Real Madrid C.F. vs R.C.D. Mallorca
04.05.08.sabado
日時: スペインリーグ第36節 2004年5月08日(土)
対戦: レアル・マドリー vs マジョルカ
結果: 2−3
得点: 0−1 7分 エトー
1−1 17分 パボン
1−2 36分 エトー
1−3 43分 カンパノ
2−3 51分 デリバシッチ
審判: エドゥアルド・イトゥラルデ・ゴンサーレス(バスク)
退場: −
警告: ラウル・ブラボ、ロナウド、ロベルト・カルロス (マドリー)
レオ・フランコ、デリバシッチ、ブルヒンク (マジョルカ)

マジョルカ監督ルイス・アラゴネスのスペインサッカー界における影響力は絶大である。
その言動として、不満をこぼした選手に向かって飛んでいき公衆の面前で胸倉を締め上げる、アトレチコ会長時代のヘスース・ヒルに対してあるラジオ番組で「おまえがチームの外からがたがたぬかしても一銭の得にもならりゃしねぇんだよ、てめぇなんざ糞溜めでもどこでも好きな場所に消えやがれ」と怒鳴りつけた等が有名だが、今回は現在のマジョルカを例に取りそのサッカーを考えてみましょう。

まず前半開始時のシステムは、綺麗な1−4−4−2、中央を狭めボールをサイドに流させた後に回収する。これが基本となっている。
敵センターバックがボールを持った際の配置を見ると、ディフェンスラインの4人、中盤ラインの4人が中央にぎゅっと収縮しているのがよくわかる。しかる後にセンターバックの正面に二人のフォワードが立ち、サイドバックへのパスを強要する。
サイドバックにボールが出た後、フォワードは基本的にボールを追わない。センターバックとボランチに返るパスを切るために中央に残る。
サイドバックをフリーにした場合、ディフェンスラインの裏に出る斜めのパスが心配だが、この試合のマジョルカはペナルティーエリア程近くに最終ラインを形成していたため、裏のスペースはそもそも存在しなかった。
この状態でボールを持った敵のサイドバックは引いてくる同サイドミッドフィールダーにボールを当てるか、サイドバックの裏へ抜ける選手を最初に狙うかのどちらかだが、マジョルカもそれを予想しているため、狙い撃ちでボールをカットされる。組み立てなおすため、センターバックにボールを戻したとしてもフォワードのプレッシャーにより難しい。ミッドフィールダーの間を通して中央で浮いた選手にパスをしたとしても、そもそも中央が狭いのだからあっという間に囲まれてボールを失う。

以上のことを確かめるためには、前半のマドリーのボールの動き、特にボランチを務めたエルゲラ、理論的にはボランチであるベッカムがボールを受ける回数と場所を見るとよい。
彼ら二人が中央、エトー、デリバシッチの裏、マルコス、ペレイラの前でボールを受けた回数は数える程であり、ボランチの裏、ニーニョ、ルッセンホフの前で人に寄せられずボールを保った回数は非常に少ない。
この結果としてマドリーはロングボールとサイドからのクロスを多用せざるを得なかった。

マジョルカの戦術の鍵となるのは、いわゆる切り替えの早さ(攻撃から守備、守備から攻撃に移る早さ)と集散の早さ(中央に集中した後のサイドへ散開する早さ)であるが、この点は非常に訓練が行き届いている。

理論的にこのディフェンスを破るのは簡単で、中央の選手にボールを当て素早くサイドに展開すればよい。動きの逆を取られるディフェンスはサイドへのカバーが遅れるため、簡単にゴールライン際まで到達することができる。
この成功率は中央でボールを受ける選手のキープ能力、ビジョン、パス精度に大きく左右される。上記の行動を世界一の精度で遂行する選手はおそらくジダンであろうが、残念なことに出場停止だった。彼が出ていたならば、組織と個人技の面白いせめぎあいが見られただろう。最も、現在ジダンは不調をかこっているのではあるが。

ラウールもまたそのようなゾーンディフェンスを壊す動きが非常に上手い。しかし、現在ボランチに彼のタイミングに合わせてボールを出す選手が不在であることと、自身の調子の悪さがあいまって有効な働きを見せることはできなかった。

前半9分過ぎ、右サイドでロベルト・カルロスにファールをした後の動きにマジョルカの訓練度の高さが表れている。ファールの後、マルコスは素早くボールの前に立ちパスコースを消す、それにもかかわらずマドリーが素早く後ろに送ったパスに出足良く詰めボールを弾き返し一気にラインを上げる。
徹底的に訓練されたチームとしての動きを垣間見ることができる。
その後コーナーキックへの対応を誤ったのも事実ではあるが。

マジョルカの簡単な戦術的特長は以上であるが、アラゴネスが率いるチームの特徴はその精神にあるのではなかろうかと。

右サイドにフィニディという選手が先発しておりますが、彼は昨シーズン、所属していたイプスイッチ・タウンを途中退団。6ヶ月間所属チームもなく自主練のみの日々を送る、という選手として極めて辛い事態に陥っていた。
当然、このような選手にオファーを出すチームもなく、選手生命の危機に瀕していた時に救いの手を差し伸べたのはだれあろう、ルイス・アラゴネス。
2000−2001年シーズン、マジョルカで共に働き、その能力、性格を熟知してのことだと思われるが、当時はほとんど誰も戦力としてあてにしていなかった。
その彼がレアル・マドリー戦に先発フル出場。正確に右サイドを埋め、試合後半に至っても前線への飛び出しを見せた後、立ち止まらずポジションに帰るプレーを繰り返していた。
肉体的に非常に辛い行動である。

人は楽をしたがる生き物であるからして、どんなにやる気のある人間でも、ある一定以上の努力をするためには何らの外圧が必要となる。そして、サッカー選手を頑張らせる第一の外圧は監督である。
ナイジェリア代表からトライアルを受けるまでに市場価値の下がったフィニディが自分の限界を超えてプレーする姿にルイス・アラゴネスの真価があるのではなかろうかと。
えげつない球際の守備、忠実な切り替え、集散、カウンター、こういったチームとしての特徴も、その反映なのではなかろうか。

降格を完全に回避したマジョルカ、来シーズンが楽しみに待ちましょう。
エトーはいなくなるとしても。

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