Japon vs Croacia
06.06.18.domingo
日時:2006年6月18日(日)
対戦:ワールドカップF組 日本対クロアチア
結果:0−0
得点
審判:フランク・デ・ブレケー(ベルギー)
警告:宮本、川口、三都主(日本)
コバッチ、セルナ(クロアチア)

「さて、今日は日本とクロアチアが引き分けた試合をお送りするわけだが」

「うむ」

「今回は日本代表を語る上で避けては通れない問題を考える必要があると思うわけよ」

「というとあれか」

「そう。あれや」

「3バックか4バックかというあれか」

「いや。そうじゃない」

「じゃあ、ジーコが監督に向いているかどうかというあれか」

「それでもない」

「じゃあなんだ」

「日本代表はなぜゴールを決められないかというあれだ」

「それか」

「この試合では、おそらく日本中はおろか全世界の日本人が失望したシーンがあった」

「柳沢のあれやな」

「時は後半50分

「右サイドを加地が駆け上がる」

「中央で高原が動きワンツー」

「加地はラインの裏へ抜ける」

「そしてファーサイドへ絶妙のクロス

「ニアサイドに出ていたキーパーはポジションの修正が間に合わない」

「フリーになった柳沢の前には、大きく口を開けたゴールがあるのみ」

「ボールが柳沢の足に吸い込まれる」

「よっしゃーーーーーー」

「と思った瞬間、前に飛ぶべきシュートは横に飛んでいた」

「うむ」

「これは凄かった」

「確かに」

「ちなみに柳沢のシュートはキーパーの股間を抜けて外れている」

「テクニカルやな」

「しかし、どうしてボールが横に飛んだかよくわからんのだが」

「それはアウトでシュートを打ったからやろ」

「いや、そうじゃなくて、なぜあの状況で右足のアウトを使ったのかというのが理解できんのだが」

「それは本人にしかわからんのではないか」

「そりゃそうやけどな。インサイドで縦に蹴ればよほどのミスでも入るで」

「多分、チャンスが良すぎてパニックになったんちゃうか?」

「そうかね」

「ようわからんけどな。まあ、これで日本中が失望したのは間違いない」

「柳沢への批判は凄いんやろな」

「確実にそうやろ」

「でもな」

「なんや」

「このミスは柳沢個人のミスとも言い切れない気がすんねんな」

「気のせいやろ」

「いや、64分に柳沢に代わって玉田が入ったやろ?」

「入ったな」

「それで玉田も同じようなミスをしてるんよ。」

「そうかね」

「何分かは忘れたが、こんな状況で玉田がキーパーと1対1になった」

「あったな。そんな場面も」

「で、ここでどうしますか、という選択肢で、Aシュート、B横パスやったらどっちを選ぶ?」

「そりゃAやけど、玉田はBやった」

「そう。この場合だと、中央のディフェンダーは折り返しのパスしかケアしてないから、それが通る確率は極めて低い」

「もし中央の選手にボールを渡したいなら、ファーサイドにシュートを打ってキーパーに弾かせるしかないな」

「この場合シュートを打てるのに打たないという意味で柳沢よりも重症だとも言える」

「それはどうかね」

「いやいや。シュートを打てる時に打たないからいざという時にちゃんと打てないわけで、柳沢も玉田もそうだということは日本のフォワードがそういう環境で育っているという問題が背景にある」

「微妙に論理が飛躍しているのは気のせいか」

「そんなことはない。多少サンプルが少ないだけや」

「多少ではないと思うが」

「要するにだな。言いたいことは、最初のオーストラリア戦では11本対24本、このクロアチア戦では13本対21本。ボール保持率では互角以上に戦いながらこれだけシュート数で負けるのはフォワード1人の原因ではないという話よ」

「そうか。まあ、それについては1つ気になるシーンがあるんやけどな」

「なんや」

「試合終了間際のプレーでサントスがこんな形でボールを持つ場面があった」

「あったな」

「それでサントスが縦にドリブルした時に、中央の選手はこう動いている」

「うむ」

「ニアサイドの大黒は斜め後ろに下がって、中央の中村は横に動き、玉田は縦に出るモーションからファーに逃げている」

「ふむ」

「その結果こんな配置になった後、センタリングはシムニッチにクリアされてしまう」

「なるほど」

「ペナルティーエリアでフォワードが金を稼げる場所はの赤い場所なんやな」

「ものの本にはそう書いてあるな」

「こんなチャンスに3人が3人別の場所に移動するとはどういうことかね」

「多分サントスが縦に抜けると信じてなかったからちゃうか」

「それにしてもひどい動きやで。理想で言うたらこんな感じで動くはずやろ」

「理想はそうやな」

「この場合、4番のロベルト・コバッチはサイドのカバーに出ないといけないので、大黒はバックステップを踏めば簡単にフリーになれて、そこから前に出るだけでセンタリングにあわせられる。中村は中央に出るフェイクから3番のシムニッチの前に出るように動けば点になる。この2人が前に出れば、ファーサイドから中央に回りこむ玉田は完全にフリーになる」

「机の上ではそうなる」

「机の上もなにも、あの状況でキーパーとディフェンダーの間に飛び込まないなら一生点は取れんで」

「そんな噂もある」

「まあ、そういう点が気になったわけだ」

「思うんだが、今回のワールドカップでは日本サッカーの置かれた状況がよくわかる気がしないか」

「そうかね」

「今までの日本は、”個の弱さを組織で”みたいなのがスローガンやったわけやろ」

「そうやな」

「それが今回代表は組織があるのかないのかわからん状態で戦っている」

「そんな感じかね」

「それでもクロアチアとほぼ互角に戦えたわけや」

「まあな」

「基本的に、”個の弱さを組織で”といった発想はいじけた発想で、もし組織を高めて結果を手にしたとしても、”自分は弱いんじゃないか”という恐怖がいつまでもつきまとう。実際に日本のサッカーにはそれが常に横にあったけど、ジーコが初めて”そうじゃない”ということを言ったと思うやな」

「いきなり日本の歴史かね」

「まあ聞け。クロアチアというのはヨーロパでもサッカー強国と認知されていて、そこに引き分けたというのはそれだけを取ってみれば悪い結果ではない」

「この試合だけならな」

「今までの日本サッカーは、例えばおもちゃならおもちゃを綺麗に並べないといけない、という発想に縛られていて、そうしなければ凄く悪いことが起きるという恐怖があったわけよ。でも、ジーコは、”そんなことはない。おもちゃ箱を引っくり返しても十分に通用する”というサッカーをして、それでもなんとか生きていけることがわかった。これはコペルニクス的展開で視野が開けたようなもので、将来に向けて十分に意味のあることだと思うぞ」

「えらい大きな話やな」

「今回のワールドカップでは、日本の良い所も悪い所も生の形で出ていて、例えば中村のキープ力はオーストラリア、クロアチアには並ぶ選手がいないほどだし、中田ほど落ち着いてパスを出す選手は日本を含めても見当たらない。さらには加地のスピードについていけるクロアチアの選手がいないこともわかった。その一方で弱点も嫌になるほどはっきりと出ていて、例えば体力勝負のパワープレーを挑まれるとすぐに劣勢に陥るし、ボールを保持してもペナルティーエリアの中に入ることができない。そして、たまに入ったとしてもシュートを打つことができない」

「まあ、今の代表が生ものっぽいのは確かやけどな」

「基本的に代表チームはその国の事情を反映するもんやけど。そう考えると、長所も短所もある意味、見る人、一人一人の鏡なんやな。そうなると、自分の弱点を生の形で見せられるのはやっぱり気分がいいもんじゃない」

「うむ」

「ジーコへの批判は、いままでのやり方をひっくり返した反動みたいなのが多いけど、日本人が日本代表を批判するときには常に自分の一部を批判している。つまり、代表は自分の外にあるものじゃなくて、自分の内にあるものというか、自分が内にいるものだということを認識した方がいいと思うわけよ」

「うーむ、今日はどうした。そんなに小難しいことばかり言っていると知恵熱で倒れるぞ」

「まあ、要するに、アジは綺麗に焼いて食べるものだと思っていたら、生でも結構いけるという話や」

「とにかく、これで日本はブラジルに勝つしかなくなったわけやな」

「日本がブラジルに2点差で勝って、クロアチアがオーストラリアに1-0か2-1で勝ってくれたら万歳で日本が決勝トーナメント進出や」

「夢物語に聞こえるのは気のせいか?」

「気のせいやな」

「そうか」

「それに、ブラジルは1位が決まったから確実にメンバーを落としてくる」

「しかし、落としたと言っても、例えば中盤にジュニーニョ・ペルナンプカーノが入った方がやっかいな気がするが」

「それはそうやけど、ジーコは絶対に勝つ気やで。ブラジル代表を相手にして心から”勝つ”と言える人がいるとしたらそれはジーコのような気がするけどな」

「恐るべき前向きさだな。」

「いや。ジーコの代表を見ていると心配は意味がないから、こうならざるを得ない」

「そうか。なんにせよ、最後のブラジル戦も真っ直ぐに戦う代表を期待して」

「本日はこの辺で」

「また明日」


関連文章 サッカー技術:得点力不足を解消するために

ワールドカップ試合一覧


c60 logo
トップページへ

05-06シーズン簡易まとめ
試合分析まとめ蹴まとめまとめ(ニュース)小話まとめ(コラム)