないかというと」

「アリスメンディのシュートがある」

これか」

「これはいわゆるステップサイドの典型で、右足インステップで左に蹴るフェイクからインサイドで右に蹴る」

「この場合、最初のフェイクはインフロント気味やと思うけどな」

「メカニズムは大してかわらん」

「これはちょっと練習すれば誰でもできる」

「昔11歳のチームで、練習に早くついた子がいたので遊びながらこれを教えたら、3週間くらいでできるようになった」

「簡単かつ有効で、素晴らしい技術やな」

「それに、シュートだけでなく、組み立てや崩しでも実に役に立つ」

この感じやな」

「ガゴか」

「ガゴやな」

「一番上の写真で、ピンクの矢印に出すフェイクから、白い矢印に出ている」

「フェイクの種類としては、アリスメンディとほぼ同じやな」

「フェイクがかかっている証拠に、一番上で黄色い矢印がついた選手は、二番目の写真で左に移動している」

「そして、その選手がもともといた場所をボールが通るわけやな」

「グティの得意技でもあるな」

「キック面の変更については以上の感じか」

「インサイドからインステップへのフェイクがあれば完璧やけど、この試合ではこんな感じかね」

「次は中盤での技を見たいわけだが」

これから行くか」

「一番上はスクリーンの図やな」

「相手とボールの間に体を入れ、伸ばしてくる足に対して足をぶつけてボールを守る、典型的なスクリーンやな」

「次に、左肩を開いて、斜め横から寄せてくる相手に体の正面を見せる」

「これをこれ、チラ見せという」

「ちらりと正面を見せて、ほんの一瞬動きを止める」

「この動きを止めるのが大切やな」

「これにより、寄せてくるDFのみならず、周囲のDFすべての視線を引き寄せることができる」

「そこで死角が生まれて、味方がフリーになる」

「おまけに、寄せてくるDFへのフェイクにもなる」

「この場合、DFを右に釣って、自分は左に抜ける」

「スクリーン、チラ見せ、待ちと実に動きによどみがない」

「相手と接触しながら、どこにも過度の力が入っていないからこれができるんやな」

「スクリーンは、グティにラウール、チラ見せは日本代表なら遠藤、待ちはピルロやグティがうまい」

「同じような技は、これにも見られる」

「まず、ボールを受ける」

「次に、トラップの後、左足を引き、DFの間を抜くそぶりをする」

「そして、実は嘘でしたと逆方向に動く」

「前からDFが詰めてくるので、その方向へのパスフェイクを見せる」

「それでDFの出足を止めた後、一瞬待ってから90度方向にパスを出す」

「相手との距離の取り方が絶妙であるな」

「実にグティらしい」

「上の二つを総合すると、相手陣でボールを落ち着けるには、DFとの距離を適正に保たなければならないことがわかる」

「そのための手段として、DFの間を脅す、体の正面を相手に向けて一瞬待つ、相手の横を抜くパスフェイクから待つ、それでも寄せられたら適度に力を抜いた状態でスクリーンを行う、というものがあるということやな」

「他にも手段はないもんかね」

「後は目線でフェイクくらいちゃうかね」

「要調査であるな」

「なんにしても相手を正面に置いて待てるというのは重要なことやな」

「先にバタバタ動く選手は大体下手やしな」

「DFの方も先に動き過ぎると守備にならへんしな」

「そういえばこういうシーンがあったな」

「上にも出てきた、アリスメンディがシュートを決めた場面やな」

「カシージャスは明らかに早く倒れすぎで、普段の彼なら少なくとも3番目の写真までは動き出しを待つ」

「これは、ローマ戦で見た悪い前兆のあらわれやな」

「この場合、守備を信頼するならば、センタリングはある程度任せていいんだけど、無理なコースまで切ろうとして早く飛んでしまったんやな」

「自分で全部しょいこみすぎやな」

「真面目やからな」

「ミスといえば、その前の段階でのマルセロのミスもひどい」

これか」

「一番上の写真で、左側のバレンシアディフェンダーがボールを持ち、マルセロは画面の外にいる」

「ちょうどセンターライン上にいる選手がゴールを決めるアリスメンディやな」

「そこから下にいくと、なぜかマルセロはロングボールで背後を取られる」

「最初8m以上後ろにいた選手が不思議な話やな」

「マルセロの守備が下手というのは、具体的にこういう部分で、ポジショニングから相手の動きの読みにいたるまで、相当めちゃくちゃでなければこうはならない」

「これがあるから、抜群の攻撃能力がありながら、シュスターも使うのをためらうわけやな」

「ミスはこの辺にして、最後にスーパープレーを見るか」

「ええで」

これがこの試合一番のプレーやな」

「ラウールか」

「そうやな」

「普通に見るとなんでもないヘディングが決まったように見える」

「ところがそうではなくて、写真を下にいくと、ラウールは先にDFに当ってそれからヘディングに行っている」

「この写真ではいまいちわからんな」

「まあとりあえず、一番下の写真でラウールがほとんどジャンプしていない、というのが鍵なわけや」

「まあ、ゴール前で飛ばずにヘディングができるというのは普通ないな」

「ラウールの動きというのは、のようになっていて、先にDFに当って、それからヘディングをしている」

「ほうほう」

「この状況で、普通の選手ならばこう動く」

「DFの前に入って、空中で競り合いに行くわけやな」

「ラウールがジャンプをせずにヘディングをしたということは、飛べばその前で叩けるはずで、普通はそれを考えるし、それしか考えない」

「ところがラウールはこうと」

「簡単にいえば、DFを飛ばせなければ自分も飛ばずにすむじゃないか、ということやけど、言うは易し行うは難しで非常に難しい」

「ラウールの動きのアップはこうやな」

「一番上が、サイドからロビーニョがセンタリングを蹴った直後で、ラウールは右に動き出している」

「で、ボールが空中にある間にどこに行くかといえば」

「3番目の写真に見られるように、一目散に敵に駆け寄っていく」

「相手はエルゲラやな」

「4番目の写真でそれをぐいぐいと押しのけて、5番目の写真ではその反動を利用して離れ始める」

「そして、相手と距離をとってヘディングにいくわけだが」

「最後の写真を見ると、ちょうど頭のところにボールが来ているのがわかる」

「まあ、これは恐ろしいプレーやな」

「これをやるには、まず、ロビーニョがボールを蹴った直後に、落下点を完全に把握しなければならない」

「次に、ディフェンスを押して離れるタイミングが重要で、それを間違えるとボールに届かない」

「さらにいえば、ディフェンスを押しのけてヘディングをするというアイディアを、センタリングの前に持っていないと、とてもじゃないが実行できない」

「このプレーのイメージを持っているだけでも凄いという話やな」

「それをボールの落下地点から逆算して、瞬時に実行できる能力というのはさすがにラウールとしかいいようがない」

「こういうせこい技に関しては最強やしな」

「せこいいうなや」

「じゃあ狡猾やったらええか」

「それもどうかね」

「ピカロはどうや」

「それやったらいっそ狡猾の方がええな」

「まあなんにしても、ラウールは人の持たないイメージを常に持った選手やということやな」

「そうなるな」

「しかしなんやな」

「なんや」

「プロの技術を盗むというお題だったわりに盗めそうにもない技術が多いのは気のせいか」

「そこはほれ、これを参考にエッセンス的なものを抜き出して自分で使える技を開発するのが醍醐味というかなんというか」

「それはまた、はるかなる道のりやな」

「それがええんや」

「そんなこんなで」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「ご機嫌よう」


おまけ:

バレンシアの動き

キック面の変更
キック面変更、インサイド縦→インサイド右
キック面変更、インフロント左、インサイド右
キック面変更、インフロント縦、インサイド右、ダイレクトで裏へ弾き
残しトラップ、キック面変更、インステップ左、インサイド右、死角の利用、シュートブロックの足の下
図4の遠景、クロスカウンター、ジオメトリー、移動方向とキックのずれ

予測
ボール落下点の予測、先に相手を抑える、先のイメージ
先に当る
空中で競に行く
先に当る動き、動きを制する

相手の逆、待ち
間、逆、相手に向かってパスフェイク、待ち、90度
典型的ソンブレロ
中央を斜めにDFに向かう、角度をずらしてラストパス
スクリーン、正面チラ見せ、待ち、90度、ラストパス
シュートとパスの見合い

ミス
GKが早く倒れる実例
守備の間違い、ポジショニング、マークする動き



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