「日本は見事に負けた」
「見事というか完璧に負けたな」
「一方、オーストラリア対クロアチアは引き分けに終わった」
「これによりオーストラリアは2位でトーナメント進出を果たした」
「結果的にはブラジルに勝っても駄目だったという話なわけだが」
「まあそうやけどな」
「この試合でもジーコはジーコで、
図のような先発を選んだ」
「男前やな」
「ほんまやな」
「この状態でブラジルと同じようにスペースを残すことを恐れずに攻めてサイドバックまで上げる」
「同じように戦えば戦術的な優劣はほとんどなくなる」
「そうなると個人能力の勝負になる」
「これは普通できない」
「恐らくブラジルにこれだけオープンな勝負を挑んだチームはないな」
「昔のことはよく知らんけど、ここ16年はないんとちゃうか」
「ちなみに、ポジションごとに選手を対応させて見ると
図のようになる」
「勝てる部分がない」
「当たり前や」
「この状況で殴り合いを挑むのは自殺行為に等しい」
「というのが一般人の発想や」
「ブラジルが押し気味にゲームを進めるが、日本は川口のセーブもあって耐える」
「彼はシュートを弾くのが抜群に上手い」
「前半に撃たれたミドル以内の危ないシュートは
こんな感じだが」
「すべてのシュートをピッチの外に弾いている」
「前に弾くと相手にチャンスを残すけど、それがまったくない」
「これはワールドカップを通じてそうで、相手にセカンドチャンスを与えた場面は皆無に等しい」
「当然ながら、この技は相当な修行を積んでいないとできない」
「チュニジアのキーパーが簡単なシュートを前に弾いて失点した事と比較すればそのレベルの高さがわかる」
「そして
前半34分、なんと日本が先制した」
「”なんと”は失礼やな」
「驚くぞ。普通」
「そうやけどな」
「しかしあのゴールは凄かった」
「ほぼ完璧な流れから決まった」
「攻撃が開始されたのは、図のようにキーパーの川口からだった」
「そこから9本のパス、7人のフィールドプレーヤーを経由してゴールが決まる」
「中澤、坪井、稲本、加地とボールが渡って中央から回り込んだ中田へ」
「中田は引いて来た玉田に当て、それが稲本に返る」
「ダイレクトでのサイドチェンジからサントスがボールを持ち内側へドリブル」
「もの凄い距離を回り込んできた玉田がスルーパスを受けてシュート」
「ボールはキーパーを越え、ニアサイド上方に突き刺さる」
「この時、巻の動きも重要で、中央からファーに逃げながらディフェンスを押し下げた」
「そのおかげもあって玉田はオフサイドにならなかった」
「フィニッシュも良かった」
「あれぐらいの角度から狙う場所は、ファーのサイドネット、キーパーの股、キーパーの肩を越えたニアサイド上側の3択になる」
「見事に3番目で決めた」
「そういえばやな」
「なんや」
「クロアチア戦での玉田のパスはシュートミスだというメールが来てたんやけどな」
「ほう」
「このシュートを見てるとそんな気もするな」
「そうかね」
「とにかく、これで日本が先制する」
「改めて見ると、中に切れ込んだサントスは
ブラジルがクロアチア戦で見せた弱点を見事に突いている」
「ジーコはこのために彼を使い続けたようなもんやな」
「守備でのマイナスがこれで補えるかどうかは微妙やけどな」
「この得点が決まった時点ではクロアチアが1-0でリードしていた」
「日本はあと1点で次にいける状態だった」
「しかしながら、物事はそのように上手くは進まず」
「前半のロスタイムに追いつかれてしまう」
「点を取られるにしても時間帯がなぁ」
「精神的ダメージが大きい」
「というか、あと30秒粘っていれば、最低でもハーフタイムの間は夢が見られた」
「1-0で引き揚げるのと1-1じゃ気分が全然違うからな」
「そのゴールは
こんな形から入った」
「左からのロナウジーニョの浮いたボールをを待ち構えていたシシーニョがヘッドで折り返す」
「それを小さいエリアに入ってきたロナウドが頭で決める」
「この失点はキーパーのミスなんやな」
「シシーニョのヘッドはえらく高く上がっていたから前に出れば触れた」
「触れたというか、キーパーエリアの中のボールだから出て触らないといけない」
「ふむ」
「実測したところ、シシーニョがヘディングをしてからロナウドの頭に当たるまで1.59秒かかっている」
「ほんまか」
「10回計測して平均したからそれなりに正確な数字だと思う」
「微妙な回数やな」
「それで、キーパーからロナウドがヘディングした地点では最大で6.51m離れていると考えられる」
「それはどこから出てきた数字なんや?」
「面倒やから文末にまとめるわ」
「そうか」
「それで、50mを6.6秒で走るとしたら、ボール浮いている1.59秒の間に最大で12m移動することができる」
「やっぱり間に合いそうやな」
「動き出しに時間がかかるとはいえ、5.49mの余裕があれば間に合うやろ」
「これはあれやな。オーストラリア戦でのトラウマが影響して出れへんかったのとちゃうか」
「しかし、ボールとシシーニョの動きからしてファーに折り返すのは見え見えやろ」
「それはあれやな。間から1人飛び出して来ていたから、そっちに気を取られてたんやろ」
「ほんまかいな」
「どうやろ」
「そして、逆転は53分にやってきた」
「
こんな形で決められた」
「とりあえず、またシシーニョがフリーでセンタリング」
「坪井がクリアするもロビーニョがそれを拾う」
「バックパスから中央にわたってジュニーニョがロングシュート」
「綺麗さっぱり日本のゴールに突き刺さった」
「これもまた川口のミスに見える」
「明らかに触れそうだったが無回転のボールは見切りが難しい」
「それだけじゃなくて前に弾かないというポリシーが裏目に出てる」
「そうかね」
「斜め後方に弾くためにはギリギリまで待ってちょうといいタイミングで手に当てないといけない。早く飛びすぎるとボールの勢いを殺せずに前に飛んでしまう」
「そこにボールが伸びて来たわけか」
「おそらくそういうことだと思うぞ」
「しかし、川口と柳沢が敗戦の責任を取らされそうな気配が濃厚やな」
「それほど意味のないことはないけどな」
「まあな」
「彼らは日本サッカーの中で育って、そこでプロになり代表選手になった。そこではミスをしても生きていける環境なわけで、それは日本サッカーのレベルを反映しているに過ぎない」
「ミスで言うたらこの2点目での加地のミスも酷い」
「明らかにロビーニョよりこぼれ球に近い位置にいながら相手に取られてしまった」
「ロビーニョは坪井がクリアする前からこぼれる先を読んで移動を開始していたけど、加地はそれが遅れた」
「
加地で言うと、フリーでのヘディングのクリアが飛ばなかったり、サイドからのクリアが実は相手へのセンタリングだったり、以前の試合では信じられない位置で横パスを取られていた」
「これも加地1人の問題ではなくて、クリアを危ない所に落としたり、自陣深くで横パスをミスする現象はよく起こっていた」
「ミスついでに言えば、オーストラリア戦での3点目、
駒野のミスも凄くて図のような感じだった」
「なんか斜めになってるな」
「これは左のサイドラインに向けて半身になっていることをあらわしてる」
「なかなか斬新な表記法やな」
「この時は日本が1-2でリードされていて、残り時間はロスタイムだけだった」
「ふむ」
「この場合、まず相手に対して立っている場所が問題で、ボールとゴールの間に体がない。次に半身になると逆方向への対応が遅れるのに、ゴール方向を空けている。非常に謎が多い」
「別にアロイシはドリブルが得意なわけでもないのにな」
「あんな時は好きに抜いてもらって思いっきりファールをしたらいい。たとえレッドカードをもらったとしても、あの時間帯なら1-3にされるより1-2で1人少ない方が可能性がある」
「理屈ではそうやけどな」
「この手の問題はディフェンスだけでなく、中盤にしても、簡単なパスを間違える場面が多々あったし。個人個人の守備の面で問題があるのが浮き彫りになった」
「大枠はいい感じになってるんやけどな」
「今回の代表は加工されてないから、日本サッカーの内臓みたいなものが見られた貴重な代表だったと思う。それで見えたことといえば、キーパーからフォワードまで、細かいけれども基本的な部分が抜け落ちてることが多い。これは選手はもとよりコーチに責任があって、観客にも責任がある」
「観客もか」
「そりゃそうやで。人間、これで生きていけると思ったらなかなか向上しない。外からの圧力がどうしても必要になる」
「まあな」
「例えば、ワールドカップでキーパーの飛び出しのミスを責めて、Jリーグで同じことが起きて失点につながらなかった時に罵声の1つも浴びせないのでは話がおかしい」
「そういう話もなきにしもあらずかね」
「細かい部分が磨かれるにはそういう環境がないと無理やで」
「だから海外に出るわけやけどな」
「国内でも、特に観衆がもっと選手にプレーの面で影響を与えることで変えられることはあると思うぞ」
「そうかね」
「そりゃそうやろ。最終的にチームのカラーやプレースタイルを決めるのはファンなんやから」
「しかし今日は良くしゃべるな」
「そうか?まだあと1時間はしゃべれるで」
「とりあえずもう十分長いからな」
「この辺で終わりかいな」
「日本代表については、トーナメントで休日が入った時にもう一度お届けする予定ですので」
「そうなんか?」
「よろしければそちらもご覧下さい」
「む」
「それではまた明日」
「ごきげんよう」
おまけ:キーパーの移動距離
小さいエリアの縦が5.5m。キーパーはゴールラインより約1m前にいるので移動距離は4.5m。
ゴールの横幅の半分が約3.7m。1m余裕をみて4.7m。
三平方の定理により約6.51mが出る。
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