今回はマドリーvsマラガなのですが、それを超えて今シーズンのレアル・マドリーを振り返り、その秘密を探ってみようかと。
ボランチに問題を抱える今シーズンのマドリーは決してギャラクティコでなく、そう簡単には勝てないだろう、とシーズン前に予想したのですが、そんなことは御座いませんでした。
通年とっとと負けて左団扇で過ごすはずのコパ・デル・レイでは決勝進出間近、リーガでは記録的とも言える勝ち点を上げ、チャンピオンズリーグも現在のところ順調。
こんなに弱点のはっきりしたチームが快進撃を続ける。個人的に不思議でしょうがない。
今回の元データとなるのは4試合。
対レアル・ソシエダー(04・1・10)、対ベティス(04・1・18)、対バジャドリー(04・2・1)、対マラガ(04・2・7)。(対ビジャレアルはデータが無いので割愛)
結果は其々、1−0負け、1−1引き分け、2−3勝ち、2−1勝ち。
この4試合で見られたレアル・マドリーの強点、すなわち長所とは、
少ないチャンスを確実にものにするフォワード
サイドプレヤーの質
フィールドを広げる能力
狭い状況でのボール保持能力
間を抜けるパスへの反応
以上に集約される。
まず一番最初のフォワードとはまさにロナウドのことである。ベティス戦では90分間ほとんどなんの働きも見せなかったが、後半15分ジダンのパスを受け同点となるゴールを決めた。
そして、バジャドリー戦では2ゴール。特に決勝点となる2点目はペナルティーエリア外で敵を背負った状態でボールを受け、そのまま反転しながら足を伸ばすディフェンスを弾き飛ばしながらのシュート。フォワードとしてはある種理想的な点の取り方であろうかと。
この試合からロナウドのディフェンスにおける態度ががらりと変わり、対マラガ戦においても敵サイドバック、もしくはボランチに対し、一度マークしたら自陣まで追いかけるシーンが良く見られる。
次の、サイドプレーヤーの質、とは特にフィーゴを指す。
特にバジャドリー戦においては後半、サイドを左に変え、敵右サイド・ミッドフィールダー、フェルナンド・サレスの位置を下げさせることで試合の主導権を奪い返した。
昨年後半から今年の初めにかけてのパフォーマンスの低下から、衰えが心配されたがここ2試合の活躍は抜群であり、特にマラガ戦ではチームの核となる働きを見せた。
調子の持続期間、これがフィーゴ評価の鍵になるだろう。
フィールドを広げる能力とはサイドチェンジとディフェンスの裏へ出すパスを指す。
マラガのように引いた相手を崩すにはサイドチェンジを織り交ぜて攻めればよい、とはどの教科書にも書いてある話だが、それを実行するのは極めて難しい。
本当にあるサイドから別のサイドへ直接ボールを移したければ、最低70mのボールを蹴らなければならない。フィールド幅は67m前後であるが、有効なパスは斜め前方に飛ばねばならないため、それ以上の距離を必要とする。
プロであれ、普通の選手ではそのようなボールはまともに蹴れず、敵にインターセプトを喰らい、逆に攻められ点を失う。
しかしながらレアル・マドリーには、ピンポイントでそのようなロングパスを蹴る選手が二人いる。ベッカムとロベルト・カルロスである。
これにジダンを加えた三人がいる限り、相手がどのように引いてスペースを潰そうと攻め手に困る事はない。
ボールが詰まったところでバックパスから逆サイドに振れば話は終わる。
もう一つの、ディフェンスの裏へのパスは出す選手の能力に加え、受ける選手の能力、特にデスマルケ(マークを剥がす動き)とコントロールが必要になる。
この点ロナウドは非常に上手く、マラガ戦の後半48秒に象徴されるような、ボールの動きから逆算してディフェンスの裏に抜ける時、卓越した動きを見せる。
狭い状況でのボール保持能力とは、特に前線、敵ペナルティーエリア近くで延々とボールを回しつづけるマドリーの名物的行動である。また、間を抜けるパスへの反応とは守備において敵がゾーンの間を通そうと試みるパスに対する反応の早さを言う。
レアル・マドリーの選手は練習においてもっとも過酷なパスを捌く人々を日々相手にしており、パスに対する読みに関しては通常、敵チームを上回る。
これが人数が足りない状態で、どうにか失点を防ぐ基礎となっている。
以上が、強い点、ならば弱点はどこか。
ボランチ、ディフェンスのプレッシャーに対する不安定さ。この一点に尽きる。
対ソシエダー、対ベティス、対バジャドリー前半、以上においてこの問題が噴出し、見るに耐えない試合を展開した。
にも関わらず、その3試合を1勝1分1敗で乗りきった。不思議と言えば不思議である。
相手としてはゲームプランは明確である。
ボランチにプレッシャーをかけ、ディフェンスに戻すパスを狙ってゲームの組み立てを阻害する。中盤で奪ったボールを素早く前方に展開し、上がったサイドに回してクロスからシュート。
これは正にビクトル・フェルナンデス、フェルナンド・バスケスが実行し、成功を収めた。
しかしながらこの計画は肉体的、精神的に非常に辛い。
まず前方でプレスをかけ続けるのはしんどい話ですし、一度ボールへの寄せを誤れば一瞬の後に決定的なピンチを招く。そのような状況下で90分プレーを持続するのは不可能ではないが、極めて厳しい。
マドリーを相手にするのは巨大な負荷を支え続けることに似ている。
力が余っている時は耐えていられたものが、時間の経過と共に腕は萎え、足は震え、遂には押し潰される。
その潰れる瞬間が、試合終了の笛の前にくるか後にくるかにより勝敗が分かれる。
ならばその負荷に耐えられるチームは存在するのか。
肉体的、精神的持久力に長け、トップ下もしくはサイドにカウンターを組み立てるスピードのある優秀な選手を持ち、最前線に浮いてボールを受けるのが上手いフォワードがいる、以上の条件を満たすならば、十分レアル・マドリーに対抗できる。
すなわち、一言で表すならイタリア的特長を備えたチームである。
リーガでマドリーに大勝した、バレンシア、セビージャの第一の特徴は、1−4−4−1−1システムでのディフェンス、ミッドフィールダーが4−4に並んだ二つのラインにおける守備であり、前線にアイマール、レジェスというスピード、テクニックに優れる選手を要していた。
また、上記の試合でマドリーに勝利したソシエダーも、1−4−4−1−1、前線にニハットを配している。
スペインリーグで同様の特色を持つチームとして、ルーカス・アルカラのラシン・デ・サンタンデールが上げられる。
第27節、アウェーでの戦いをどう乗り切るか、注目していただきたいと。
その前にホームでのバレンシア戦ですが。
今のマドリーの真価はチャンピオンズリーグでのイタリア勢との戦いではっきりとわかるでしょう。
その弱点を長所で強引に塗りつぶすエル・レアルの生き方が通用するや否や、楽しみであります。