England vs Trinidad Tobago
06.06.15.jueves
日時:2006年6月15日(木)
対戦:ワールドカップB組 イングランド対トリニダード・トバゴ
結果:2−0
得点:1−0 83分 クラウチ
2−0 90分 ジェラード
審判:トオル・カミカワ(日本)
警告:ランパード(イングランド)
テオバルド、ウィトリー、ジョーンズ、ヒスロップ、グレイ(トリニダード・トバゴ)

「この試合はイングランドが2-0で勝利した」

「2-0と言っても、83分まで同点だったわけだから相当に苦戦した」

「83分とか85分とか、そういう時間を聞くとなぜか日本代表を思い出すな」

「それは禁句やな」

「イングランドの苦戦はこんなシステムで守るトリニダード・トバゴの守備を崩せなかったことによる」

「……1-5-1-4-0に見えるのは気のせいかね」

「気のせいじゃなくて実際にこうなっていたわけだ」

「そうか?基本的にフォワードを1枚残していたように見えたが」

「それは、左サイドを押し込まれた時は右のジョーンズが前に残り、右サイドを押し込まれた時は左サイドのスターン・ジョンが前に残るからそう見えるだけやな」

「そうか。それなら、1-5-1-3.5-0.5と書くのが正しくないか?」

「それだとただの数遊びになるやろ」

「まあな」

「それでだ。トリニダード・トバゴは、マンツーマンを基本としたディフェンスをしていて、その関係はのようになっている」

「ピッチ中が赤いな」

「ローレンスがディフェンスラインのリベロで、ドワイト・ヨークが中盤のリベロになっている」

「しかし、この状況ではテリーかリオ・ファーディナンドがボールを持った時、完全にフリーになるがいいのか?」

「いいらしい。彼らをフリーにしたとこで有効なパスは出せない、というのがベーンハッカーの判断のようだ」

「なめられたもんやな」

「こういう守り方はマルケスみたいにパスで相手を崩せるセンターバックがいると機能しないけど、最近はそういう選手は少ないしな」

「しかし、稀に見る珍しい守り方だと思うが」

「確かに珍しい。さらには、珍しいだけでなく一種のトラップディフェンスも仕掛けられている」

「どういうことや」

「イングランドがボールを奪った後、右のジョーンズの方が早く戻り、左のスターン・ジョンの方が遅れて戻る」

「それは、スターン・ジョンの方が元々センターフォワードだからそうなってるだけなんちゃうか?」

「そうじゃなくて、そうすることにより、のようにボールをイングランドの右サイドに誘導する意図の元に行われている」

「アシュリー・コールではなく、キャラガーにボールを持たせるためかね」

「そうやな」

「しかし、そうすると斜めに動くスターン・ジョンの移動距離がえらいことになると思うんだが」

「彼はキャラガーについてペナルティーエリアの横まで戻り、ボールを奪ったらペナルティーエリア付近に進出していたから、移動距離は相当だと思う。ちなみに、全力で攻める時のトリニダード・トバゴはのようになる」

「これは、1-4-4-2に近いな」

「そう。ベーンハッカーの戦術は、この前のスウェーデン戦といい極めて面白い」

「ほんまやな」

「それで、イングランドが取れずに時が流れて後半58分」

「しびれを切らしたエリクソンは2人同時に代える」

「キャラガーに代えてレノン。オーウェンに代えて怪我持ちのルーニーを入れる。」

「それで、システムはどうなるかというと……」

こんな形になるわけやな」

「なんと、ベッカムが右サドバックか」

「まあ、レアル・マドリーでもたまにこういう形でプレーしていたから、それほど驚く起用でもない」

「いや、驚くやろ。普通」

「まあそうやけどな」

「それで、これに対して70分にベーンハッカーがカウンターパンチを放つ」

「右サイドを走っていたジョーンズに代えてフォワードのグレンを入れる」

「その配置はこうなる」

「グレンが左に入って、スターン・ジョンが右か」

「これは、元気なグレンにベッカムをマークさせると同時に、カウンターからの得点も狙った交代だと考えられる」

「しかし、ここは面白い場面やな」

「確かに」

「戦術的には色々な選択肢が考えられて、例えばこうすることもできる」

「スターン・ジョンとグレンを本当にフォワードに置くわけか」

「そう。それで無理に上がっているサイドバックの裏を突いていけば、ベッカム、アシュリー・コール、ジェラードを後ろに引っ張ることができる」

「しかし、それはイングランドが受けてくれた場合やろ?もし無視されたら中盤の人数が足りなくなる」

「それはそれでええやろ。前線で2対2をつくれるなら、カウンターからゴールを奪う確率は飛躍的に増す」

「そうやけどな」

「相手が守備をおろそかにしているわけだから、それを咎めるのが戦いの定石だと思うが」

「まあ、ある手ではある」

「なんや。気のないリアクションやな」

「もし、わしがどうするかと問われれたならば、こうする」

「ガチガチに守る気か」

「そう。左サイドにグレンではなく中盤で守れる選手を入れて、次にスターン・ジョンも中盤の選手に代える。最後の10分はひたすらた耐えて0-0の引き分けを狙う」

「チキンな戦い方やな」

「何とでも言え。第1戦を引き分けてこの試合でも引き分けたら勝ち点2。パラグアイとの最終戦で勝てばほぼ文句なしでトーナメント進出やから、ここは意地でも守るべきや」

「まあ、ある手ではあるな」

「なんにしても、ここは戦術的分岐点で、選んだ選択肢によって大きく運命がかわる」

「徹底的に攻めるか守るか。もしくは、守りつつ攻めるか攻めつつ守るか。色々考えられるな」

「それで、監督の選択がどういう結果になったかと言うと」

「裏目に出てしまったわけやな」

「83分のイングランドの得点はのような形で決まった」

「ジョー・コールに代わったダウニングがセンタライン付近でボールを受けたことから始まって、サイドチェンジからレノンがボールを落としてベッカムがセンタリング。ファーに逃げたクラウチが頭で決めた」

「この時、下がってベッカムをマークすべきグレンはボーっと中央付近で立っている」

「守備に忠実でないグレンを入れたことが仇になってしまった」

「こうなると、どうせ守るなら徹底的に守った方が良かったのではないか、という話も出てくる」

「結果論やけどな」

「まあな」

「もしカウンターからグレンが点を取って勝っていれば守備と攻撃のバランスを取った絶妙の采配と言われたはずや」

「確かに」

「なんにしても、わしはスターン・ジョンとグレンを前線に置いて攻めて欲しかったけどな」

「その辺は、監督の性格とインスピレーションの問題やろな」

「逆に言えば、ベッカムをサイドバックに下げて、ダウニング、レノンを左右のウィングに置いたエリクソンの交代はずばりと当たった」

「ベーンハッカーは知恵比べに負けたみたいで面白くないやろな」

「これで、イングランドは最終節を待たずに1位での決勝トーナメント進出が決定。トリニダード・トバゴは最終節に勝って、イングランド対スウェーデンの結果次第になった」

「スウェーデンが圧倒的に優位な状況やけど、トリニダード・トバゴにも頑張って欲しいところやな」

「確かに」

「では、本日はこの辺で」

「また明日」



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