Australia vs Japon
06.06.12.lunes
日時:2006年6月12日
対戦:ワールドカップE組 オーストラリア対日本
結果:3−1
得点:0−1 26分 中村
1−1 85分 カーヒル
2−1 90分 カーヒル
3−1 91分 アロイシ
審判:エサム・アブドゥ・エル・ファタ(エジプト)
警告:グレラ、アロイシ(オーストラリア)
宮本、高原(日本)

「日本は負けた」

「負けたな」

「85分まで勝っていたのに負けた」

「負けたな」

「しかし、終了間際まで0-1で勝っていて、最後の6分で3点入れられるとはどういうことかね?」

「まあ、今回はそれを見ていこうという話やな」

「そうか」

「最初にまとめると、日本の守備で問題になるのは主に2つで、三都主および前線と中盤の距離なんやな」

「三都主の守備が弱いのは有名やな」

「弱いというか、ボールを持った相手との距離が遠すぎて、のように普通の選手の3倍近い距離を取る」

「うむ」

「これが原因となって、相手のパスコースをまったく切ることができない。だから回りの選手がきつくなる」

「ふむ」

「で、組織の面からすると、のようにフォワードが相手陣に出て守備をするわりにディフェンスラインは押し上げない」

「うむ」

「それで、模式的に表すと、日本代表はのような形で簡単にボールを運ばれてしまう」

「この図はどういう意味や?」

「点線がパス、実線が選手の動き、ジグザク線がドリブルを示している」

「それはわかる」

「まず、日本代表は点線で囲まれたフォワードと中盤の間に大きなスペースが空くから、そこで簡単にボールをキープされる。そして、それをサイドに展開されると三都主はずるずると下がるだけなので、簡単に押し込まれてしまう」

「うむ」

「さらには、中田が三都主を過剰にフォローしなければならないため、中央に大きなスペースが空く。中村が戻れないと、のような形で福西の両脇に大きなスペースができて、簡単にシュートを打たれてしまう」

「確かにシュートはよく打たれたな」

「データで言うと、オーストラリアのシュートは24本。その内ペナルティーエリアの中から11本。日本は合計11本。エリア内が4本。という話らしい」

「エリア内から11本かね」

「そう」

「それは強烈やな」

「これだけ打たれたら3失点は仕方がない」

「しかし、思うんやけどな」

「なんや」

「昔、これとまったく同じ守備面での話を聞いたことがあるんやけどな」

「どこで」

日本対イラン戦やな」

「そう言えばそうやな」

「要するに日本代表は約1年たっても守備の問題はまるっきり改善していないということか」

「そう言うことになるみたいやな」

「それは凄いな」

「確かに凄い」

「で、凄いといえば、ジーコの交代も凄かった」

「うむ、確かに。度胸満点だった」

「攻められっぱなしの後半78分、ジーコは柳沢に代えて小野を送り込んだ」

「で、こういう配置になるわけだが」

「これは凄い」

「まさに凄いという言葉しか出てこない」

「相手が前線の人数を増やして、ロングボールからのパワープレーを挑んでいる最中にボランチに小野を入れた」

「多分、こぼれ球をちゃんとキープして前線につなげたかったんだと思うぞ」

「それで、85分にスローインに対する川口の飛び出しのミスから同点に追いつかれる」

「川口はそれまでに3点くらい防いどったけどな」

「それはいいとして、オーストラリアの逆転はの形から始まる」

「ふむ」

「中澤のクリアボールが右サイドにいるオーストラリアの5番に渡って、それがのように15番のアロイシに渡る」

「ふむ」

「それに対して日本の守備陣はのように動いた」

「うむ」

アロイシは中央にいる4番のカーヒルにパスその後、右足から放たれたボールは、左ポストを叩いた後に右ポストに当たりゴールイン。まあ、こういう次第だ」

「切ないな」

「切ないもなにも。まず、でボールを持ったアロイシに対して、ゴールより外側に戻る三都主がおかしい」

「えーとだな……それはまずボールよりも後方に下がろうとしたんじゃないか?」

「それは意味ないやろ。茂庭が詰めてるんだから、アロイシの左足に被せるようにプレッシャーをかけないとおかしい」

「まあ、そういう意見もある」

次にアロイシからカーヒルに渡ったボールに詰めない茂庭と宮本もおかしい」

「いや、その2人の動きを見てると縦に走ったアロイシへのパスを警戒している」

「アロイシは三都主がマークすべきであって、そこに3人も行く必要はないやろ」

「そういう噂もある。ついでに言えば、その辺のマークとカバーリングの関係が曖昧なのも日本の弱点だ、という話もある」

「根本的には、ボランチの前をカバーするべき福西と小野の2人がディフェンスラインの前に戻らない点が一番おかしい」

「それについては、福西は疲れきっていてし、小野はもともと守り駒じゃないから」

「ここでラインの前を押さえるために必死で走らないなら、小野が出てきた意味がないという噂もある」

「あるかもしれんな」

「普通に考えると、押し込まれている時は、こんな感じで遠藤か稲本をボランチに入れる。それで、足の速い玉田あたりを入れてカウンターを狙うやろ」

「うむ」

「空中戦を考えたら、こんな感じでもう1人の中田を入れて後ろで守る手もある」

「そうする人もいるかもしれない」

「とまあ、こういった辺りを不満に思う人もあるという噂だ」

「ジーコに批判的な人は相当不満やろな」

「それはそうやろ」

「でもな、ジーコのチームにはどこにもない何かがあると思うんよ」

「なんじゃ?そりゃ?」

「いや、日本代表を見ると、現代の教科書的な守備システムからすると、試合開始時点から破綻しているわけよ」

「だから不満がでるんやろ」

「そうやけどな。実際問題として、日本はワールドカップ予選を突破したし、この試合でも85分までは勝っていた」

「まあな」

「いやいや。まあなじゃなくて、これは大事な点やで。今の日本の戦力からして、0-1や1-2でオーストラリアに勝てたとしたら、ベストの結果に近い」

「それはそうやけどな」

「この試合は勝ち逃げに失敗しただけで、直前まで行った。ここで考えるべきは、教科書から外れていたから負けた、という点ではなく、現在の教科書から外れていてもそこまで行けた、という点だと思うわけよ」

「なんかよくわからんな。結局何が言いたいんだ?」

「だからだな。戦術的に優等生的なチームが多いワールドカップの中で日本戦は単純に見ていても面白かったわけだ」

「面白かったか?」

「面白かったぞ。日本の選手はだれも萎縮せずに自分の持てる力を発揮していた。柳沢はシュートはともかくスピードと難しい状況をドリブルで打開する才能を見せたし、中村はアルゼンチン人に絶賛されるくらいの活躍。中田、福西も能力を一杯に使っていた。駒野がフリーなのにパスを失敗したり、三都主の守備が鬼だったりしたけど、自分のできる範囲の仕事は確実に果たしていた。それはジーコの力だと思うで」

「そうかね」

「スペースを空けることを恐れずにボールをつなぐ日本。それにパワーと魂で応酬するオーストリア。質の異なるものが正面からぶつかって、楽しい試合だった。教科書的なチームなんてのはどこにでもあるし、先が読めてつまらない。サッカーの本質的な面白さを見せながら結果も残しかけた日本代表は、サッカーの現状を打破する可能性をはらんでいると思うんだが」

「……なんか小難しいことを言いよるな」

「そうか?」

「まあ言いたいことはわかった。しかし、今のままではブラジルとやって大いに飛ばされる可能性の方が高いで」

「確かに」

「大敗したとして、それでも同じことが言えるか?」

「まだ負けたわけじゃないし、クロアチアに勝つ可能性も十分にある」

「クロアチア戦でも変更なしだと思うか?」

「先発は三都主以外いじる必要はないと思う。後はフォワードの守備開始点を15m下げればいけるんちゃうか」

「そうかね。わしは次の試合が楽しみというか恐いけどな」

「いや、楽しみやって。わしは、俄然日本代表に興味がわいたけどな」

「まあ、可能性を信じて」

「そうそう。終わるまでは信じることが大切や」

「では、そういうことで」

「また明日」



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