変わってその任に就いたアンティッチ、去年降格さえ話題になったバルセロナを見事に立ち直らせ、ヨーロッパを狙える位置にまで引き上げた仕事振りは記憶に新しい。
新監督緒戦と言うことでその先発メンバーに注目が集まったが、右図のようであった。
まず、見事にシステムが変更されています。
各西班球団にあるロティーナ時代のシステム図を見ていただきたいのですが、あの当時は1−5−2−2−1、もしくは1−5−3−2−1という極めてディフェンシブな戦い方でした。しかし、この日のセルタは明らかな1−4−4−1−1、ラインディフェンス。
システム論的には180度の転換と申し上げてよろしいかと。
新監督の定石として、今まで干されてきた選手にチャンスを与えチームを活性化させると共に主導権を握る、というのがありますが、今回もそれに沿った形でモストボイ、ベラスコが先発として出場し、エドゥが途中出場。
特にエドゥは17試合もの間全く試合でプレーしておらず、久しぶりにピッチで走る彼を見ました。
この試合で戦術的に目を惹いたのは、サイドのミッドフィールダーの位置とボールを保持した際のディフェンス配置。
まず、サイドで敵がボールを保った場合、逆サイドのミッドフィールダーはボランチの横に戻らず、敵サイド・ミッドフィールダーとサイドバックの間に浮いた形で残る。
これはボール奪還後のカウンターを容易にし、攻撃の幅を容易に得ることができる利点がある。
反面サイドチェンジに弱くなるのだが、ボールサイドに三枚のミッドフィールダーと二人のフォワードでプレッシャーをかけ、フィールドを狭くしそれを許さない。
理論上はそれで良いのだが、現実にはなかなか難しい。
前半10分まではサイドへの寄せが早くベティスに空間を与えなかったが、時間と共に組織が解け、ベンハミンからデニウソンへのサイドチェンジに象徴される攻撃に手を焼いた。
まあ、そんな状況でも、上手いファールでデニウソンを自由にしなかったベラスコは流石かと。
そして、ボールポゼッション時、左右のサイドバックが共にその位置を上げ、センターバックはペナルティーエリアの幅以上にその距離を開ける。
これは、監督として怖い配置で、ディフェンスの一つのミスが即座に失点につながる。
特にベティスは前からプレッシャーをかけて来るチームであるからして、アウィエで戦うセルタ守備陣がミスを犯す確立は高い。
にもかかわらず、就任緒戦、一週間の練習でそのような配置を試みるアンティッチ。正にバリエンテ(勇気のある)と呼ぶ他ありませぬ。
敵にスペースを与えることを極度に嫌い、徹底的に後ろに引いた布陣を好み、また、攻撃においても後ろに穴を空けないことを重視していた今までとはえらい違いであります。
ビクトル・フェルナンデス時代の男前なチームに戻りつつあるセルタ、それを超えるパフォーマンスを見せて欲しいもんです。
おまけに、もう一つ注目点を挙げるならば、セルタのコーナーキックによる失点シーン。
セルタはコーナーに対しゾーンで守っていました、ガチガチのマンツーで守っていたこれまでとこれもまた180度の転換ですが、それを打ち破ったベティスの戦術は見事でした。
キーパーエリアに入り込むフェイクからレンボを除く全員がバックステップを踏み、ペナルティースポットの高さにラインを形成し、これによりキーパーエリア外での数的優位を確保した。
あの場面、ゾーンの間に浮いたレンボが最前列であり、他の選手は全て彼よりも後ろにいることに注目してください。ゾーンで守るセルタの選手はどうしてもゴール近くをケアせねばならないため、引く相手を追えず、ベティス選手をフリーにしてしまいました。
セットプレー組織の名手と謳われるアンティッチでさえ、一週間の準備期間ではそのようなバリエーションに対応しきれない。
ゾーンディフェンスに対するオプションを用意していたビクトル・フェルナンデスの準備勝ちかと。
最後になりますが、ロティーナの戦い方には多くの批判がありました。が、それが大いなる結果を残したのは事実です。
選手のタレントに惑わされることなく、己のサッカー観と結果のみを信じ、その方針を貫くあの姿は深く心に残るものでした。
ベティスについて触れるスペースがなく心残りですが今回はこれにて。